「・・・上やん君、これは一体どういう状況?」
「・・・?どうしたんだよリーファ、そんな仏頂面して」
「あのねぇ!こんな煩雑な状況になるなら説明しておくのがスジってもんでしょ!?しかも増えたメンツが女の子ならなおさら!」
「は、はぁ!?いやそりゃリーファは落ちてたんだから仕方ないことだろ!それにこの場に男女は関係ないだろが!」
「あ、あるの!関係大アリ!///」
「んな理不尽な!?」
「あ、あははは…」
ただ今の時刻は午後3時。世間的に言えばこの時間はお菓子の時間なのだが、この三人を囲むテーブルには茶菓子など一切なく、上条とリーファの痴話喧嘩をアスナは苦笑いしながら見ていた
「まぁいいわ。そこも含めてちゃんと説明してよね」
「おう、そこんとこはこの上やんさんに任せなさい!」
「まったく…えっと、アスナさん…でしたよね?あなたの細剣さばきの噂はかねがね聞いてました。あたしの名前はリーファ。一応この黒いのを世界樹まで道案内する予定なんです。よろしく」
「あ、うん。上やん君から聞いたんだと思うけど、私がそのアスナよ。種族は違うけど仲良くしましょう?こちらこそよろしくね、リーファちゃん」
「さて、それじゃあ早速だが話を始めてもいいか?それと、何度も言うようだがこの話は他言無用だ」
「うん」
「ええ」
上条の顔つきがマジメなものへと変わり、テーブルの周りの空気がガラリと変わる。リーファとアスナは上条の提案を了承すると、上条はゆっくりと話し始めた
「まずは大雑把にだけ説明しようと思う。2年前、ナーヴギアという人間の意識を仮想世界へとダイブさせる革新的なゲームハード、そしてソードアート・オンラインという世界初のフルダイブ式VRMMOゲームが発売された。そのゲームを発売初日に入手し、プレイした計1万人のプレイヤーは仮想世界に囚われ、SAOの世界でのゲームオーバーは現実世界での『死』を意味するデスゲームになり、プレイヤーはアインクラッドの100層を突破してゲームをクリアしなければログアウトはできくなった。世界ではこれを『SAO事件』と呼ぶようになった…ここまではリーファもアスナも知ってるか?」
「うん、あそこまで有名な事件だもんね。分からないはずないよ」
「私も特に問題ないわ」
「それで、俺もそのSAOの世界に囚われて『浮遊城 アインクラッド』の第100層のクリアを目指し、色々なことがあったが、攻略組の仲間たちや様々な人の力を借りて、約2年かけて75層までたどり着いたんだ。でもその75層でのとある出来事がきっかけで、SAOを開発し、デスゲームへと変貌させた張本人である茅場晶彦…アバター名をヒースクリフと名乗る男と対決することになったんだ」
「でも、実は茅場はある人物の手でずっと利用されていただけだっんだ。その茅場を利用していた真の黒幕こそが、あの学園都市統括理事長の『アレイスター=クロウリー』だったんだ」
「???」
「???」
上条の話を聞いていたリーファとアスナはその話に疑問を抱いたのか、互いに視線を合わせ首をかしげたが、上条が話を続けようとしていたので一先ずは話を聞くことにした
「それから俺とアレイスターは死闘をくり広げた。そしてやっとのことで俺はアレイスターに勝ち、ゲームがクリアされたんだ。俺は病院で目を覚まし、これでやっとSAOに囚われた全員が現実に帰って来られたんだ…と、そう思っていたんだ」
「でも、目を覚ました俺とは裏腹に他のSAOに囚われたプレイヤーのほとんどは目を覚まさなかった。俺が病院の先生に聞いたのは、目を覚ましたのは俺を含めて2人だけ…囚われた10000人の内3853人が命を落とし、ゲームをクリアするまで生き残っていた6147人の内、2人だけが目を覚まし、残る6145人は安否不明。計画の首謀者であったアレイスターはゲームクリアと同時に既に死亡していた…と、ニュースやメディアではそう報じられていた」
「「!?!?」」
