時刻は午前10時半。日曜のこの時間であるならば多くの者は休日を謳歌し、寝て過ごすなり、家族や友人と遊戯に浸るなど今日という日の過ごし方はそれぞれであろう。そんな中、上条、キリト、リーファ、アスナの4人はALOの中立都市ルグルーのとある酒場で飲み物も頼まず話し込んでいた
「えーっと、アスナもコッチにログインして大体の事情を聞いたことだし一旦話を整理すると…」
「俺が昨日スイルベーンの塔でぶっ飛ばしたあのシグルドってヤツをレコンが怪しく思って調べたところ、実はシグルドのヤツはサラマンダーと内通していて」
「うん」
「この後一時間足らずで『蝶の谷』を抜けたあたりの場所で始まるシルフとケットシーの同盟条約が調印される領主会議をサラマンダーの大部隊が襲おうとしていて」
「おう」
「もし仮にシルフ、ケットシー両種族の領主が討ち取られたら、もちろん同盟は破談、シルフ側から漏れた情報のせいで領主を討たれたらケットシー側も黙ってない。下手したらシルフとケットシーで戦争になるかもしれないと」
「うん」
「それに加え、領主を討ち取ったサラマンダーは領主下に蓄積されてる資金の3割を入手出来て、10日間街を占領して税金を自由にかけられる。そうなればサラマンダーは十分な資金操りでもって万全の状態で世界樹攻略に挑めると…そういうことだな?」
「うん。間違いないよ」
「おいおい…それ本当にゲームの規模の話かよ…」
(ま、そんだけの戦力集めたところで本当に世界樹が攻略できるのか…正直あのオティヌスの口振りからじゃ分からないな…)
「だからね、上やん君。これはシルフ側の問題なの。あたしはこれからシルフのみんなを助けに行かなくちゃ。だから上やん君はアスナさんとお兄ちゃんと一緒に世界樹まで行って。あたしも追いつければ追いつくけど…多分会談場に行ったら生きて帰れないわ。領地のスイルベーンまで死に戻りになるから…あまり期待はしないで」
「リーファ……」
「もっと言うなら、世界樹を攻略したいなら上やん君はサラマンダーに協力するべきだと思う。スプリガンの上やん君なら傭兵として雇ってもらえるかもしれないから」
「・・・よし、なら話は早いな。俺も領主会談場まで行くよ」
「「「えっ!?」」」
「え?なんかおかしなこと言ったか俺?」
上条の決断に驚いた3人に対して上条はキョトンとしながらそう聞いた
「ッ!!見損なったぞ上やん!確かに君には世界樹までどうしても行かないといけない事情があるかもしれない!だけど、だからと言って俺たちをここであっさり切り捨てる上にスグ達シルフを踏み台にして行くのか!?」
上条の態度に激怒したキリトが思わず上条の襟首に掴みかかり、自分の怒りをありったけ上条にぶつけた
「ちょっ!?やめてよキリト君!確かにキリト君の言いたい気持ちも分かるけど、上やん君の立場になって考えればその選択が現状一番早く世界樹の上に行ける選択なんだよ!?」
「でもっ!!!」
「おいおい早とちりするなよキリト。何も俺は領主会談場でサラマンダーに交渉して傭兵として雇ってもらいに行くわけじゃない」
「・・・え?」
そう言われて思わず襟首を掴む握力が緩まると、上条はキリトの手を下ろさせ、崩れた服を直しながら話を続けた
「むしろ逆だ。俺はサラマンダーからシルフとケットシーの領主会談を守りに行く」
「えっ!?で、でもそれじゃ…!」
「いやなに、もし仮にリーファと別行動するなり、サラマンダーに味方するなりしても、それじゃ結局どっちにしてもリーファを踏み台にしちまってるからな。それはちょっと上やんさん的にも面白くない」
「で、でも…!上やん君には助けなきゃいけない人たちがたくさん…!」
「それに、リーファが最初に約束してくれたんだぜ?」
「え?」
「俺を世界樹まで連れて行ってくれるって言ったじゃねぇか。俺、リーファを嘘つきにしたくないし、ちゃんと俺を約束通り世界樹まで連れて行ってくれよ」
「!!!!!」
「・・・全く…本当にいつも無自覚でそういうこと言っちゃうんだから上やん君は…」
「いつも?いつもって何のことだアスナ?」
「当の本人がこれなんだから…はぁ…ならこういうのはどう?上やん君とリーファちゃんはこの後すぐ会談場まで救援に行く。私とキリト君はその分の時間ロスを少しでも緩和する為に先にアルンまで行って、少し覗く程度に世界樹のグランドクエストに挑んでみて情報を集める。どう?」
「・・・分かった。でも本当に覗くだけにしてくれ、世界樹の中で何が待ってるか分からないからな」
「よし、考える時間も惜しい。それでいこう。そっちの事はよろしく頼むぞスグ、上やん」
「オッケー。そっちも気をつけてねお兄ちゃん」
「ああ、任せてくれ。それと上やん」
「お?」
「すまん…さっきはつい早とちりして…胸ぐらまで掴んで怒鳴り散らして悪かった」
「気にすんなって。そりゃリーファはキリトの妹だからな。こんなに可愛い妹なら大切に思うのも分かるし、逆にあそこまで妹の為に必死になれるんだ。俺もそういうヤツがパーティーに…仲間になってくれて良かったと思うよ」
「か、かわっ!?///」
上条の何気なく言った言葉に思わず顔が赤くなるリーファ。そんな彼女を見て少し笑うと、キリトはもう一度上条に向き直った
「はは、そうか….ありがとう。くれぐれもスグのこと、よろしく頼む」
「ああ、任せろ。ああ言った手前だ、何があっても俺がリーファを守る」
「頼りにしてるぜ、相棒」
「任せとけ、相棒」
ゴツンッ!
そう言ってキリトが右手の拳を上条に向けると、その拳に上条が自分の拳をぶつけた
「さて、じゃあ行くぞリーファ。ほれ」
「・・・?ほれって?」
「いやだから、俺の手を握れって」
右手を出して自分に握手を求める上条の意図が掴めず、リーファは首をかしげた
「いやそうじゃなくて、なんでいきなり握手?」
「だって洞窟の中じゃ飛べないだろ?だからほら」
「いや『ほら』って言われても…まぁいいけど…」
結局上条の求めた握手の意図が掴めずじまいだったが、リーファは渋々その手を握った
「よし。しっかり掴んどけよ?途中で振り落とされても知らねーぞ?」
「え?」
バビュンッ!!!!!
「「え?」」
<いやあああああぁぁぁぁぁ……!!
リーファの手をガッチリ握ると、上条はありったけの力で地面を蹴って走り出した。もはや音速にも近い早さで二人が目の前を通り過ぎた為、キリトとアスナは一体何が起こったのか理解できなかったが、段々遠くなっていくリーファの悲鳴を聞いてようやく自分達の目の前を通り過ぎたのがなんだったのか理解が追いついた
「・・・えーっと…いくら何でも上やん君早すぎない?」
「通り過ぎる時フォーミュラカーみたいな音したけど大丈夫か?ありゃ早過ぎて逆にゴキブリなんて呼ぶのは失礼だな…」
「・・・リーファちゃん、大丈夫かな?」
「・・・さぁ?」