「へぇ…じゃあつまり今ここの人間関係を整理するとだ。リーファが呼んだSAOに詳しい人ってのがこのキリトさんで、フレンドではあるけど実は自分のお兄さんで」
「うん」
「俺が昨日偶然出会ってこの場に連れてきたアスナがずっと探してたSAO時代の旦那さんもこのキリトさんで、キリトさんもずっとこの世界でアスナを探して飛び回っていたところ、これまた何の因果かリーファに呼び出された結果、ここでついに感動の再会を果たした…ってことか?」
「そうなるわね」
「なんでリーファがアスナの名前を聞いても分からなかったのかってのは…キリトが誰かを探してALOを始めたのは知ってたけど、その名前と事情までは知らなかったから…と?」
「うん、そんな感じ」
「・・・改めて振り返るととんでもねぇな。普通偶然が重なるに重なってそんな上手いこといくもんかね」
先ほどまで現状の理解が全く追いついていなかった上条だが、スプリガンの少年ことキリトを含めた各々からの説明を受け、やっとのことで現状を理解し、整理していた。しかし、改めて今自分の目の前の状況を認識すると、その奇跡とも言える人の繋がり方に感服を通り越して半ば呆れていた
「でもそう言うけど、上やん君がアスナさんとあたしに会わなきゃ、あたしとアスナさんの繋がりは出来なかったし、なおかつ上やん君がSAO生還者でSAOの話をしなかったらお兄ちゃんはここに来る理由すらもなかったんだから、これは要するに上やん君がここにいる全員を繋げてくれたと言っても過言じゃないんだよ?」
「いやまぁそりゃそうかもしれませんがね…」
「そうだ、まだ自分から名乗っていなかったな。改めまして…リアルじゃリーファの兄で、SAOではアスナと夫婦だったキリトだ。呼び捨てで呼んでくれて構わない。よろしく頼む」
「俺は上やんだ。説明された通りだが色々あってアスナとリーファと出会った。こちらこそよろしくなキリト。えーっとそれで…そこのちっこい妖精さんの名前が…」
「ユイです!私はSAOのメインシステムであるカーディナルのメンタルヘルスカウンセリングプログラムのAIプログラムでした!このALOでは『プライベートピクシー』としてパパをナビゲートしています!」
「・・・おう!とりあえず今の自己紹介で上やんさんはユイちゃんのことを理屈じゃ理解できないことが理解できましたのことよ!…ま、とりあえずよろしくな」
「はい!パパとママ共々お世話になります!上やんさん!」
「はは、まぁ多分これからお世話になるのはこっちの方なんだけどな…」
「そうだ。元はと言えばリーファから聞いてほしい話があるって聞いたんだが…SAOに関することなんだろ?一体どんな話なんだ?」
「私も気になります!」
「そ、そっか…お兄ちゃんとユイちゃんはまだ知らないのか…えーっと…上やん君説明よろしく〜…」
「・・・また俺が一から説明するんでせうか?」
「だって全部説明すると長いし」
「まぁ仕方ないな。これは俺の問題だし、話を聞いてくれるだけでもありがたい訳だ。えーっとまずは………」
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「・・・訳が分からないな…」
「やっぱりか……」
先ほどリーファとアスナにした説明と同じ話を一通りキリトとユイに話したのだが、キリトでさえもいくら頭を捻ろうが答えは出てこず、上条はガックリと肩を落としていた
「ユイ、今の話を聞いて分かることやおかしなことはあったか?」
「そうですね…そもそも基本的に全てがおかしいことなんですが…このALOがSAOのコピーサーバーであることは知っていました。それと上やんさん、少し失礼しますね」
「え?お、おう…」
そう言うとユイはスイッと上条の方に寄り、彼のツンツン頭へ乗った。そして目を閉じて意識を集中すると、上条のデータをスキャンし始めた
「やっぱり…上やんさん、アイテムストレージの中にデータ不詳の謎のアイテムがいくつも入っていませんか?」
「え?あ、ああ。確かに入ってるぞ。最初見たときは何が何やら訳が分からんかったから消さずに今まで放置してたけど…」
「恐らくそのアイテムは、全てSAOの時に上やんさんが入手してストレージに入れていたアイテムで、ALOにログインしたことでそのアイテムデータが破損したものです」
「えっ!?ってことは元々はこれ全部SAOのアイテムなのか!?」
「はい。ですが、ALOの運営側のエラー検出プログラムに引っかかる前に、全て破棄してしまった方がいいです」
「そ、そっか…よし」
[アイテムを全て消去しますか?]
