「ところで上やん君って魔法が効かないんでしょ?じゃあ回復魔法とかステータス補助魔法とか能力付加魔法を上やん君に唱えても意味はないの?」
洞窟を歩きながら進む上条一行。そんな中、アスナが上条へと向けてそんな疑問を持った
「そうだな。さっきもそうだったけどアスナ達のMPが減るだけで俺には何の兆しも見られない…って感じだ」
「なら、上やんが自分で魔法は唱えられないのか?」
「え?あーそりゃ確かに試してなかったな…いやでも多分無理だよ」
(現実でも無能力者扱いだし…)
「まぁでも確かに自分で自分に回復魔法とか唱えても、結局はその右手が打ち消しちゃうから無理かもしれないけど、例えば対象が自分じゃなかったら平気なんじゃないかな?」
「・・・と言うと?」
「相手を対象にする攻撃魔法とか…スプリガン得意の幻惑魔法とか!」
「・・・なるほど。一理あるっちゃあるか…いやでも多分無理だぞ?」
「まぁまぁ、一回ぐらい試してみてもいいんじゃないか?」
「・・・そうだな、試してみるか」
「えーっとそれじゃ、私が上やん君の肩に手置いといてあげるから、一旦私の肩から左手離して、自分のステータスを開いて魔法スキルの項目を開いてみて?」
「えっと…こうか?」
そう言われ、リーファは上条の左肩に手を置き、上条は自分の左手を振ってステータスウィンドウを開いて、魔法スキルの項目をタップした
「そう、それでここ。ここをタップすると幻惑魔法の呪文が出てくるから読んでみて」
「えーっと…なになに…せあー…うらーざ…のーと…でぃぷと…あうが…」
「発音下手くそすぎ!?上やん君本当に大学生!?」
「上やんさんにこういうのを求めちゃダメなんだよ…もっと簡単なのねーのか?三節ぐらいのやつ」
「三節のなんて短すぎてないわ!まーでも、今唱えようとしてるのは難しい方の幻惑魔法だし…じゃあこっちの攻撃魔法は?比較的短いし簡単だと思うけど…」
「えーーっと…」
「それとアドバイス。機械的に丸暗記するんじゃなくて、力の言葉の意味を覚えて、魔法の効果と関連をつけて記憶するのよ」
「・・・なんでゲームの中でまでこんな英語の勉強みたいなことせにゃならんのですか…」
「ほら、泣き言言ってないで。今は試しに一回唱えてみるだけでしょ?覚えるのは後回しにして、とりあえず一回本気で発音まで気をつけてしっかり唱えてみて?」
「・・・っしゃ!そうことなら一回本気でいくぞ!」
そう言うと上条は気合いを入れ直し、右手を前に突き出してウィンドウに表示された呪文を詠唱した
「Ek skýt tuttugu smár striða!」
・・・・・シーン…
「・・・我ながら完璧だったと上やんさんは思うんでせうが?」
「な、何も起こらないね…」
「・・・やっぱ俺に魔法は無理か…まぁ分かっちゃいたけど…」
「ま、まぁ相手の魔法も上やん君には効かないんだし似たようなもんだよ…」
「・・・不幸だ…まぁいいや、暗記の手間が省けたと思えば」
そう言いながら魔法を使えない事実にガックリと肩を落とした上条は、思考を無理矢理プラスに変え、モチベーションを保った
ピコンッ!
