とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第23話 幻想殺し

 

「þeir slíta fimm grǿnn vindr!」

 

ビュオオオオオオッッッ!!!

 

(もらった!今の上やん君の手には身を守る盾もない!それにこの間合いで風魔法のスピード!どうやったって避けられるハズが…!)

 

「ッ!!!」

 

パキィィィィィン!!!

 

「・・・・・え?」

 

(・・・よし。回復魔法も俺には効果なかったしそれが普通だと思ってたけど、攻撃魔法を相手にすんならこんなに便利なモンはないな)

 

 

リーファが放った無数の風の刃は、上条が目の前に突き出した右手に当たった瞬間、跡形もなく崩れ去った。故に

彼のHPはちっとも減少せず、リーファの唱えた魔法はなんの意味も成さなかった

 

 

「・・・え?今…上やん君が何かやったの?私にはリーファちゃんの魔法が上やん君の右手に当たった瞬間に打ち消されたように見えたけど…」

 

「あ、ああ…俺にもそう見えた…でもそんなこと本当にあり得るのか?」

 

「う、嘘…一体なんで…」

 

 

魔法がかき消えたという事実に上条以外の3人は驚かずにはいられなかった。なにしろ、この世界を生きる上での醍醐味とまで言われている魔法が右手に触れるだけであっさりと無力化されたのだから

 

 

シュルルルル…ガシッ!

 

「へ?」

 

「いやー、ありがとなリーファ。おかげで試したかったことが全部確かめられたよ」

 

 

各々が呆気に取られている間に、上条がリーファに向けて投げ飛ばした盾は弧を描いて持ち主の元へとブーメランのように戻ってきていた。その盾を上条は左手でしっかりとキャッチし、また左手にはめ直した

 

 

「リーファも結構やるなぁ。剣道全国ベスト8の剣術もさることながら、最後の魔法は流石に右手がなけりゃ正直やばかったぜ」

 

「そ、そりゃどうも…」

 

「でも、今回はこれでOKだ。元々はそのつもりだったしな。また今度本気でやり合おうぜ。リザイン!」

 

 

[WINNER Leafa!]

 

 

そう言うと上条はデュエルで自らの負けを認める「リザイン」を宣言し、デュエルの勝者を告げるWINNER表示が両者の前に現れ、リーファの勝利を告げた

 

 

「わ、わーい勝ったー…ってそんな訳いくか! 100歩譲ってリザインしたのはいいとして!何よさっきの!?一体どうやったの?」

 

「あー、盾投げたやつか?あれ最初はまぁ苦労したんだよ…全然狙いもマトモに定んなくてよ〜自分の狙い通りに投げれるようになるのに半年かかって、そっから何にも阻まれさえしなけりゃブーメランみたく戻って来るようにマスターするのに1年…いやー長かった長かっt…」

 

「それも驚いたけどそうじゃなくて!最後のあたしの魔法をどうやって防いだかって聞いてるの!!」

 

「『幻想殺し』だよ」

 

「・・・い、いまじんぶれいかー?」

 

「そ。俺の右手だけに宿った俺だけの固有スキル…まぁ早い話がSAO時代に使ってたユニークスキルだ」

 

「・・・どゆこと?」

 

「おーい!リーファー!上やーん!」

 

 

デュエルを終えた2人の元へと離れた場所で観戦していたキリト一家が駆け寄ってきた

 

 

「2人ともお疲れ様!」

 

「おう、サンキュー。アスナ」

 

「サンキュー…じゃありません!ちゃんと説明しなさい!」

 

「まぁそれが普通だよな…SAOやってたキリトとアスナなら分かるだろ?ユニークスキルってヤツが」

 

「あ、ああ。俺もそのユニークスキル使いだったから一応な…」

 

「え!本当かよ!?どんなユニークスキルだったんだ!?」

 

「えーっと…二刀流って言って…片手剣を両手に装備して戦えるようになるヤツだけど…」

 

「俺らの方のSAOにはなかったヤツだな…でもいいなぁ…なんだって俺はこんな地味なヤツで…」

 

「人のなんてどうだっていいでしょ!魔法が効かないスキルだって不思議でしょうがないわよ!」

 

「正確には『効かない』んじゃなくて『打ち消す』んだけどな。それと補足するなら『魔法』と『スキル』だ。一応右手限定で攻撃力も上がってる。だから俺の場合は武器を装備するよりも素手で殴った方が強い」

 

「つまり、魔法とスキルならありとあらゆるものが無効にできるのか?」

 

「まぁ右手で触れればな。他にSAOじゃ街中みたいな安全圏内でも相手を殴ったり、俺の右手が相手に触れてる間に他の誰かが相手に攻撃すればHPを減らせる。でも効果のある範囲は俺の身体全体じゃなくて右手から先だけなんだ」

 

「狭っ!?」

 

「だから身体の右手以外の部分に攻撃が来たら防げない。オマケに魔法がないSAOで無効化出来るのなんてスキルだけだ。だから向こうのスキルなんて無効化して役に立つのはブレスとかの遠距離攻撃系スキルだけで、ソードスキルはスキルの効果を打ち消すだけで剣自体は消えないからそのまま自分に襲いかかってくる」

 

「じゃ、弱点だらけだな…」

 

「それで上やん君の戦闘スタイルは盾に素手で、盾を相手に投げたり相手が普通じゃ考えない戦法なんだね」

 

「まぁSAO時代は対人戦なんてほとんどやんなかったけど、ぶん投げた盾でモンスターがノックバックして隙だらけになったところをぶん殴るってのはよくやった戦法だったな」

 

「・・・でもそれ言っちゃえばめちゃめちゃ狩りの効率悪いよね」

 

「まぁ上やんさんの場合は狩りに出掛けてもモンスターのポップ率が異様に低いから効率なんてあったモンじゃなかったけどな」

 

「え?SAOでは倒したモンスターがまたポップするのは確率ではなく、経過時間で一定の数出てくるはずですが…」

 

「それがこの右手はそういうシステムすらも超越するレベルで上やんさんから運気を奪っていってるんだなこれが。おかげで毎日不幸の連続だ」

 

「い、今の上やんの現状を考慮するなら笑えないな…」

 

 

上条の幻想殺しの特性を正しく理解した上でその弱点の多さや理不尽な仕様に同情と憐れみの目を向ける4人。当の上条でさえも、もうそんな目で見られるのは慣れっこなのでそこまで深く言及はしなかった

 

 

「まぁとりあえずこれでここでやりたい事は全部終わったんだ。HP回復したら世界樹に向けて出発しようぜ」

 

「そうね。じゃあ出発の為に一旦スイルベーンの中央の1番高い塔に戻るわよ」

 

「え?なんでだよ?わざわざ塔に戻んなくてもこっから飛べばいいじゃねぇか」

 

「長距離を飛ぶなら普通は塔のてっぺんから飛ぶんだよ。飛距離が稼げるからな」

 

「なるほど…」

 

「さ!そういうことならボサッとしてないで行きましょ!夜までに森は抜けておきたいし!」

 

「「「おーーー!!!」」」

 

 

こうして上条一行は新たなる旅立ちの為、スイルベーンへと飛び立った

 

 

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