とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第34話 VS雷神

 

「街から出るぞ、ここじゃ人目につきすぎる」

 

「いや?人目なんて別にどうとでも出来るからそんなに気にしなくていいぜ?ほら、そこんとこの広場なんてどうだ?」

 

 

ハンバーガーショップを後にした上条とトールは互いの戦いの為の場所を探していた。するとトールは街の中にあるそこそこ広い空き地を指定した

 

 

「なるほど、人払いか…懐かしいな…」

 

「まぁこうゆう時の為のモンだからな。これで周りの人目を気にせず存分に暴れられる」

 

「おいおい、確かに人の心配はしなくていいけどオブジェクトの破壊はどうすんだよ?」

 

「んなもんウチの魔神様がその内勝手に直すよ」

 

「そうかよ…で?形式はデュエルでいいのか?ここは中立域だから…って要らねえ世話か…ここは仮にもお前らの世界だもんな」

 

「ああ、俺はそもそもどの種族にも属してねーから中立域もクソもねぇし、上条ちゃんには幻想殺しがあるから何の問題もない。だけどな、余裕ぶっこいてたら死ぬぜ?」

 

「おいおい、SAOじゃないんだぞここは?俺が使ってんのはナーヴギアでもねーのにどうやって殺すんだよ?」

 

「まぁ見とけって」

 

 

そう言うとトールは、何もない空間に手をかざすと、その手の先に上条も見慣れないウインドウが現われた

 

 

「管理者権限、システムコマンド『ペイン・アブソーバ』をLv.0に」

 

ピピピピピピピッ……シュン…

 

 

トールがウインドウをいじくり、そう指示を出すと、ペイン・アブソーバと呼ばれるシステムの10を指していたゲージが一気に0まで減少した

 

「?」

 

「さ、上条ちゃん。騙されたと思って一回頬を思いっきりつねってみろよ」

 

「・・・こうか?」

 

グニッ!!

 

「痛っ!?こ、これ…これじゃまるで…本当に現実の自分の頬をつねったような…」

 

「そういうもんだ。普段はこのペイン・アブソーバはLv.10に設定されててな。そのレベルじゃ攻撃されても攻撃されたところにちょっと違和感感じる程度なんだが、今のLv.0の状態だと、現実の自分の痛覚からダイレクトに切られた痛み、殴られた痛みが生じる」

 

「なるほどな…そりゃ嫌でも全力で戦わざるを得ないな」

 

「そういうことだ。だが気をつけろよ?いくら上条ちゃんがメディキュボイドでログインしてるとはいえ、今のままで死ぬまで攻撃受けたら勿論現実じゃショック死するぜ?」

 

「そうかよ…だが、それはお前も同じなんじゃないのか?お前はやろうと思えば自分は例外に設定することも出来るだろ」

 

「いや、そんな白状な事はしねぇよ。俺は正々堂々としたケンカが好みなんでね。なにより、そんな命を懸けない戦いは経験値にならねぇよ」

 

「なら、手加減しねぇぞ…」

 

 

そう言うと上条は自分の背負った盾を左腕に構え、深く腰を落として臨戦態勢を取った

 

 

「手加減なんざ、した瞬間に首が飛ぶと思っといた方がいいぜ?上条ちゃん」

 

「・・・・・」

 

「・・・・・」

 

「「!!!!!」」

 

 

ドウッッッッ!!!!!

 

 

語る言葉がなくなった上条とトールの間に無言の空間が訪れたかと思えば、今度は一瞬で殺伐とした空気が辺りを包んだ。そして両者は思いっきり地面を蹴り、相手の懐に飛び込んでいった

 

 

「「おおおおおおおお!!!!!」」

 

ドッゴオオオオオォォォォォ!!!!!

 

「くっ!うおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

「づっ!ぬあぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

突進の勢いそのままに上条の右拳とトールの右拳が激突し、世界がまるごと激震し、およそ拳がぶつかっただけとは思えないほどの轟音が響いた

 

 

「クッソ…マジで痛ってぇな…」

 

「そりゃこっちのセリフだっつの…初撃でこの手応えか…こりゃ期待できそうだ…楽しませろよベイビー!」

 

ブオオォォッ!!!

 

「ッ!?なんだ!?」

 

 

拳がぶつかり合った衝撃と痛みにたまらず後ろに退く両者。しかし、トールはそんな状況をも楽しんでいるようにほくそ笑むと、自分の右手を真横に差し出し、その五本の指先から五つの青白い閃光が飛び出した

 

 

「ほらよおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっっ!!!」

 

ジジジッ!!!ガリガリガリッ!!!

 

 

トールがそのまま右手を掬い上げるように振るうと、指先の閃光と接した大地を高熱で溶かしながら上条へと迫っていった

 

 

(あれは…電気かっ!?指先から放電してその熱で溶接や溶断に使うようなバーナーを…!アレじゃ盾も意味ねぇ…!当たれば一瞬で真っ二つだ…!)

 

 

トールの指先の閃光と抉られていく地表を見てそう判断した上条は、五本の溶断ブレードから逃れるように横に飛び退き、その勢いのまま飛び前転で受け身を取って回避した

 

 

「よく避けたな上条ちゃん!ならこれでどうだ!?」

 

ブオオオオオオオッッッ!!!

