「さて、着いたわね」
「じゃあ早速中に入って上までいこうぜ」
スイルベーンへと戻った上条一行は、世界樹攻略へ向けた出発の場となるスイルベーンの中央にある1番高い塔の前に来ており、そのまま中へと入っていった
「あれ?てっぺんまで登るって聞いたから階段しかないような建物だと思ってたけど、結構中はシルフの人達で賑わってんだな」
「まぁ、これだけ立派な建物をただ出発の為だけの物にしちゃうのも勿体ないからね。ほら、あそこのエレベーターを使えば一発でてっぺんに…」
「リーファ!!」
「?リーファ、誰か呼んでるぞ?」
「え?…ッ!?シグルド…」
リーファの名を呼ぶ声の方へと振り向くと、3人組のシルフの男性がおり、その3人の中心に立つ男はリーファからシグルドと呼ばれていた
「パーティーからお前の名前が消えていてもしやとは思ったが…まさかパーティーを抜ける気なのか?リーファ」
「・・・うん。まぁね」
「残りのメンバーに迷惑がかかるとは思わないのか?」
「パーティーに参加するのは都合のいい時だけで、いつでも抜けていいって約束だったでしょ?」
「だがお前は既に俺のパーティーの一員として名が通っている。理由もなく抜けられては、こちらのメンツに関わる」
「ッ……」
以前自分が告げられた話と内容が違う上に、身勝手な言い分と理不尽な都合の身の上話に思わず表情を曇らせるリーファだったが、そんなリーファとシグルドの間に上条とキリトが割って入り、リーファの隣にアスナが寄ると、その身を案じさせるように彼女の肩に手を乗せた
「大丈夫よリーファちゃん。あんな人の言うことなんて聞く必要ないわ」
「あ、アスナさん……」
「・・・何だ貴様ら?ウンディーネとスプリガンが一体なんの用だ?俺は今大切なパーティーメンバーと話をしていたんだ。そこを退いてもらおうか」
「仲間はアイテムじゃないぜ?」
「・・・なんだと?」
「あらあら、そんな簡単な言葉の意味も分からないんでせうか?他のプレイヤーをアンタの大事な剣や鎧みたいに、装備にロックしておくことは出来ないって意味で言ったんでございますのことよ?」
険しい声と口調で上条とキリトの2人に退けと言ったシグルドに向けて呆れたようにキリトと上条は言った
「お兄ちゃん…上やん君…」
「貴様らッ…!クズ漁りのスプリガン風情がつけあがるな!どうせ領地を追放された『レネゲイド』だろうが!」
「失礼なこと言わないで!キリト君と上やん君はあたしの大切な新しいパーティーメンバーよ!」
「なっ!?リーファ!よもやそんな他種族共と組むとは…まさかお前もこの領地を棄ててレネゲイドになる気なのか!?」
「・・・ええ、そうよ。あたし、ここを出るわ!」
声を荒げて問いかけるシグルドに向けて、多少戸惑いながら言葉の間こそ空いてしまったとはいえ、リーファは真っ直ぐな眼差しと声でそう答えた
「ッ!小虫が這い回るぐらいならば捨て置こうかと思ったが…泥棒の真似事とは調子に乗りすぎたな!ノコノコと他種族の領地に入ってくるからには切られても文句は言わんだろうな!?」
「・・・はぁ〜〜〜…」
とうとう堪忍袋の緒が切れたシグルドは腰に据えた鞘から剣を抜き、その刃を上条とキリトに向けるが、それを見たキリトは呆れたようにため息を吐いた
「!このっ…!!」
「お?なんだ?闘るか?」
「無論!」
「ちょっ!今はヤバイっすよシグさん!こんな人目のつくところで、無抵抗のプレイヤーをKillしたら…」
「ッ!!」
ザワザワザワザワ………
「・・・チッ、精々外では裏切り者らしく逃げ隠れることだなリーファ。今俺を裏切れば、近いうちに必ず後悔することになるぞ」
「・・・そうかよ」
ビュンッ!!!
「ならそっちこそ、最初に俺らをぶった切っておかなかったことを後悔すんなよ?」
「なっ!?!?」
バッキィィィィィ!!!!!
