かくして上条一行は塔の下でシグルド達と一波乱起こし、その一部始終を見ていたシルフ達が、あまりにも自分達を囃し立ててしまった為、結果的に逃げるように塔のてっぺんへと辿り着いた。そこで上条が目にしたのは、青く澄み渡り、気持ちよく風が吹き、いくつもの雲が泳ぐ、どこまでも果てしなく広がる大空だった
「うおおおおお…これはすごいな…空が近い…手を伸ばせば届きそうだ」
「ごめんね上やん君…変なことに巻き込んじゃって…」
「ん?あーいやなに、そんなに気にすんなよ。アイツの言い分に俺が勝手にカッとなって勝手に自分でやったことだからさ」
「それでも、その…あたしを縛り付けるなとか…あたしが大切な仲間だって言ってくれたのは…嬉しかった」
「・・・そっか、なら良かった」
そんな風に話す2人を清々しい風が包み込み、その顔と髪を心地良くも、どこかこそばゆく撫でた。するとリーファは顔を紅潮させ、両手の人差し指を絡ませながらモジモジと上条に向けて囁いた
「それとね…その…///すごい…カッコよかった…よ…///」
「・・・?何か言ったかリーファ?」
「い、いいいや!な、ななな何でもない何でもない!!///」
「・・・?まぁでも、今この世界で俺が一番最初に出会って、一番世話になったのはリーファだし、大切な仲間の1人に変わりはないさ。これからも頼りにしてるぜ?」
ポンッ…ポンッ…
「ぴゃああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?////////」
リーファが何やら恥ずかしながら何かを言っていたようだが、心地よく吹く風に声が飛ばされてしまい上条の耳には届かなかった。すると上条にしては珍しく気を利かせたのか、せめてと思い自分の今の心情をリーファに話した。しかしその言葉の終わりにリーファの頭を2度優しく撫でると、意味不明な悲鳴の直後に彼女の顔は一瞬で茹でダコのように真っ赤に爆発した
「なっ!?ど、どうしたリーファ!?めちゃめちゃ顔赤いぞ!?熱でもあるんじゃないか!?」
ピトッ…
「きゃああああああああああああああああ!?!?!?///ちょっ!ちょちょちょ、ちょっと待って!///今はダメ!今はダメぇぇぇぇぇ!!!///」
バッチコーーーン!!!☆
「何でだああああああ!?!?」
リーファの顔が急激に赤くなったことで、熱があるのかと心配した上条は彼女のおでこに自分のおでこを重ね、熱の有無を確認したが、これまたリーファの意味不明な悲鳴の後に、頬に思いっきりビンタを食らって吹っ飛んだ
「ぐふっ…ふ、不幸だ…い、いやまぁVRだから熱はないと思うけどこれは…理不尽だ…」
(うわあああああああああああああああああ!!!/// ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!///落ち着いて落ち着くのよ桐ヶ谷直葉!!上やん君は大学生よ大学生!!それに比べてあたしはまだ高1よ高1!!あれ?そういえば厳密には3つしか違わない…いやいやいや!そういうことじゃなくてぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!///)
ぶっ倒された上条とは裏腹に、心の内側がもはや爆発寸前で一人悶絶するリーファ。すると、そんな二人を遠くから見ていたキリト夫妻が耳打ちで話し合っていた
「ねぇねぇキリト君、あの2人なんだかいい感じじゃない?」
「そうだな、まぁスグのあの反応から見るに、スグが多少なりとも上やんを好意的に想ってるのは確実だろうな」
「でも、肝心の上やん君は全く気づいてなさそうだね。どこかの誰かさんと同じで」
「ど、どうもすいません…」
「でもいいなぁリーファちゃん…私もまた誰かを好きになったばかりの初々しい気分味わってみたいなぁ…」
「・・・その気分を味わいたいからって浮気はしないでくれよ?」
「ママ!浮気はダメです!ママにはパパしかいません!」
「ち、違うわよ!そういう意味じゃなくって…!///」
「そう言えばスグは初恋…なのか?」
「リアルではそういう話はしないの?」
「まぁそうだな…基本的にはそういう話はしない…かな?でもリアルじゃかなりモテるらしい」
「へ〜…リーファちゃんも上やん君も隅に置けないなー」
「・・・そうだな、俺も上やんだったら安心してスグを任せられる」
「もうキリト君、それじゃお兄ちゃんじゃなくてお父さんみたいだよ」
「え?あ、そう言われればそうだな…参った参った!あははは!」
「私もパパの自慢の娘ですから!私が誰かのお嫁さんにもらわれる時は全力で死守して下さい!」
