「あ〜むっ…むぐむぐ…ん〜っ!美味し〜〜っ!!」
「でっしょー!?これはシルフの自慢なんだけど、このお店のショートケーキは見た目も味もシルフ領では一番…いや、ALO内でも1番だと思うわ!」
「あむっ…もぐもぐ…うん、悔しいが確かに美味い…」
(・・・シリカがもしこの場にいたなら…美味そうに食べたんだろうな…)
リーファの言うSAOに詳しいフレンドが来るまでの間、現在の時間が3時ということもあり、すっかり間食モードになってしまった。三人はそれぞれ店のスイーツを注文し、リーファも自慢するその味を嗜んでいた
「もぐもぐ…あ、そうだ」
「ん?どうしたの上やん君?」
「あのさ、俺はとりあえずこの世界に来た理由を話したけど、アスナがこの世界に来た理由はなんなんだ?」
「あ、それあたしも気になります。普通ならSAOに囚われていた過去なんてあったら、仮想世界が怖くなって二度とVRMMOなんてやらないと思うんですけど…一体なんでですか?」
「・・・そうね。そういえば確かに昨日、上やん君にはちゃんと話すって約束したものね」
二人にそう聞かれると、アスナはケーキを食べていた手を一旦止め、フォークを置き咳払いをすると、ゆっくりと話し始めた
「確かに私も最初は躊躇した。やっぱりあんな怖いことがあった後に、もう一度仮想世界に行くなんて…ってね。でも、それでももう一度行かなきゃって思ったの。もう一度、彼に会うためにね」
「・・・彼?ああ、昨日アスナが言ってた探してる人のことか」
「うん。その人も元SAOプレイヤーだったって上やん君には話したよね?実は私とその人、SAOの世界では結婚して夫婦になったの」
「あー、そういえば結婚システムなんてのがSAOにはあったな…結局上やんさんには最後までなんの縁も所縁もないシステムでしたが…」
「でも、私と彼はゲームクリアと同時にお互いに引き裂かれてしまった…何度も何度もSAO事件を捜査してる政府の役人の人に掛け合ったのに、『プレイヤーの個人情報やプライバシーに関することは一切開示できません』って言われちゃってね…現実世界でその人と再会することは叶わなかった…」
「あれ?でも確かどこかの廃校になった学校を改築して、SAO生還者のための学校があるって聞きましたけど…そこでは再会しなかったんですか?」
「ううん、実は私の両親…まぁとくに母親が『そんな得体も知れない異常者ばかりの学校に入れられるか』って反対して強引に別の学校に入らされたの」
「そ、そんな…」
「もちろん、生還者の学校には入れなかったけど、自分でその学校に足を運んだわ。でも、受付の人に『この学校の性質上、他の学校の生徒さんを入れる訳にはいかないし、生徒の戸籍を明かすわけにはいかない』って為すすべなく門前払いにされたの…」
「でも、諦めきれなかった。何とかして彼ともう一度会いたい。だから私は仮想世界にもう一度行くことを決めたの。確かに私たちを悲劇に巻き込んだのは仮想世界だけど、私たちが出会って、私たちを繋げてくれたのもまた仮想世界なんだから」
「なるほどな…それで巷じゃ人気のVRMMOのALOを始めた…っていうことか」
「うん。それでかれこれ両親の目を盗んでALOを始めて、ひたすらALOの中を飛び回り続けて2ヶ月ぐらい経つんだけど、一向に彼の手がかりは掴めなかった…だったら、飛び回りながら色んな人を倒して自分の名前が噂で飛び交うぐらい有名にしようって考えたの」
「なるほど…確かに名前が売れればその噂をどっかで聞きつけて会いに来てくれるかもしれないもんな。それもSAO時代と似たような『閃光』なんて通り名まで売れればなおさらその人はアスナだって気づいてくれるわけだ」
「まぁ、彼もALOをやってくれてるなんて保証はどこにもないんだけどね。でも私、信じてるんだ。例えALOじゃなくても、きっと彼も私を探してどこかの仮想世界を歩いてくれてるんだ…ってね」
「・・・素敵なお話ですね…女の子だったらそんな運命の出会いに憧れちゃいますよ」
「だから私、どこかの仮想世界で必ず彼と再会して、そしたら今度は現実世界でちゃんとお互いに顔を合わせて、恋人になろうって思うんだ…彼と…『キリト君』と…」
そう言うとアスナは頬を赤く染め、両手を自分の胸に置き、優しくぎゅっと握り締めた。自分が愛し、自分を愛してくれた人のことを考えながら、いつか必ず再会の日が来ると願って
「・・・ぇ…?」
「なるほどな…俺もその気持ちは良く分かるよ。やっぱり俺も美琴だけじゃなく、再会したい人がいっぱいいるからな。その人達に再会できるなら…例えどんなに無茶だとわかっていt…」
「ご、ごっ!ごごっごめん上やん君!ちょ、ちょちょちょっ!ちょっとタンマ!あ、アスナさん…今なんて…?」
「え?仮想世界で再会したら…今度は現実世界でちゃんと顔を合わせて恋人になろうって…」
「そ、その後!その人の名前!一体なんて…!?」
「え?えっと…キリt…」
ガチャ!ギィ…バタンッ!
