とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第40話 He's mine!

 

「で、どうするんだ?要求を受け入れないなら俺たち68人のサラマンダーを全員ぶっ飛ばすんじゃないのか?」

 

 

肉体を取り戻し、上条と握手を交わしたユージーンはまるで冗談でも言うかのように上条にそう聞いた

 

 

「いやぁ、ここは日本人らしく大将の首を獲ったんだから大人しく退いてもらいたいところだが…やるってんなら全員相手になるよ」

 

「ふっ…だそうだ!サラマンダーの中で誰か彼に挑むヤツはいるか!?」

 

 

「無理無理!」「俺はちょっと…」「俺は見る専なんで…」

 

 

「ふっ、我が軍隊ながら腰抜けばかりだな…まぁ、アレを見た後ならば当然か…」

 

「ははは、まぁそりゃそうさ」

 

「ところで、『今は事を荒げたくない』と言っていたな?ケットシーでもシルフでもないスプリガンの貴様がなぜそんなことを?」

 

「ああ、俺は絶対に最初に世界樹のてっぺんに登らなくちゃいけないんだ」

 

「・・・ほぉ?だからここで俺たちサラマンダーが万全の準備を整えて世界樹攻略で先を行かれるのが困る…というわけか」

 

「んー…まぁここまで来るのに紆余曲折はあったんだけど、大体はそういうことで合ってるよ」

 

「ふっ…貴様なら世界樹攻略もやってのけそうだがな…だがいずれ貴様とはもう一度戦うぞ」

 

「ああ、もちろんだ」

 

 

するとユージーンを含めたサラマンダーの軍隊は身を翻し、翅を広げ飛び立っていった。無数の赤い妖精たちは見えないほどに小さくなっていき、やがて完全に見えなくなった

 

 

「いやぁ、サラマンダーの中にも話の分かるヤツがいるじゃないか」

 

「いやもう…本当上やん君ムチャクチャすぎ…」

 

「いやぁ、それほどでも」

 

「褒めてないわ!」

 

「ンンッ!」

 

「あ、サクヤ…」

 

「すまんが…状況を説明してもらえると助かる」

 

 

リーファと上条が自分たちの勝利に一喜一憂しているところに、サクヤが咳払いをして話しかけて来た。そしてリーファと上条は自分達がここに来た経緯を大雑把に話した

 

 

「・・・なるほどな…確かにシグルドの態度に苛立ちめいたものがあったのは私も感じていた」

 

「苛立ち?何に対して?」

 

「シグルドはパワー思考の男だからな。キャラクターの数値的能力だけでなく、プレイヤーとしての権力も深く求めていた…故に彼には勢力的にサラマンダーの後陣を拝しているこの状況が許せなかったのだろうな…」

 

「だからサラマンダーと内通してスパイ活動じみたことをしてたってことか…いやぁ、このALOは人間の欲を試す陰険なゲームだなぁ全く…」

 

「ふふふっ、全くだ」

 

 

上条の言葉にサクヤも少し笑って賛同した

 

 

「それで…どうするの?サクヤ」

 

「どうするとは…シグルドの処分がか?」

 

「うん。やっぱり懲罰金とか?」

 

「いや、別に金は要らないさ。そうだな…まぁヤツはスイルベーンから追放してレネゲイドとなって中立域を彷徨ってもらうことにするか。いずれそこで新たな楽しみが見つかることを祈るとしよう」

 

「えっ!?つ、追放!?いいの!?仮にもシグルドには執政部の一員だし軍務を任せてるんだよ?」

 

「なに、適任者なら他にもいるさ。それぐらいの肝っ玉が据わっていなければ領主なぞ務まらんさ。それに、私の判断が間違っているか、正しかったのかは次の領主投票でシルフの民が決めることだ」

 

「領主ってのも中々大変そうだな…」

 

「ともかく礼を言うよリーファ。執政部への参加を頑なに拒み続けた君が救援に来てくれたのはとても嬉しい」

 

「え?リーファもシルフのお偉いさんに推されてたのか?」

 