「おー、ユイもいつかは誰かのお嫁さんになるのかー。それはパパも楽しみだなー」
「止めてくれないんですか!?」
「おーいキリトー!アスナー!そんなとこでイチャついてないで早く行こうぜー!?」
「違うよー!上やん君の方がリーファちゃんとイチャイチャしてたから気まずくて入れなかったんだよー!」
「いやしてねぇよ!?」
こうして後ろから2人を見守っていたキリト達も上条達の方へと歩み寄っていき、塔の端へと4人が横一列に並んだ
「よし…みんな準備はいいか!?」
「おう!」
「うん!」
「ええ!」
「はい!」
上条の呼びかけにキリト、リーファ、アスナ、ユイの順番に返答し、全員が背中の翅を大きく広げた
「よーし!しゅっぱーーーt…」
「リーファちゃーーーん!!!」
「ずこーーーっ!!だ、誰だ…折角上やんさん御一行が気持ちよく旅立とうとしてた時に…」
「よ、よりにもよってレコンか…」
上条一行がまさに飛び立とうとしたその瞬間、背後のエレベーターからリーファを呼ぶ声の方に振り返ると、レコンがこちらに向かって走って来ていた。そんな彼の姿を見たリーファは何やら面倒そうな顔をしていた
「ひどいよーーー!!一言声かけてから出発してもいいじゃない!」
「ごっめーん、忘れてた♪」
「ガクッ…所詮僕の存在なんてその程度だよ…それよりリーファちゃん、パーティー抜けたんだって?それにシグルドが領土内なのに他種族にぶっ飛ばされたって…」
「あーー、うん。色々あってね。まぁ大半はその場の勢い半分だけどね。で?レコンはどうするの?」
「決まってるじゃない!この剣は!リーファちゃんの為だけに捧げてるんだから!」
「えー、別にそんなのいらなーい」
「え、えええぇぇぇ……」
カッコよく自身の腰に据えた短剣を掲げたレコンだったが、リーファにあっさりとフラれてしまい、大きく肩を落とし落胆した
「す、スグも中々辛辣だな…」
「ま、まぁそう言う訳だから、僕も当然ついて行くよ…って言いたいところだけど、ちょっと気になることがあるんだよね」
「え、なに?」
「まだ確証はないんだけど、少し調べてみるから僕はまだシグルドのパーティーに残るよ…それとえーっと、リーファちゃんの新しいパーティーのみなさん」
「「「?」」」
「彼女、トラブルに飛び込んでいく癖があるんで気をつけて下さいね」
「ああ、任せとけ。いざという時は何としてでも、俺がリーファを守る」
「へええぇぇぇっ!?///」
「それから!言っておきますけど…」
「・・・おう?」
上条の一言にまた頬を紅潮させるリーファを他所に、レコンは上条の目の前へと近づいていき、2人の顔の距離が10センチもないほどまで迫ったところで口を開いた
「言っておきますけど!彼女は僕の…!」
「ッ!!///」
ガスッ!!!
「んぎゃあああああ〜っ!?!?」
ガスッ!ガスッ!ガスッ!
「しばらく!中立域にいると!思うから!何かあったらメールで!ねっ!」
「痛い!痛い痛い!!リーファちゃんそんなに踏まないで!!」
レコンが上条に何を言おうとしたか察知したリーファは、彼の足を思いっきり踏みつけ、そこからまたさらに言葉の節に合わせて何度も踏みつけた
「なぁリーファ、お前やっぱレコンと付き合ってんじゃないのか?」
「は、はあっ!?///違うわよ!前も違うって言ったでしょ!それにあたしたちのどこをどう見たら付き合ってるように見えんのよ!?///」
「え?いや普通に仲良いし、レコンも今『リーファちゃんは僕の』って言ってたし、そりゃ要するにリーファはレコンの物で、それは恋人なんだろ?」
「違うわっ!!///耳の聞こえ方と解釈が都合良すぎよっ!たまたまそこでレコンの言葉が途切れただけ!!それに誰が好き好んでこんなパッとしない奴と付き合うのよ!///」
「そ、そんなにハッキリ言われると流石の僕でも立ち直れないよ…」
「や、やっぱりリーファちゃんって、レコン君に対してはひたすら辛辣だよねキリト君…」
「人間の恋心というのは良くも悪くも複雑なものなんですね。パパもママもそうだったんですか?」
「そ、それもそうだが…上やんの鈍感っぷりもどうかと思うぞ俺は…俺も人の事言えた義理じゃないが、アレよりはまだマシな気がする…」
「ったくもう…じゃあそういうことだから。さっきも言ったけど何かあったらメールしなさいね。あぁもうこんな時間…急がないと今日中に森を抜けられないわ」
「そうだな、それじゃあ改めまして出発だ!目指すは央都アルン!そして世界樹のてっぺんだ!」
「「「おーーーー!!!」」」
ビュン!!ゴオオオオオオ!!!!!
こうして塔の頂点から飛び立った上条一行は、世界樹を目指し、その翅で大空へと羽ばたいて行った