「だけど、俺は現実の知り合いからこのALOのコンピューターはSAOのコピーサーバーだと知らされて、その他にもいくつかSAOとALOには共通項があることが判明したんだ。だからきっと、未だに目覚めないSAOプレイヤーのみんなを助ける鍵がALOにあると踏んで俺はこの世界に来てリーファと出会った…って感じだ」
上条が話し終わると、アスナは「なるほど」と納得していたようだが、リーファは口元に手を当て、何やら思案してから口を開いた
「・・・どういうこと…?あたしが知っているSAO事件とは一部が重なっているだけで…根本的に全く違う…」
「・・・え?」
「ねぇ、リーファちゃん。良かったら大体でいいからリーファちゃんが知ってるSAO事件について話してくれない?」
「えっと…あたしの知っている限りはSAOのサービス初日に1万人が囚われてゲームをクリアするまでにおよそ2年の歳月が流れて3853人が死亡して6147人がゲームをクリアするまで生き残っていたっていうところまでは同じ…でも、あたしが知ってるSAO事件は、ゲームがクリアされたと同時に生存者は全員現実で目を覚ましたはずだよ?」
「なっ…!?」
「それじゃあやっぱり…リーファちゃんの知ってるSAO事件は私と同じ…上やん君の言うSAO事件だけがこの3人の中では別物の話…」
「それに付け加えるなら、『学園都市』って一体何?『アレイスター=クロウリー』って一体誰?そんな街も人も聞いたことがないし、今初めて聞いたわ」
「・・・えっ?」
「そうね。そこに関しても私はリーファちゃんと同じよ、上やん君」
「・・・え?…がっ!学園都市だよ学園都市!世界中の人や学生なら誰もが一度は夢を見る科学の街!人口約230万人が住んでその8割を学生が占める学生の街!行ったことはなくても聞いたことぐらいはあるはずだ!」
「・・・ごめん、やっぱりその説明を聞いても分からないし、そんな街があることも知らないわ…」
「嘘…だろ…」
アスナがそう断言すると上条は驚愕の顔を浮かべ、開いた口が塞がらなくなっていた
「正直なところ、あたしが詳しいのはALOのことだけで、上やん君の話はにわかにも信じ難い話だし、今ここですんなりと解決できそうにはないわ」
「・・・そうか…」
「でもちょっと待ってて。実はあたしのフレンドの中に1人、アスナさんや上やん君と同じSAO生還者がいるの」
「「えっ!?」」
「実はその人、色々と訳アリで種族はスプリガンなんだけど、スプリガン領を拠点にせずにこの世界中を放浪してるの。確か今は『ケットシー』の領あたりにいるって言ってたし、ここからそう遠くないところにいると思うから、メッセ送ってこっちに来るように言ってみるね」
そう言うとリーファは手慣れた手つきでメニューを開き、キーボードで文を打つとフレンド欄からある人物を選択しメッセージを飛ばした
「え、えっとリーファ…ちなみにその人SAOについての知識はどのくらいあるんだ…?」
「うーん、あたしも詳しく聞いたことないから分かんないけど…それでもその人のALOでの剣筋を見た限りALOじゃかなりの手練れに部類されるはずだし、SAOでもそれなりの腕前を持ってたと思うから、詳しいんじゃないかな…まぁ大丈夫大丈夫!『四人寄れば世界樹の知恵』って言うでしょ!」
「そ、それを言うなら『三人寄れば文殊の知恵』でしょリーファちゃん…シャレてるつもりかもしれないけど…そもそも人数が違うし『樹』の字すら違うわよ…」
「いいのいいの!細かいことは気にしない!…って返信はや!?なになに…『分かった。20分後にはそっちに着くと思う』だってさ!」
「まぁいいか…今は一人でも多くの知恵が欲しいし…にしても今のをもう一回説明せにゃならんのか…」
「まぁまぁ、どうせ3時だしおやつでも食べながら気長に待ちましょうよ。どれどれ…」
「アスナもノリノリかよ…」
「まぁいいじゃん。ずっと頭を捻ってれば解決する話じゃないんだし、それに物事考えるには糖分は必要不可欠だよ?」
「この世界で摂取できる糖分も所詮は仮想なんですがリーファさんそれは…」