とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第39話 願いの柱

 

「クソッ…!これでは何も見えん!時間稼ぎのつもりか!?」

 

 

立ち込める砂煙の中、ユージーンはなんとか速度を落とし、地割れにより崩れた大地に降り立ったが、あまりにも濃すぎる砂煙のせいで上条の姿を視認出来なかった

 

 

「いやぁ『索敵』ってのは便利だよなぁ…洞窟じゃ探す敵がいなかったからそうもいかなかったけど、こういう状況なら話は別だ。この砂煙の中でも俺にはお前がどこにいるかハッキリ見える」

 

 

そう言うと上条は左手の盾を背中に戻し、代わりに鞘に収めた頼りない片手剣をゆっくりと引き抜いた

 

 

「ッ!どこだ!?どこに行った!?その姿を見せろ!」

 

 

どんどん不鮮明になっていく視界の中、どこからか上条の声が聞こえ、ユージーンは周囲へと気を配り、臨戦体勢を崩さない。魔剣をその手で握りしめ、上条を切り伏せんとその姿を見せる機を待つ

 

 

「・・・頼むみんな…俺にもう一度だけ…大切な仲間を守れるだけの力を貸してくれ」

 

 

上条は剣の柄を両手で握り、目を閉じて思い出す。共に生死を分ける戦場を駆け抜け、鉄の城を…剣の世界を強く生き抜いた彼らを――

 

 

「――『天叢雲剣』」

 

 

神話に語り継がれし剣の名を告げる。上条の持つ片手剣にヒビが入り、まるで殻を破るかのように生まれ変わり、その姿形を変え全身から眩いばかりの黄金にも似た光を放つ

 

 

「・・・いくぞ、みんな」

 

 

その剣は「願い」。全ての魔術師の怯えと願いが集約した彼の右手に、同じくして世界の基準点となる彼の右手に宿ったSAOを生きた彼らの願いの結晶が剣という形になった

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉぉっっっっっ!!!!!」

 

「なっ!?!?」

 

バオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッ!!!!!!!!!

 

 

振るわれた剣の刀身から極太の光の柱が放出した。その光は一瞬の内にユージーンを襲い、彼の意識はそこで途絶え、光の柱は天高く伸びていった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「・・・え?」

 

 

リーファは理解が追いつかなかった。自分達の周りを砂煙が覆ったかと思えば、彼が逃げたのではないかと疑うケットシーに反論しようと声を荒げた瞬間に視界が晴れ、目の前には世界樹と見紛うほどに天へと伸びた光の柱が見えたのだから

 

 

「綺麗……」

 

 

やがて細くなっていく光の柱から降り注いできた光の粒はまるで星屑のようだった。思わずリーファは見惚れてしまい、気づけばそう呟いていた

 

 

「おい、アレを見ろ!」

 

 

光の柱が完全に消えると、サクヤが何かを見つけそこを指差して叫んだ。するとそこには、距離が遠すぎてイマイチハッキリとは見えないが、空中に赤いリメンライトが浮かんでおり、それを手に乗せた黒いプレイヤーが鞘に剣を戻しながら、こちらに向かって飛んできていた

 

 

「赤いリメンライト…と…スプリガンの少年…ということは…」

 

「ユージーン将軍が…負けテ…」

 

「上やん君が…勝った…」

 

「「「・・・・・」」」

 

 

3人は確認を取るようにそれぞれの顔を合わせると、少しの間を置いてリーファとアリシャが飛びっきりの笑顔を見せ、サクヤが扇子を広げ張りのある声で周囲の沈黙を破った

 

 

「見事!見事!」

 

「すっごーい!!ナイスファイトだヨ!」

 

ワアアアアアアアアアァァァ!!!

 

 

アリシャ・ルーがそれに続き、すぐにシルフとケットシーの12人が加わった。するとどうだろう、自分達の将軍を討たれた筈のサラマンダーの軍隊からも拍手の波が広がっていき、割れんばかりの歓声が上がった

 

 

「わぁ!すごい…本当にすごいよ上やん君!」

 

 

リーファは思わず感動し、涙を流しながらこれ以上ないくらいの笑顔を見せた。敵味方、種族関係なく彼らの戦いを素晴らしいと認めたこの歓声を、リーファは一生忘れられないだろう

 

 

「はっはっは、いやどーもどーも」

 

 

戦場から戻ってきた上条は自分のツンツン頭を右手で恥ずかしそうに掻きながら、リーファ達のところへ着地した

 

 

「すまん、誰か蘇生魔法頼めるか?」

 

「解った」

 

 

上条の願いをサクヤが聞き入れると、上条は左手に浮かんでいる赤いリメンライトを差し出し、サクヤが蘇生魔法の詠唱を始めた。やがて彼女の両手から青い光が迸り、赤い炎を包み、その中央からユージーンがのっそりと立ち上がると、体を慣らすように首の骨をコキコキと鳴らし、両肩を回した

 

 

「・・・ふぅ…見事な腕だな、俺が今まで見た中で最強のプレイヤーだ。貴様は」

 

「そりゃどーも」

 

「貴様のような男がスプリガンにいたとはな…。世界は広いということか。しかし、最後の『アレ』は一体なんだ?」

 

「ただの切り札だよ」

 

「・・・ふっ…全く面白いヤツに巡り合ったものだ…」

 

 

そう言うとユージーンは自身の右手を上条の前に差し出し、上条はその手の意図を理解すると自分の右手を差し出し、互いに熱い握手を交わした

 

 

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