「あれ?メッセ入った…ごめん上やん君、私左手離すから上やん君の左手肩に戻して」
「はいよ」
「えーっと…またレコンか…どうせ大した内容じゃないんだろうけど…なになに…」
[やっぱり、思ったとおりだった。気をつけて、s from Recon]
「・・・何これ?sって…さ…し…す…もぉなんなのよ…」
「ん?どうしたリーファ?」
「あー…えっとね…」
「みなさん!接近する反応があります!」
そう叫びながらキリトの胸ポケットから顔を出したユイの言葉に、一瞬で上条一行の表情が緊迫した表情に変わった
「モンスターか?ユイ」
「いえ、プレイヤーです…多いです…確認できるだけでも12人…」
「12!?」
「随分と多いわね…」
「どうする?逃げるか?受けて立つか?」
上条が3人に選択を求める。3人は何秒か思考を巡らせたが、その中で最初にリーファが口を開いた
「・・・ちょっと嫌な予感がするの…隠れてやり過ごそう?」
「隠れてって…一体どこに?」
「ま、そこは任せてよ。アスナさん、手伝ってもらえますか?」
「オッケー、リーファちゃん」
「リーファ、肩に乗ってる上やんの手もらうぞ。ほら上やん、こっちだ」
「え?お、おおっと!?」
キリトが上やんの左手を掴むと、洞窟の壁が凹んでいるスペースへと彼を引っ張っていった
「ほら、もっと詰めて詰めて!」
「お、おう…」
「それじゃアスナさん、いきますよ!」
「OK!」
「「Pik sér óvíss grœnn lopt!」」
リーファとアスナの二人が呪文を唱えると、隠蔽魔法が発動し、4人が入り込んだ凹みを偽装された新たな岩の壁が覆った
「ナイスだスグ、アスナ」
「パパ、もうすぐプレイヤーが視界に入ります」
「え?今どうなってんの?俺何も見えないんだけど…」
「隠蔽魔法使ったのよ。喋る時は最低限の声でね?あんまり大きい声出すと魔法が解けちゃって丸見えになっちゃうから」
「その前に俺の視界を丸見えにしてほしいんだが……ん?あれは…なんだ?」
「え?上やん君何も見えないんじゃないの?それに目が見える私たちでもまだプレイヤーは見えないけど…」
「いや、プレイヤーじゃなくて…お前らは視界が明るいから分かんないかもしんないけど、そこに小ちゃい赤い光が二つ浮かんでんだよ。なんつーか…『コウモリの目』みたいな感じで…」
「「「!?!?」」」
「何でそれを早く言ってくれないんだ上やん!!」
「え?あっ、おい!大声出したら隠蔽魔法が切れるんじゃ…!」
「もう隠蔽魔法なんて関係ないわよ!上やん君が見えてたのは高位魔法の『トレーシングサーチャー』よ!潰さないとっ…!」
「任せてっ!Ek skýt tuttugu smár striða!」
ビュビュビュビュビュッ!!!
「ギキィッ!!」
ズバァァァンッ!!
アスナが両手を前に突き出し魔法を唱えると、その手の先から無数の針が飛びだし、コウモリの姿をした追跡魔法の使い魔へと突き刺さり、オブジェクト破砕音とともに崩れ去った
「あっ!その魔法さっき俺が唱えたやつ!」
「言ってる場合か!逃げるぞ!みんな走れ!」
「えっ!?俺何も見えねーんだけど!?」
「あー!もうめんどくさい!左手借りるわよ!?」
ガシッ!!
「おおおおおおおおお!?!?」
ダダダダダダダダッ!!!
使い魔を撃墜し、すぐそこまで接近しているであろう12人のプレイヤーを振り切る為に4人は一斉に走り出した。しかしその内の1人、上条当麻は先ほど手を繋ぐのをあれほど避けていたリーファにガッシリと左手を握られ、走っているというより半ば引っ張られていた
「な、なぁっ!何で逃げるんだ!?また隠れ直すのはダメなのか!?」
「トレーサーを潰したところで敵にももうバレてる!とても誤魔化し切れないの!それに、さっきのトレーサーは火属性の使い魔なの!ってことは今接近してるパーティーは…!」
「えーっと…『サラダンマー』か!」
「『サラマンダー』よ!それじゃただ美味しいサラダ食べてるみたいでしょうが!」
「ほら!中立都市の『ルグルー』が見えてきたわ!」
「おっ!視界が明るくなってきた!」
「じゃあ早く自分で走って!」
「了解!」
上条達が走っていると、洞窟の先から光が差し込み始め、上条の了解の返事を聞いたリーファが上条の手を離した
「おー!綺麗な湖だなー!地底湖ってやつか!」
「呑気に感心してる場合か!」
そのまま自分の足で走って行くと、巨大な空洞にたどり着いた。その空洞には下に水が溜まった湖が出来ていた。そしてその湖の中心に、まるで要塞のような城壁に囲まれた中立都市のルグルーが見えた