「ぎゃあああああぁぁぁ!?!?」
戦闘態勢を解こうと剣を鞘に戻そうとするシグルドなぞお構いなしに、上条が一瞬で彼の正面へ移動すると、シグルドの顔面に渾身の右ストレートが突き刺さった。思わぬ一撃に堪らずシグルドはゆうに3.4メートル以上ぶっ飛ばされた
「し、シグさん!?」
「や、野郎本気で…!」
「・・・いいさ。100歩譲って、俺もスプリガンなのにシルフ領を我が物顔で歩いている非はある。俺を馬鹿にするなり罵倒するなりは、別にそっちの自由でいいさ」
「クソッ…このゴキブリ風情が…他種族ではこちらのHPを減らせまいと大目に見てやろうと思ったが…そちらがその気ならば仕方がn…!ん?一体なんだこれは?俺のHPが減っている…だと!?バカな!?ここはシルフ領だぞ!?俺が貴様のHPを減らすことは出来ても、貴様が俺のHPを減らすことは不可能なハズ…そもそも攻撃することさえ…!」
「でもな…仮にもお前の仲間だったリーファを…今の俺のかけがえのない仲間のリーファを傷つけることだけは許さねぇぞ!!!」
「!!!!!」
(なるほど…確かにこの場で俺たちスプリガンは攻撃できないが、上やんの場合そもそも攻撃する武器がない上、加えてあの右手だ。SAOじゃ圏内でHPが減らせる訳だが、さしずめこの世界じゃ『中立域も種族領も関係なしにHPを減らせる』訳か)
「だ、黙って聞いておけば…勝手なことを抜かしおって…俺はいずれこの種族を虐げる男だぞぉぉぉぉぉ!!!」
ブォンッ!!!
上条の拳でぶっ飛ばされ倒れていたシグルドが立ち上がると、その剣を大きく振りかぶり、上条に向かって振り下ろした
「いいぜ…それでもテメエがリーファを自分に縛りつけて…言いなりに出来ると思ってんなら…」
「死ねええええぇぇぇぇ!!!!」
「まずはテメエのその身勝手な幻想をぶち殺す!!!」
ドゴオオオオオォォォォォ!!!!!
「・・・がっ……!」
シグルドの剣筋を見切り、いとも簡単にその刃をかわした上条はもう一度シグルドの顔面にありったけの力を込めた右の拳を叩き込んだ。たちまちシグルドのHPは底をつき、その身体が足の先からゆっくりと緑の炎に変わり始めた
「・・・覚え…ていろ…すぐに…貴様を…殺しに…サラ…まn……」
ボウッ!!!
シグルドは消える直前に何かを呟いていたが、全てを語り終えるまでにリメンライト化し、その口から全てが語られることはなかった
「う、嘘だろ…本当にシグさんが…」
「い、いやその前にどうやって他種族の領地でPKなんて…!」
「で?どうする?お前らも一緒に燃え尽きるか?」
「「ひいっ!?」」
「やめといた方がいいんじゃないか?無抵抗の俺やアスナに剣を向けて周囲の反感を買うのはそっちの勝手だが、唯一抵抗できる彼に立ち向かったところで、殴られまくって顔面モザイクアートになるオチは目に見えてるぜ?」
「「し…失礼しましたぁ〜〜!!」」
ピュ〜〜〜〜ン!!!
まるでギャグ漫画やギャグアニメのワンシーンのようにシグルドの部下の2人は一目散に塔を飛び出し、上条達の前から去っていった
「おととい来やがれバァーーーカァーーー!!!」
「いや上やん、何もそこまでギャグマンガ調にしなくていいぞ…」
パチパチパチパチパチパチ!!!!!
「お?」
「カッコよかったぞー!」「スカッとしたぞー!」「素敵ー!」「お前達はシルフの誇りだー!」「ヒューヒュー!」
パチパチパチパチパチパチ!!!!!
「あ、あははは…こりゃちょっと目立ち過ぎたな…」
「もう!上やん君があそこまで派手に暴れるからでしょ!…とりあえず、私たちがここに居続けてもこの騒ぎは止まないでしょうし、早いところエレベーターに乗って上に行きましょう?」
「そうだな。そうしよう」