「ま、まぁね…でも私には人をまとめる自信なんてなかったし、自由に飛び回れる一般プレイヤーの方が性に合ってるから」

 

「それにアリシャ、シルフの内紛のせいでケットシーの皆まで危険に晒してしまってすまなかったな」

 

「いやいや!生きてれば結果オーライだヨ!」

 

 

そうアリシャ・ルーは呑気な声に続けてリーファに向けてウインクしたが、それに対してリーファはぶんぶんと首を振った

 

 

「ううん。あたしは何もしてないよ。お礼ならこの上やん君にどうぞ」

 

「そうだ、そういえば君は一体…」

 

「そうそうキミ、随分強いネ?知ってる?さっき君が倒したユージーン将軍ってALOの中じゃ最強のプレイヤーって言われてるんだヨ」

 

「へぇ…まぁそうだろうな。確かにあの武器は厄介だったけど、アイツはあの武器の性能に頼りきりな訳じゃなく純粋な剣術も相当だったからな」

 

「それに拳だけで地割れを起こしてこの辺り一帯の範囲を覆う砂煙を起こす筋力も異常だけど、最後の光の柱。アレもどうせ君がやったんでショ?」

 

「さぁ、どうだろうな」

 

「私これでも噂には敏感な方なんだけど君みたいなプレイヤー見たこともないし聞いたこともなかったヨ。スプリガンの秘密兵器…だったりするのかな?」

 

「まさか。ただのどこにでもいる平凡な大学生だよ」

 

「ぷっ。にゃははははは!!」

 

 

掴みどころのない上条の態度にひとしきり笑うと、アリシャはすいっと上条の方に寄り、彼の右腕を取って胸に抱いた

 

 

「お、おおおおおおおおおっ!?///」

 

「フリーならキミ、ケットシー領で傭兵やらない?三食オヤツに昼寝つき…今ならオマケで好きなケットシーの女の子を添い寝させてあげるヨ?」

 

「なっ!?」

 

「おおっとルー、抜け駆けはよくないな」

 

 

そう言うとサクヤも上条に近づき、着流しの袖を上条の左腕に回し、その豊満な胸を押し当てた

 

 

「なああああああああああっ!?///」

 

「上やん君…と言ったかな。どうかな、個人的な興味もある折、こちらの領民も世話になっているようだし…今回の件の礼も兼ねてこの後スイルベーンの酒場で酒でも……」

 

「あーっ!ずるいよサクヤちゃん!色仕掛けはんたーい」

 

「人のこと言えた義理か!密着しすぎだお前は!」

 

「あばばばばばばばばばば……」

 

 

自分に言い寄ってくる2人の領主の肌の感触と大人の色香に上条はすっかり当てられてしまい、なんの対処もすることが出来なかった。しかし、そんな二人を見たリーファはズカズカと近づいていくと上条の裾を掴んで言った

 

 

「だ、ダメです!上やん君はあたしの……うぇ!?///」

 

「・・・リーファ?」

 

「・・・あ、あたしの///…えーっと…///」

 

 

飛び出して二人の間に割って入ったはいいが、適切な言葉が見つからずどんどんと顔が紅潮していき、最終的に言葉に詰まってしまった

 

 

「ねぇねぇサクヤちゃん、これは…」

 

「・・・ああ、どうやらそういうことらしいな」

 

スッ……

 

「お?」

 

 

サクヤとアリシャはリーファの様子を見ると何かを察したように抱きついていた上条の腕から離れた

 

 

「全くリーファ、そういうことなら早く言ってくれよ。じゃなければこんな無粋な真似はしないというのに…」

 

「え?」

 

「応援してるヨ〜♪」

 

「ち、違う違う!///そういうことじゃなくて!!」

 

「隠さずとも同じ女なら分かるさ。影ながら応援させてもらうよ♪」

 

「いやあああああああああ!!!」

 

「?」

 

 

そんなこんなで二人の領主による上条への誘惑は終わり、妖精の世界は日が沈み始め、蝶の谷周辺が燃えるような夕焼けに包まれた

 

 

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