「おーいリーファー?言われた通り来てやったぞー。一体なんなんだ?俺に聞いてほしい話があるってのは…」
「・・・お、お兄…ちゃん…」
「げっ!?あ、あのなぁ…ALOでその呼び方はやめろってあれ…ほ…ど…」
「・・・き、キリ…ト…くん…?」
「・・・ぁ…アスナ…なの…か…?」
酒場の扉を開いたスプリガンの少年とアスナの視線が重なると、全ての時間が止まったかのように、その場の空気が凍りつき、その空気とは対照的に二人の視線が熱く交わり合っていた
「・・・アスナ…アスナ!!」
「キリト君ッ!!」
ダキッ!!
「え゛!?!?」
「やっぱり…やっぱりそうだったんだ…よかったね…よかったねお兄ちゃん…やっと…やっと会えたんだね…」
まるで運命の再会を果たしたような熱い抱擁を交わす二人を見た上条は、目の前で何が起こっているのか分からず驚愕の表情を浮かべ、リーファの目からは次々に大粒の涙が溢れ始めた
「ずっと…現実で目覚めてからずっとアスナを探していたんだ…やっと…やっとまた会えた…もう…もう二度と君を離したりしない…!」
「うん…うん…!私もずっとキリト君を探してたの…諦めなくてよかった…また会えて本当に良かった…私ももうキリト君と離れたくない…!」
「当たり前だ…死んだって離すもんか…好きだ…大好きだ…アスナ…」
「私も…大好きだよ…キリト君…」
そう言うとスプリガンの少年とアスナはより一層強い力で抱きしめ合った
「そうだ…ほら、ユイ。出ておいで?アスナと…ママとまた会えたぞ!」
「え!?ユイちゃんもいるの!?」
「ママー!!」
ポンッ!!ダキッ!!
「ええええええええええええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?!?!?!?」
スプリガンの少年がポンポンと自分の胸ポケットを叩くと、その中から小さな妖精が飛び出してきたかと思えば、いきなり淡い光とともに幼い少女ほどの身長になり、アスナに抱きついた
「ママ…!ママ!やっと…やっと会えましたね…嬉しいです…これでまた三人で一緒に…!」
「え、えーっと…これは一体何が起こってるんでせう?アスナとあの少年は見てるこっちが恥ずかしくなるぐらい熱い抱擁を交わして…胸ポケットからいきなりちっこい妖精が出てきたと思ったら、いきなり幼女になって…そしてこちらでは何故かリーファが滝のように泣いているという…」
全く状況の一端すら掴めない上条だが、他の4人からすればこういう状況になるのが当然なのである。むしろここに居合わせてる上条の方が場違いもいいところである。しかしながら、こうして全ての運命の歯車が見事に噛み合い、アスナとキリトは再会することができた。こうしてこの世界の役者が全員揃い、止まっていたこの世界の時間の針が動き出そうとしていた