とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第15話 矛盾

 

「そ、そっちこそ一体何を…1万人があの世界に囚われてその中で俺たちは生き延びて目覚めたんじゃないか!」

 

「ええ、そうよ…あの事件の被害者総数は10000人…忘れるはずもないわ…死亡者数3853名…生存者数6147名…その6147人はちゃんと目覚めてそれぞれの生活に戻ってるじゃない!」

 

「・・・どういうことだ…?」

 

 

上条とウンディーネの少女の語る真実は、一部を除いてそのほとんどが錯誤していた。目覚めた6000人と、未だ目覚めることのない6000人。目覚めた2人は自分と目の前の少女だけのはずなのに、その数は膨大なほど違っていた

 

 

(メディアが嘘の情報を流してたのか…?いや、そんなはずは…カエル顔の先生だってそう言ってたし、俺からナーヴギアを回収しに来た政府の役人さんだってそう言ってた…なら嘘をついているのはこの子自身なのか?いやでも、この子の反応と口振りからしてどうにも嘘をついているようには…)

 

「・・・分かった。とりあえず一旦剣を下ろそう。君とは落ち着いて話がしたい」

 

「・・・そうね。私もそれに賛成」

 

 

そう言うと上条とウンディーネの少女は鞘へと剣を戻し、身体に入っていた力を抜いた

 

 

「俺の名前は上やん。その…元SAOプレイヤーだ」

 

「私の名前はアスナ。あなたと同じSAO生還者で、攻略組だった」

 

「ッ!?こ、攻略組だって…!?」

 

「ええ」

 

「・・・実は俺も攻略組の1人だったんだが…アスナなんて名前は聞いたことがない。SAOでのアバター名はなんだったんだ?」

 

「えっ!?あなたも攻略組!?私はSAOでも今のアバター名と変わらずアスナのままだけど…あなたこそSAOではなんて名乗ってたの?私は立場上攻略組を指揮することがしばしばあったけれど、上やんなんて名前は一度も見たことも聞いたこともないわよ?」

 

「・・・いや、俺もSAOからアバター名は一切変えてないんだが…おいおいこりゃ一体どーなってんだ…」

 

「どうせだから入っていたギルドの名前も教えておくわ。攻略組最強ギルド『血盟騎士団』に所属していて、私はそのギルドの副団長だった。通り名は『閃光のアスナ』。気づけば勝手に知名度は上がっていたんだけれど…これでも聞いたことはないかしら?」

 

「!?!?嘘だろ…それは全部…美琴と同じ…」

 

「・・・ねぇ、あなた本当に攻略組?やっぱり私、あなたみたいな人見たことも聞いたこともないんだけれど…」

 

「・・・じゃあ俺からも聞かせてくれ。『幻想殺し』『超電磁砲』『原子崩し』『一方通行』『神聖剣』…これらのユニークスキルから1つでも聞いたことがあるものは?」

 

「い、いまじんぶれいかー?れーるがん?何を言っているのかさっぱりだけど…『神聖剣』なら聞いたことも見たこともあるわ。だってそれは血盟騎士団の団長…ヒースクリフの…茅場晶彦が使っていたユニークスキルじゃない」

 

「なっ!?そ、そこだけは一致するって…あーもう訳がわからん!ちきしょー!なにがどーなってんだー!?」

 

 

もう一体二人の間の話の食い違いが多すぎて何からどう話せばいいか訳が分からなくなり、上条は頭を乱暴に掻き毟った

 

 

「ねぇ、上やんさん…あなたの探している人はミコトさんって名前なの?」

 

「え?ああ、そいつも元SAOプレイヤーで攻略組なんだが…その様子じゃ美琴の名前も聞いたことはなさそうだな…」

 

「そうね…残念だけど…」

 

「あ、そうだ。確かそっちも人を探してるって言ってたよな?その、プライベートを侵害しない限りで教えてくれるならその人の名前を聞いてもいいか?」

 

「えっと…私の探している人は『キリト』君っていう名前で、同じくSAO生還者なんだけど…聞き覚えは?」

 

「・・・すまん、聞いたこともない名前だ」

 

「そうよね…お互いの話で自分と周りの立場や事情や人物が錯誤しているのに、キリト君が一致するなんておかしな話だし…」

 

「うーむ…あ、そうだ!我ながらナイスアイディア!なぁアスナさん」

 

 

上条は思考の末何かをひらめくと自分の手の平をぽん!と叩くと、アスナに話しかけた

 

 

「え?は、はい?」

 

「良かったら明日の午後3時、シルフ領のスイルベーンにある酒場に来てくれないか?」

 

「明日の3時にスイルベーンの酒場に?一体どうして?」

 

「実は、ある一人の女の子に、SAOのことを含めた俺のこれまでの経歴と、なぜALOに来たのかの理由を話すつもりなんだ。ところがこれを全部話すとなると中々に長い話でな、どうせならアスナさんも含めて一気に説明しようと思ったんだけど、出来るならそこでアスナさんの知ってるSAOの話とそれに関連する話をもっと詳しく色々と聞かせて欲しい」

 

「なるほど…上やん君の言うSAOの話と…ALOに来た理由…それに私の知ってるSAOの話をね…」

 

「ああ、違う種族の領なとこ申し訳ないとは思うが、実はその一緒に話すつもりの子がシルフの女の子でな。それでこの子が中々古参のプレイヤーらしくて、ALO内の事情にも結構精通してると思うんだ。それで、アスナも人を探してるってんなら、その子からそのキリトって人に関する情報が何かしら聞けるかもしれない」

 

「・・・うん、確かに余計な手間を全部省くならその方法が一番手っ取り早いわね…私の方としても君の言うSAOの事情は気になることだらけだし…その上キリト君の情報が聞けるかもしれない可能性があるなら….分かった。明日の3時にスイルベーンの酒場ね。なら今日はスイルベーンの宿屋で落ちることにするわ」

 

「本当か!?ありがとう!」

 

「あ、それと私のこと呼ぶなら別に呼び捨てでも構わないわよ?私は多分これからも上やん君のこと君づけで呼ぶけど」

 

「そっか…じゃあアスナ、一先ずのところはよろしく」

 

「ええ、こちらこそよろしく」

 

 

こうして上条とアスナは握手を交わし、スイルベーンへと到着した後、アスナはスイルベーンの宿屋でログアウトし、上条はベッドで仮眠を取った。この出会いがこれからの自分たちの運命の歯車を大きく変えることになるなど、まだこの時の二人は知る由もなかった

 

 

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