とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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フェアリィ・ダンス編
第1話 来訪者


 

「・・・もう2時半か」

 

 

上条がSAOから帰還して既に6ヶ月ほどが経過していた。季節は春。月日は丁度桜もそのほとんどが散り終わった5月の中旬。上条は無事にあのデスゲームから生還し、高校を無事に卒業した。そして学園都市内の大学に進学し真面目に通学しており、先ほど今日の最後の講義を終え昼下がりの中庭のベンチで一休みしていた

 

 

「さて、ぼちぼち行きますかなっと…」

 

「おーい上条当麻ー!!」

 

 

しかし、中庭のベンチから立ち上がり目的地に進めようとした足をすぐさま誰かから呼ぶ声に引き止められた

 

 

「お?なんだ吹寄か」

 

「なんだとは何よ、失礼ね」

 

 

彼を呼ぶ声の主の正体は1人の女性だった。入学した後に気づいたことなのだが、何の因果か高校時代からの友人であった吹寄制理も同じ大学に進学していた

 

 

「確かさっきの講義で今日の大学終わりでしょ?」

 

「あ?ああ、そうだな。あ、悪いけど今日のサークルの飲み会なら…」

 

「パス。でしょ?」

 

「へ?」

 

「今日は『あの人達』の所に行くんでしょ?折角だし私も一緒について行くわ」

 

「え…い、いやでもあの病院に見舞いについて来るって言っても関係者以外は面会謝絶だって…」

 

「あのね、貴様が2年間寝たきりだった時に律儀に顔見に行ってたのはどこの誰よ?あのカエルに似た先生がいるならきっと口聞いてくれるわよ」

 

「あ、そうか…すまん…」

 

「いいのよ、別に謝らなくたって。そりゃ実感湧かないし分かる訳ないわよね。ずっと目瞑ったまんまなのに誰がいつ自分のお見舞いに来てくれてたかなんて」

 

「・・・すまん」

 

 

そう言って吹寄は上条に笑いかけたのとは裏腹に、その言葉をかけられた上条は暗く低い声で返答した

 

 

「やっぱ…そうだよな…こんなこと意味ないよな…吹寄の前で言うことじゃないのかもしれねぇけど…行ってる側はこんなに辛い思いで通ってんのに…当の本人はお礼の一つも言わずに…自分を認知してるのかも分からないってのに…」

 

「・・・訂正しなさい、上条当麻」

 

「・・・え?」

 

「意味がない。なんて言わせないわよ。いい?その耳かっぽじってよく聞きなさい。確かに私もこの2年間はずっと辛かったわ。何日通っても、何ヶ月通い続けても、目の前の人は返事もしないし、顔色の一つだって変えてくれやしない。正直、病院を見るだけで泣きそうになる時もあった。途中で数えるのもやめたぐらい何度も投げ出そうとしたわ」

 

「・・・・・」

 

 

吹寄が上条の見舞いの為に通院していた頃の記憶を独白していく。辛さを絞り出したかのようなその言葉の一つ一つが自分によって生まれていたものだと思うと、上条は心が痛んだ

 

 

「でもね、それ以上に目の前の貴様が目を覚ました時、どれだけ嬉しかったか正直言葉じゃ言い表せないわ」

 

「!!!!!」

 

「あの日、あの時に初めて思った。これまでの私の2年間に意味はあったんだってね。何度も投げ出そうとしたし、何度も貴様の前で挫けそうになった。それでも、ちゃんと意味はあったんだって貴様が目を覚まして私の名前を呼んでくれた時に、そう実感したのよ」

 

「だから上条当麻。貴様のやってることに意味はちゃんとあるのよ。何よりも嬉しいと感じるその日がいつかきっと来る。それに、貴様が自分で決めたことなんでしょ?だったらこんな早くから簡単に投げ出すんじゃないわよ!男でしょ!」

 

「・・・そうだな。吹寄、いつもサンキューな。俺、元気出たよ」

 

「ったく…私は別にもう委員長じゃないってのに…いつまで貴様の面倒をみなきゃいけないのかしら?」

 

 

そう言って目の前の彼女は腕を組んで深いため息を吐いた

 

 

「そういえば、そもそもなんで吹寄は2年間俺の見舞いなんか続けてたんだ?」

 

「委員長だからよ」

 

「そ、その立場だけって理由で2年間やり通したって中々図太い性格してるなお前…」

 

「まぁ世話焼きだし、貴様にまたクラスに戻って来てほしいってずっと思ってたのは事実だしね」

 

「左様ですか…」

 

「ほら、善は急げよ。行くなら行くでさっさと行くわよ」

 

「そうだな、サンキュー」

 

 

そう言って彼らは学園都市内の病院に向けて足を運び始めた

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「こんにちはー」

 

「はい、こんにちは。今日もありがとうございます。御坂さんの面会でよろしいでしょうか?」

 

「はい」

 

「あのー…すみません」

 

「はい?今日はお連れ様が…って、吹寄さんじゃないですか!お久しぶりです!」

 

病院の受付を担当している女性は上条の後ろに隠れていた吹寄の顔を見るなり、驚きの声を上げ、久しぶりに会えたことを喜んでいた。吹寄も2年間この病院に通い続けていたのだから受付の女性に顔を覚えられていて当然と言えば当然かもしれない

 

 

「はい、お久しぶりです。それでなんですけど私、彼女の関係者じゃないんですけど彼のお付きとして面会しても大丈夫ですか?」

 

「あ〜〜…そうですねぇ…大変申し訳ないんですけれど直接の関係がないと流石に…」

 

「やっぱりそうですよね…」

 

「なに、彼女ならば構わないさ。お通ししてあげなさい」

 

「あ、先生」

 

 

すると奥から受付に向かって歩いて来ていたカエルによく似た「冥土帰し」と呼ばれる医者が3人に話しかけた

 

 

「ところで君、丁度いいところに来たね」

 

「へ?俺ですか?」

 

「君に会いに来ている人たちがそこの奥にある客室で君を待っているよ」

 

「俺に会いに?一体誰がですか?」

 

「会えばすぐに分かるさ」

 

「???」

 

 

流石にそこまで客室に来ていると言われる人物について煙に巻かれると気になるのを通り越して煙に巻く理由を考え始める上条だったが、そんな彼を気にせず冥土帰しは続けた

 

 

「そういう訳でだね、君は客室に、彼女は御坂君の病室に行くといい。彼女の病室までは僕が案内しよう」

 

「あ、わざわざご丁寧にありがとうございます。そういうことならまた後で会いましょ、上条」

 

「あ、ああ、分かった。こっちの用が済んだらそっちに行くよ」

 

 

その言葉を聞くと冥土帰しと吹寄は美琴の病室へと歩き始め、上条は先ほど言われた通りの客室へ向かい、その扉の前に立った

 

 

「え〜っと…まぁとりあえずノックしとくか…」

 

コンコンッ…

 

 

どこか不安げなに聞こえるような弱々しい音と叩き方で2回ノックをした上条。そしてその扉のドアノブに手をかける

 

 

「し、失礼しまーす…」

 

 

上条が客室の扉を開けたその先にいたのは、上条がとても良く知る三人だった

 

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