とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第22話 剣と拳

 

「よし、じゃあこの辺でいいか」

 

「そうね」

 

 

装備やアイテムなどの買い出しを終えた上条一行は、リーファと上条のデュエルの為にスイルベーンを出て少し歩いたところにある丘の上に来ていた

 

 

「でも、なんでわざわざ一旦スイルベーンを出る必要があったんだ?」

 

「スイルベーンはシルフの領だから基本は他種族から攻撃される分にはシルフのHPは減らない…って話したよね?でもデュエルなら話は別。ちゃんと他種族が相手でも領土内のシルフのHPは減る」

 

「だったらなおさらなんで?」

 

「だってあんなにいっぱい建物がある場所でデュエルしたら満足に飛べないでしょ?」

 

「それもそうか」

 

「じゃ、お互い逆向きに10歩歩いたところからスタートね。あたしからデュエル申請送るから」

 

「了解」

 

 

お互いに確認を取るとリーファと上条は背を向け合い、指定したスタート位置に向けて歩き出した

 

 

「さて、お二人さんのお手並み拝見だな」

 

<パパー!私も見たいですー!

 

「あ、悪い悪い。ほら、出ておいでユイ」

 

ピューンッ!

 

「ふぅー…ありがとうございますパパ!」

 

「ほら、ママの膝の上においで?ユイちゃん」

 

「ありがとうございます!ママ!」

 

「なぁアスナ、この中で俺とユイだけなんだかんだで上やんの戦ってるところを見てないんだが、やっぱり強いのか?」

 

「どうかなぁ…私が戦った時の上やん君は盾無しだったけど片手剣で戦ってたし…私も上やん君が本当は素手で戦うって知ったの武具屋が初めてだったから…でも、私と片手剣で戦った時は初見で私のレイピアの連撃をはたき落したわ」

 

「へぇ〜…流石は並行世界かもしれないとは言え元SAO攻略組ってとこだな…楽しみだぜ…」

 

 

キリト一家は上条とリーファのデュエルの邪魔になるといけないと思い、丘の上の芝生に飛んでそこに腰掛け、二人のデュエルを観戦しようとしていた

 

 

「でも本当に大丈夫ー?あたしこれでもリアルじゃ剣道やってて全中ベスト8の実力者だよー?少しは手加減した方がいいー?」

 

 

互いに10歩ずつ距離を取ってからリーファが上条にそう呼びかけた

 

 

「へー、リーファちゃんってリアルじゃ剣道やってるのキリト君?」

 

「ああ。全中ベスト8なだけあってかなり強いんだぞ。俺もSAOから戻った後、リアルでリハビリがてらスグと手合わせしたんだけど歯が立たなかったよ」

 

「へー、そんなに強いんだ…」

 

 

「なーにを言いやがりますかー。上やんさんだって仮にもSAOクリアした身ですぞ?リアルも合わせたら潜り抜けた修羅場の数は数えきれませんのことよ?」

 

 

リーファの心配や手加減など無用だと言わんばかりに上条は詳細には言わないまでも、自分のこれまでの武勇伝を誇らしげに語った

 

 

「じゃあお言葉に甘えて本気でいくわよー?思いっきりぶった切られても後で恨んだりしないでねー?」

 

 

[ デュエル申請を受諾しますか?]

対戦者:Leafa

対戦形式:1vs1

 

 

「そっちこそー!俺も思いっきりぶん殴るけど後で怒んなよー?」

 

「出来るものならどうぞー?」

 

「あんにゃろう…歳上を舐めてくれやがって…目にモノ見せてくれようじゃありませんか」

 

 

そう言うと上条はデュエル申請のウィンドウに表示されたOKボタンを押し、どちらかのHPが0になった時点で決着する「完全決着モード」を選択すると、デュエル開始までのカウントダウンが始まった

 

 

(へぇ…完全決着モードで申し込んでくるとはね…面白いじゃない…!)

 

(・・・さて、この世界での俺の右手がどんなもんなのか確かめないとな…目標はリーファに魔法を使わせてそれに右手で触れることだ…)

 

 

それぞれの思惑を胸に、リーファは鞘から剣を抜き、剣道の基本である攻防にバランスの取れた中段構えを取る。対する上条は背負った盾を左手に持ち自分の前で構え、右手の拳に力を込めた

 

 

[3…2…1…Start!]

 

 

「ッ!!やああああああああああああああああぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

ガギィィンッ!!!

 

 

スタートの合図と同時にリーファが翅で低空飛行し、弾丸のように上条に突撃したが、上条はそれを盾で防いだ

 

 

「最初っからかっ飛んでくるとはな…飛行に自信があるって言うだけのことはあるぜ…」

 

「自信があるのは飛行だけじゃないわ…よっ!!」

 

ガッ!ギィン!ギンッ!