「・・・ぐっ…改めてこういうことを聞かれると勿体無い気がしてくる…」
上条は自分のメニューのウィンドウを操作し、アイテムストレージを開いて消去の手順を辿る。すると、最終確認のためのウィンドウが表示され、つい決心が鈍って指先を引っ込めてしまう
「なーにモタモタしてんのよ上やん君。ほれっ!」
「へ?のわーっ!?なななっ!?ちょっ!?」
[OK] ピコンッ!
ウィンドウを前にして悩む上条を見るなり、じれったくなったリーファが上条の手を取り、その指でOKボタンをタップした。そしてその瞬間を持って上条のアイテムストレージは完全にすっからかんになった
「これでいいんでしょユイちゃん?」
「はい。もう問題ありません」
「ううっ…こうしなきゃいけないと分かっていることなんだが…不幸だ…」
「でも破損してたとはいえ、なんでSAOのアイテムがそのままアイテムストレージの中に残ってたんだ?」
「ああ、それなんだけど…別に残ってるのはアイテムだけって訳じゃないんだ。スキルとかステータスとか…その他にも俺のデータはほとんどSAOをプレイしてた当時のまんまなんだ」
「えっ!?嘘!?なるほど…それでビギナーなのに私と互角に渡り合える訳ね…」
「このALOでの戦闘は当の本人の運動能力に依存するということですが、実際に算出される攻撃のダメージ値は、正確には攻撃のスピード、武器のステータス、そして相手の防御力なども加味して決定されます。上やんさんの場合は極端に高い筋力ステータスや敏捷が攻撃の威力とスピードを補正しているのだと予測されます」
「えっと…ちなみにその上やん君の敏捷と筋力のステータスって…」
「まぁ両方ほぼMAXだな」
「チートじゃん!?えー、いいなー。このゲーム初めて1年以上経つのにあたしなんてまだまだだよー…」
「いやまぁそりゃコッチも2年間ゲーム漬けにされてた訳で…なんだったらキリトやアスナだってSAOはそれぐらいのステータスになってたろ?」
「ま、まぁそりゃそうだが…俺はちゃんと初期値からこのゲーム始めたぞ?」
「私もよ」
「え?」
「俺の場合は政府の役人に掛け合ってユイのデータが残ってるナーヴギアからユイを復元して、アミュスフィアに移行させただけなんだ。俺も最初はナーヴギアでやろうと思ってたんだけど、妹…スグにそれを話したら止められてな。あえなくアミュスフィアを強制的に買わされたんだ。でも、SAOのセーブデータがそっくりそのまま引き継がれるなんてそんなの知らないぞ?」
「私はナーヴギアは政府の人に持って行かれちゃったから、アミュスフィアを買って一からALOを始めた感じかな?」
「考えられるとしたら…上やんが使ってたナーヴギアに保存されてたSAOのセーブデータがそのまま…ってとこか?」
「え?俺も別にナーヴギアでこのゲーム始めた訳じゃねえぞ?」
「・・・どうゆうことだユイ?」
「すいませんパパ。私もそこまで詳しくは分かりませんでした…ですがおそらく上やんさんのキャラクターデータについては、SAOとALOのセーブデータのフォーマットがほぼ同じであることが要因となって、ALOのセーブデータにSAO時代の上やんさんのステータスがどこかからロードされてそのまま上書きされた…ということだと思います」
「なるほど…つまり、何らかの原因でナーヴギアにあるはずの俺のSAOのキャラクターデータがこのALOと結びついた…ってことか」
「はい。そうなります」
「でも、それを解明できても私たちの世界と上やん君の世界のSAO生還者の数の違いは何も分からないよね?」
「ま、まぁそれは…」
アスナがそう言うと上条は言葉に詰まり、キリトもその件に関しては腕を組んでうなるばかりでまるで何も閃かないようだった。しかし、そんな中リーファがおそるおそる手を挙げた
「あ、あの〜…?」
「ん?どうしたリーファ?なんか分かったのか?」
「え、えーっと…分かったって訳じゃないんだけど…可能性の一つとして…というか…いやどうなのかなぁ…」
「いや、遠慮せずにぜひ言ってくれスグ。今はどんな小さなことでも発言してくれた方が議論しやすい」
キリトがリーファのことをそう促すと、リーファは深く息を吐くと軽く咳払いをしてゆっくりと口を開いた
「え、え〜っと…じゃあ言わせてもらうね?多分あり得ないとは思うんだけど…その…上やん君の現実世界とあたしたちの現実世界って…その…」
「『並行世界』…ってことなんじゃないかな?」