 

 

今度は五本の溶断ブレードが周りの建造物を輪切りにしながら横薙ぎに振るわれる。その一本一本のブレードの全長はゆうに100メートルまで達していた

 

 

「くっ…!」

 

 

しかし、上条は冷静に状況を判断し横薙ぎに振るわれる溶断ブレードを腰を低く落とすことで回避した

 

 

「もらったぁっ!!」

 

ブオオオオォォォンッ!!!

 

「おおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

ブンッ!バキィィィィィンッ!!!

 

 

根こそぎ建造物を薙ぎ払った溶断ブレードを放つ右手が真っ直ぐに突き出され、今度は真っ直ぐに五本の閃光が射出される。しかし、これを上条は己が右手を振るい、全て打ち消してみせた

 

 

「ヒュー!流石だ幻想殺し。だが魔術を打ち消せるだけでいい気になってたら俺は倒せねぇよ」

 

ビュンッ!!!

 

 

直後、トールはその脚にありったけの力を込め地面を蹴ると一瞬で上条に肉迫し、彼のこめかみ目掛けてハイキックをしかけた。そしてその脚が上条の側頭部に直撃するかに思えたが…

 

 

ガァンッ!!!

 

「ッ!?なんっ!?」

 

「そっちこそ勘違いすんなよ。どんな魔術があろうが、所詮ここはゲームの中だ。俺の反応速度と敏捷は現実とは比べ物にならねぇし、盾を使った防御なら死んだら終わりのあの二年で嫌になるほど身についてんだよ!!」

 

ドゴオオオオオッッッ!!!

 

「あがっ!?はっ!?!?」

 

 

トールの蹴りはいつの間にか彼の顔の前に割り込んでいた盾によって阻まれた。そして、モーションの大きいキックを防がれた為、バランスを崩し隙だらけになった彼の腹部に上条の右手が突き刺さった。そしてトールのHPが減少しながら、その身体もゴロゴロと転がっていったが、受け身を取ることで体勢を立て直した

 

 

「逃すかっ!!」

 

ブンッ!!バシンッッ!!!

 

「ッ!?なにっ!?」

 

「こっちだって仮にも神の名を冠する『雷神トール』を名乗ってんだ。こんな簡単にやられてたまるかよ」

 

ズドンッッ!!!

 

「ごはっ!?」

 

「どおらあああああっ!!!!!」

 

バキイイイィィィッッッ!!!

 

「うおわああああああっっ!?」

 

 

追い打ちをしかけた上条の右拳をトールはがっちりと掴むと、その手を離さず、上条の腹部に膝蹴りを叩き込んだ。そして左手の拳で彼の顔面を殴り飛ばした。そして驚くことにその二撃のみで上条のHPは一気に危険域へと達していた

 

 

「ごほっ!ごほっ!クソッ…いくらなんでも重すぎだし効きすぎだろ…」

 

「悪りぃな、俺にこの『力帯』がある限り、俺は聖人レベルの怪力が発揮できるんだよ」

 

 

そう言ってトールは自分の腰に巻かれているベルトのようなものを指差した。それは北欧神話に語り継がれる『トール神』その人が扱っていたとされる通称『メギンギョルズ』である

 

 

「ははっ、聖人ね…今の喰らえば神裂のが可愛く思えるぜ…」

 

「感傷に浸ってるとこ悪ぃが、今度はそれだけじゃねえぜ」

 

「『投擲の槌』」

 

 

トールがその名を呟くと、彼の周りの空気が一変し、彼が纏うオーラも先ほどまでとは比べ物にならないほど強力なものに変わったのがピリピリと張り詰めた空気を通じて上条にも伝わってきた

 

 

「『ミョルニル』…魔術の知識はからっきしの俺でもその名前だけなら知ってる…北欧神話の雷神トールが使っていたっていう…」

 

「そうだ。まぁ俺の『投擲の槌』はちょっと特殊でな。現実にいる俺たちの仲間の一人から魔力の供給が受けられるって代物だ…まぁ何はともあれ、これが『雷神』の本気…」

 

 

ドドドドドドドドドドドオオオオオオオオオオォォォッッッ!!!!!

 

 

「これがお前に受け切れるかっ!?上条当麻ぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

トールの両手の指先から全長2キロはあろうかという溶断ブレードが噴き出した。そしてその計10本の閃光が斜めに振り下ろされ、空間を引き裂きながら巨大な十字を描き、上条へと襲い掛かった

 

 

ゴオオオオオオォォォォォォッ……

 

「・・・・・」

 

 

しかし、上条当麻は自身が焼き裂かれる危機が目の前に迫っても微動だにしなかった。なぜなら既にそれを見ただけ直感したからだ。このトールの一撃は一方通行の『黒い翼』と同様、あらゆる幻想を殺す右手でも殺し切れぬ一撃であると

 

 

「・・・そうかよ」

 

オオオオオォォォォォ……………

 

 

微動だにしなかった上条が最初に動かしたのは口だった。どこからともなく風が吹き荒れ、彼の周囲の空間が萎縮した。そんな囁くほどの声の中で、重く威圧するような力を持った「何か」が彼の内側から顔を出した

 

 

 

 

 

 

 

 

「だったら、俺もこっから先は『本気』でやらせてもらう」

 

 

 

 

 

 

 

 

バオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッ!!!!!

 

 

霧散した。雷神トールが『投擲の槌』から魔力のバックアップを受けた上で放った最強の10本の溶断ブレードが跡形もなく散った。上条の周りの萎縮した空気が一気に爆発し、幻想殺しなどでは到底打ち消しきれない巨大な熱の刃をいとも簡単に搔き消した

 

 

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