とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第26話 暗闇

 

スイルベーンを旅立ち、世界樹を目指して飛び立った上条一行。しばらく飛行を続けていたが、そんな空を泳ぐ最中、上条はリーファへと話しかけた

 

 

「ところでリーファ、塔の一件でシグルドのやつが言ってた『レネゲイド』ってのはなんなんだ?」

 

「ああ、えっと…自分の種族の領地を棄てたプレイヤーはレネゲイド…つまり、『脱領者』って呼ばれて蔑まれているのよ」

 

「そ、それはなんかなぁ…そこまでしなくたって普通のゲームなんだから領地出たぐらいで蔑むんじゃなくて純粋に楽しめばいいのによぉ…」

 

「そうだよね…なんでみんな、縛ったり縛られたがるのかな…折角翅があるのにね…」

 

「・・・・・」

 

「だからね、あたし、上やん君に感謝してるの」

 

「ん?お、俺に感謝?」

 

「うん。ずっとスイルベーンを出ようと思ってたの。でも、あのパーティーのこともあって、旅立つ明確な機会と決心がつかなかったんだけど、そんなあたしの背中を、上やん君が押してくれた」

 

「いやいや、俺はそんな大したことしてねぇよ。それに、最後にシグルドにちゃんと自分の意思を真っ直ぐに伝えられてたじゃねぇか。あれは紛れもなく、リーファ自身の決意の表れだよ」

 

「う、うん…ありがと…///」

 

「おーい!二人とも〜!ルグルー回廊が見えたぞ〜!!」

 

 

そんな会話を交わす二人に、先方を飛ぶキリトが呼びかけた。そしてその進行方向へ目をやると、巨大な山岳と、その麓に小さな洞窟が見えた

 

 

「了解お兄ちゃーーん!さて、それじゃ一旦降りようか上やん君」

 

「え?なんでわざわざ降りるんだ?山飛び越えりゃいいじゃねぇか」

 

「あの山は飛行限界高度よりも山頂が高いせいで、山越えには洞窟を抜けないといけないの。シルフ領からアルンへ向かう一番の難所…らしいわ。あたしもここから先は初めてなのよ。まぁ世界中を飛び回ってたお兄ちゃんとアスナさんは初めてかどうか分かんないけど」

 

「なるほどね…」

 

 

そう言って上条一行は少しずつ減速していき、ゆっくりと「ルグルー回廊」と呼ばれる洞窟の入り口へと降り立った

 

 

「それじゃ、早速中に進みましょ?洞窟の中にある中立都市『ルグルー』が今日のあたし達の目標地点で、そこまで行ったら今日は一旦みんなログアウトね」

 

「よっしゃ!後少しだ!気合い入れていこうぜーみんな!……ん?」

 

「・・・?どうかしたの上やん君?」

 

「・・・いや、今なんか誰かに見られてる感じがして…」

 

 

不意に誰かの視線のような物を感じ取った上条は周囲を見回し、周囲にそれらしき人がいないかどうか確認した

 

 

「誰かに見られてる?ユイ、近くにプレイヤーはいるか?」

 

「いえ?反応はありません」

 

「んー…ひょっとしたら『トレーサー』がついてるのかも」

 

「トレーサーって?」

 

「追跡魔法よ。大概は小さい使い魔の姿で術者に対象にしたモンスターやプレイヤーの位置を教えるの」

 

「探知機みたいなもんか…解除する方法はないのか?」

 

「トレーサーを見つけられれば破壊することは出来るし解除は可能だけど、そもそも術者の魔法スキルが高ければ高いほど術者との間に取れる距離が増えて、低ければ低いほど距離が短いものだから、中立域のこんな深くのフィールドまで追ってくるのはほぼ不可能ね」

 

「なるほど…じゃあ俺のただの勘違いか自意識過剰か…とりあえず先を急ごうぜ」

 

「うん、そうだね」

 

 

そう言って上条一行は洞窟の奥へと入っていき、その道を道なりに進んでいったが、その途中で洞窟の内部に光が届かなくなり、その視界が闇に包まれ周りがほとんど見えなくなってしまった

 

 

「うわ…結構暗いな…こりゃ何も見えないぞ」

 

「そうだね…ねぇお兄ちゃん『暗視能力付加魔法』使える?」

 

「そりゃもちろん」

 

「じゃあお願い」

 

「了解、っと…」

 

「Oss náða nótt lysa auga」

 

 

リーファにそう頼まれると、キリトは呪文の詠唱を行い、暗視能力付加魔法が発動した。すると、全員の視界が鮮明になり、本来は暗くて先も何も見えないはずの洞窟の内部がハッキリと見えるようになった