 

「でいっ!めん!めぇーんっ!」

 

 

剣道仕込みの掛け声と打ち込みで上条へと斬りかかるリーファ。しかし、上条は焦ることなく持ち前の反射神経とSAOで培った防御術を駆使し、リーファの斬撃を確実にいなしていた

 

 

「えぃっ!はぁぁっ!やああぁっ!」

 

「おぉ〜…やるなぁ上やん…ここまでスグの剣を一回も喰らってないどころかカスりもしてないぞ」

 

「あの鉄壁っぷり…まるで『団長』ね…」

 

「俺もそう思ってたところだよ…正直あの固さは俺でも通るかどうか…そういう点では『あの男』を彷彿とさせずにはいられないぜ…」

 

「ぇい!くっ!めぇーんっ!!」

 

「ほらどうしたリーファ!?こんな剣筋じゃ俺には届かないぜ!?」

 

(く〜っ…!固すぎ〜っ!このままじゃ埒が明かない!だったら!)

 

バッ!…スタッ!

 

「お?急にどうしたリーファ?」

 

「上やん君の防御の腕前は分かった。悔しいけど、あたしから攻めてるだけじゃその守りは崩せない。だから今度はそっちから打ってきなさい!」

 

 

リーファは攻めてばかりでは上条の盾を崩すことは出来ないと観念し、真後ろに飛んで後退し距離を取ると、上条に向けてそう宣言し、地に足を降ろし再び中段構えで剣を構え直した

 

 

「す、すごいな上やんは…スグの方から早めに見切りをつけて後退したとは言え…スグの攻撃をガードし切るなんて…」

 

「ほうほう…なるほど…では失礼して…」

 

 

すると上条は腰を落とし、右手を下ろし、盾を着けている左手を振りかぶった。その姿はまるで、さながら野球の投手が「アンダースロー」でボールを投げる予備動作のようだった

 

 

「・・・?ねぇ、キリト君。あんな構え見たことある?」

 

「いや、剣道でもあんなのはないし、おそらくは上やんの自己流だろ。まったく…とことん面白いヤツだ。次は一体なにが飛び出すんだ…?」

 

(来るなら来なさい…!どんな攻撃が来たとしても拳の動きなんて所詮は直線的なもの…それを避けて一太刀入れるなんて造作もないこt…!)

 

「ふんっ!!!」

 

ブォンッ!!シュルルルル!!!

 

「・・・へ?なんで盾!?キャアッ!?」

 

シュルルルル………

 

 

上条は振りかぶった自分の左手に着けた盾を思いっきり投げ飛ばした。するとその盾は空気を切りながらリーファ目がけて真っ直ぐに飛んでいき、彼女の頬を掠め、そのまま通り過ぎていった

 

 

「わー!上やんさんすごいです!」

 

「じ、自分の盾を投げ飛ばして攻撃に使うなんて…」

 

「おいおいフリスビーかよ…仮にもアイツの盾そんなに軽くないぞ…一体どんだけ筋力あるんだ…」

 

 

上条の常軌を逸した戦闘スタイルに驚くユイとは対照的に、アスナとキリトはもはや驚愕を通り越して半ば呆れ果てていた

 

 

「本っ当になんてヤツなの!?でもこんなの大してダメージになんてなんないし虚仮威しにしか…!」

 

「そ。こんなのは所詮、ただの虚仮威しだ」

 

「なっ!?」

 

 

上条が投擲した盾に不意を突かれ、リーファはすっかり気を取られていた。その隙を見逃さず、上条は一瞬で彼女との間合いを詰めていた

 

 

「くっ!!」

 

「遅いっ!!」

 

ドゴオオオォォォッ!!!

 

「……カハッ…!」

 

 

リーファが上条から距離を取ろうとするが、その前に彼の右手による渾身のアッパーカットが炸裂した。リーファのHPが減少し、強烈に視界を揺らす衝撃に身体が宙を泳いだ

 

 

「お、女の子に本気のアッパーカットなんて…ゲームだしデュエルで仕方ないとは言え、あまり見ていて気分が良いものじゃないわね…」

 

「か、上やんのやつ…嫁入り前の可愛い妹を…後で覚えとけ…」

 

「・・・ひょっとしてパパってシスコンさんなんですか?」

 

「な、なんてこと言うんだユイ!?誤解だ誤解!別に俺はシスコンじゃない!大体自分の妹が男に殴られて何も思わない兄の方がどうかしてると思うぞ!?」

 

「そ、それもそうですね…」

 

「ッ!まだまだぁっ!þeir slíta…!」

 

 

リーファは宙に浮いた自分の身体を翅を広げることでその体勢を整えた。そして剣を握っていない左手を前に突き出すと、上条へ狙いを定め魔法の呪文を始め、彼女の身体の周囲を詠唱された光の文字が覆った

 

 

「喰らえぇっ!!」

 

(来るかっ!?攻撃魔法!!)

 

 

詠唱が終わり、魔法を発動したリーファの左手から無数の風の刃が吹き荒れ、上条へと襲い掛かった。そして上条は待ち侘びたと言わんばかりに魔法の風刃へと右手を伸ばした

 

 

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