ガラガラガラ…
「やっと来たか上zy……私の記憶が確かなら私達はお見舞いに来たはずなんだが、逆に貴様が他の誰かにお見舞いに来てもらった方がいいんじゃないかその傷は」
「もうほっといてくれ…」
あの後、インデックスにひたすら噛まれ続けボロボロにされた上条は彼女達のいた客室を後にし、吹寄の待つ御坂美琴の病室へと足を運んでいた
「・・・にしても貴様は中々可愛い女の子のお見舞いに通っていたようだな」
そう言って吹寄は目の前のベッドに眠る美琴の淡い茶色の髪の毛を優しく撫でていた
「・・・中身は可愛いどころか、とんでもないお転婆少女だけどな」
「そうか…しかし貴様がレベル5の1人と知り合いだったとは驚いたがな」
「まぁ俺はレベル0なんだけどな…その点、美琴はすげぇよ…血の滲むような努力を重ねて自分の力でレベル5までたどり着いたんだ。言ってみれば俺とは真逆の人間さ」
そんな風に自嘲しながら上条は病室の端にある椅子を取り、吹寄の隣に置いて腰掛けた
「・・・で、そんなんで誤魔化し切れてると思ってるの?」
「・・・え?」
「何かあったんでしょ?大方さっきの客室に来てた人が関係してるのかしら?」
「な、なんで分かったんだ?」
「目つきよ」
「・・・目つき?」
「ここ最近の…というかSAOから目覚めた後の貴様はずっと死人のような虚ろな目をしていたが、今は違う。なんだか目の奥に覚悟のようなものが見える。今までとは大違いだ。むしろそれで気づくかない方がどうかしてる」
「・・・そっか…まぁ吹寄には今まで世話になってる訳だし、ちゃんと話しておかないとな」
そう言うと上条は自分の荷物の入った手提げの中に手を突っ込み、ALOのソフトを取り出すと、それを吹寄に差し出した
「・・・これ、ゲーム?」
「ああ、そのゲームの中に美琴やみんな…SAOに囚われたみんなを助ける鍵があるかもしれないんだ」
「・・・・・」
「だから俺、もう一度仮想世界に行かないと…みんなが助かるって確証はない。ひょっとしたら無駄足かもしれない。でも、それでも俺は何か手段があるならそれを信じて頑張ってみたいと思う」
「・・・そっか」
「止めないのか?」
「逆に止めてほしいわけ?」
「え?いやだって吹寄は世話焼きだし今までずっと心配かけてただろうから…そりゃ少しは反対されるかなって思ってたんだが…」
「そうね…本音を言うなら反対。大反対。ふざけんなって言いたい。思いっきりビンタしてやりたいまであるわね。あんな危険な目に遭ったばかりなのにまた同じ世界に行くつもりなのかってね」
「・・・・・」
「でも、上条のその目を見てたら…とても反対なんか出来ないわよ。それに、助けてあげたいんでしょ?もし私が上条と同じ立場だったら、例え誰に反対されようと、自分の目の前にあるたった一つの手段を選ぶわ」
「・・・吹寄」
「ふっ…なんて面をしてるんだ貴様は。ほら、私のことを気にする暇があったら早いとこ行きなさい。みんなきっと待ちくたびれてるわよ。早く自分を起こしてくれー…ってね」
「・・・ありがとう」
「どういたしまして」
吹寄に礼を言うと上条はベッドで眠り続ける美琴の手を取った
「美琴、待っててくれ。今そっちに行く。待ちくたびれてるのは分かる。だけど、もう少しだけ待っててくれ…約束する…必ず助けに行くから…」
「・・・・・」
そう祈るように美琴の手を強く握って自分の決意を美琴に向けて語った上条は、彼女の手をそっとベッドに置き直すと自分の荷物を持ち直して椅子から立ち上がった
「じゃあ吹寄、後のことは頼む。俺は寝る間も惜しんでこのゲームにのめり込むと思う。大学はしばらく休み続きになる。多分連絡もそう取れなくなる。その間みんなから理由を聞かれても何とか誤魔化しといてくれ」
「分かった。でもくれぐれも身体には気をつけんのよ」
「大丈夫だって、このゲームはSAOと違って死んでも死にゃあしない」
「そうじゃなくって。寝る間も惜しむのは結構だけど、それでもちゃんと休みながら食事も取って体調には気をつけろって言ってんのよ。そのせいでゲーム出来なくなったら本末転倒よ」
「あ、あははは…善処するよ」
「全く…まぁいいわ。後のことは任せときなさい。貴様がいない間の講義のノート取っとくし、出席も誤魔化しておくから」
「後これ、持って行きなさい」
そう言うと吹寄は自分の手首に通してあるヘアゴムを一つ外し、上条に手渡した
「?なんだこれ?ヘアゴム?」
「貴様は確か水瓶座でしょ?今日の朝のニュースの星座占いで水瓶座のラッキーアイテムはヘアゴムだったのよ。きっといいことがあるから、お守りとして持っておきなさい」
「相変わらずそういうの信じてるな…しかもそのラッキーアイテムって男子にはほぼ達成出来ない前提じゃねぇか…」
「だから言ってんでしょ。1人で全部抱え込むんじゃないって。貴様だけじゃ出来ないこともあるんだから。そういう意味でも貰っときなさい」
「・・・ああ、ありがとう、助かる」
そう言うと上条は吹寄から貰ったヘアゴムを幻想殺しでせっかくの幸運を打ち消さぬように左手で貰い、輪を器用に左手だけで広げて左手首に通した
「それじゃ、行ってくる」
「ええ、行ってらっしゃい」
ガラガラガラ…
上条は病室のドアを開けると、振り返ることなく自分を待つ人のために、自分を待つ人の病室を後にした