 

 

「おー、明るーい!ありがとうお兄ちゃん!」

 

「ありがとうキリト君」

 

「お安い御用さ」

 

「え?俺暗いままなんだけど」

 

 

しかし、この男、上条当麻にはあらゆる異能の力を問答無用で打ち消してしまう「幻想殺し」が右手に宿っている為、キリトの暗視能力付加魔法が効いておらず視界は依然として闇に包まれていた

 

 

「え?あーそっか…上やんには幻想殺しがあるから補助魔法が効かないのか…参ったな…」

 

「・・・!じゃあリーファちゃんが代わりに上やん君と手を繋いで誘導してあげればいいんだよ♪」

 

「あ、なるほど……って…え…?えええええええええええ!?!?///」

 

「おぉっ!なるほど!そりゃいいやアスナ!ナイスアイデアだ!それなら何の問題もない!」

 

 

上条への対応に思考をこじらせるキリトを見ていたアスナがまるで頭の中の電球に光が灯ったような明るい口調でリーファにそう告げた。すると、頬を赤く染めて慌てるリーファを他所に、キリトもアスナのアイデアに大賛成とばかりに乗っかっていった

 

 

「もっ、問題なくない!むしろ問題アリ!問題大アリ!!///」

 

「えー?でも上やん君と手を繋ぐだけだよー?」

 

「頼むよスグ、上やんに魔法は効かないし、それしか方法がないんだ。上やんが周りが見えなくて壁に激突しまくるのも悪いし頼むよ…」

 

「そ、それでも無理なものは無理!///大体、何も私じゃなくてもお兄ちゃんかアスナさんが上やん君と手繋げば問題ないじゃん!」

 

「わ、私キリト君以外の男の子と手を繋ぐのは…ちょっと…」

 

「うっ…じゃ、じゃあそれこそお兄ちゃんが…!」

 

「いやそれこそ俺がみんなに魔法かけた術者本人だし、もし何かの不意に上やんの幻想殺しが発動したらまた一気にみんな視界が暗くなるし、もしその隙に敵が来たら誰も対応できなくなるかもしれないぞ?」

 

「う、ううう…///」

 

「あ、あー…リーファ?別に嫌だったら無理に繋いでくれなくてもいいんだぞ?俺は壁伝いに手を置いて注意深く歩くから。それに何よりリーファも急に俺の右手に触れて視界が暗くなるリスクもあるからな。気にしないでくれ」

 

「えっ!?あ、ち、違うの!違くて別に嫌とかじゃないの!そ、その…なんて言うかえ〜っと…///」

 

 

上条にかけられた誤解をどうにかして解きたいと思い、弁解を図るリーファだったが、どう言ったらいいかが分からず、手をわちゃわちゃさせ慌てることしか出来なかった

 

 

「大丈夫だって、気にしてない。そりゃ恋人でもないのに大学生のおっさんの手なんて触りたくねーもんな。だから大丈b…」

 

「せ、背中ッ!!!」

 

「・・・はい?」

 

「背中だったら…触っていいから…///そのまま私の後ろ付いてきて…///」

 

「お、おう…そうか…それなら…まぁじゃあ失礼して…」

 

 

そして上条は右手でリーファにかけられた暗視能力付加魔法を打ち消さぬように左手を前に出し、ゆっくりと彼女の背中に優しく触れた

 

 

ピトッ…

 

「うひゃん!?!?///」

 

「あ、悪い。くすぐったかったか?」

 

「や、やっぱ背中じゃなくて肩!肩なら大丈夫だから!///」

 

「お、おう…分かった…」

 

ガシッ…

 

「お、OK…大丈夫…///」

 

「よ、よし…キリト、こっちは大丈夫だ。先に進んでくれ」

 

「OK。上やんも足元には気をつけてスグの肩を離すなよ」

 

「大丈夫だ、任せとけ」

 

 

こうして上条の問題も解決したことで、一行は再び洞窟の奥へと進み始めた。しかし、リーファと上条の先方を行くキリトとアスナの間では

 

 

「キリト君、ナイス♪」

 

「アスナの方こそ、本当にいいアイデアだったよ。まぁ、手を繋ぐまではいかなかったけどな」

 

「何かこういう誰かをくっつけようとするのって楽しいよね♪」

 

「そうだな♪」

 

 

こうして各々の陰謀が渦巻く中、上条一行はルグルー回廊の奥へと歩を進めていったのだった

 

 

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