とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第41話 架け橋

 

「それでリーファ、君は彼と一緒にアルンへ行くのか?物見遊山か?それとも…」

 

「領地を抜ける…つもりだったけどね。でも、いつになるか分からないけどきっとスイルベーンに帰るわ」

 

「そうか、ほっとしたよ。必ず戻ってきてくれよ。彼と一緒にな」

 

「途中でウチにも寄ってね〜ん。大歓迎するヨ♪」

 

「うん!もちろん!」

 

 

その後、本来行われるはずだったシルフとケットシーの領主会談が執り行なわれ、両種族同意の下、同盟条約の調印が終わると皆が帰投の準備を終え、別れの時間となった

 

 

「重ね重ねになるが今日は本当にありがとう。君たちの救援がなければサラマンダーとの格差は決定的なものになっていただろう。何か礼をしたいんだが…」

 

「あーいや、別に見返りを求めてやったことじゃないから上やんさん的にはそんなに気を遣わないでほしいんですのことよ?」

 

「ねぇサクヤ、アリシャさん。今度の同盟って、世界樹攻略の為のなんでしょ?」

 

 

礼をしたいというサクヤの申し出を渋る上条だったが、そんな彼の隣にいたリーファが一歩前に踏み出して両種族の領主に問いかけた

 

 

「ああ…まぁ究極的にはな」

 

「その攻略に…あたしたちも同行させてほしいの。それも、可能な限り早く」

 

 

リーファの願いを聞いたサクヤとアリシャは一度互いの顔を見合わせると、まるで当然だと言わんばかりの顔で答えた

 

 

「同行は構わない…というより、むしろこちらから頼みたいぐらいだよ。しかし、なにをそんなに急いでいる?」

 

「・・・俺がこの世界に来たのは、世界樹の上に行かなくちゃならないからなんだ…そこにいる…俺が焦がれ続けた人達に会うために…」

 

「・・・?妖精王オベイロンとその空中都市の妖精達のことか?」

 

「いや、違う。リアルで色々と事情があってな…俺の冒険はそこにたどり着かないと終わらないし、俺のこれからはなにも始まらないんだ」

 

 

理由と訳を問うたサクヤに、上条は首を横に振って真っ直ぐな眼でそう答えた

 

 

「でも…攻略メンバー全員の装備を整えるのにしばらくかかると思うんだヨ〜。とても一日や二日じゃ…」

 

「いや、気にしないでくれ。協力してくれるって言ってくれるだけで、心の支えになる。それに、あんまり多くの人を巻き込むつもりはないからな。後はなんとかするよ」

 

「そうか…すまないな…」

 

「あ、そだ。もし金に困ってんならコイツを資金の足しにしてくれ」

 

ピコンッ…ガシャッ…

 

「えー、わざわざ悪いヨ〜。助けてもらった上に援助だなんて」

 

「いやなに、もし手伝ってくれるってんならそりゃこっちもお礼しなきゃいけないからな。そうだな…契約の前金だとでも思ってもらってくれ」

 

 

そう言うと上条は自分のウインドウを開いて大きな袋に詰められた所持金をオブジェクト化し、アリシャに手渡した瞬間…

 

 

ズンッ!!

 

「うわぁ!?ちょっ!?」

 

「あ、大丈夫か?」

 

「う、うぐ…大丈…ゔぇ!?ちょ、ちょサクヤちゃん!これ…見てこれ!」

 

「ん?」

 

 

アリシャは上条から手渡された袋を両手で抱え込むと、その袋の中をチラッと覗き込むなり信じられないものを見たような表情に変わり、そんな彼女に呼ばれサクヤも袋の中を覗き込んだ

 

 

「なっ!?10万ユルドミスリル貨がこんなに!?こ、これ総額いくらだ!?」

 

「まぁざっと2000万ユルドぐらいかな」

 

「「2000万ユルド!?」」

 

「い、いいのか?一等地にちょっとした城が建つぞ?」

 

「構わねぇよ。俺にはもう必要ないモンだからな、遠慮なく使ってくれ」

 

「これだけあればかなり目標金額に近づけると思うヨ〜!」

 

「大至急装備を揃えて、準備が整ったら君のお供のリーファにメールで連絡するよ」

 

「ああ、よろしく頼む」

 

「うん!それじゃありがとう!また会おうネ〜!」

 

 

そう言い残してシルフとケットシーの皆は翅を広げ飛び立っていい、夕陽の向こう側へと消えていった

 

 

「さて、俺たちも行くかリーファ」

 

「そうね…てゆうか上やん君!」

 

 

リーファ強い語気と共にズカズカと上条へと近づいていき、上条への眼前へと迫り彼の目を睨みつけた

 

 

「な、なんでせう…?」

 

「上やん君、サクヤとアリシャさんに抱きつかれた時ドキドキしてたでしょ」

 

「そ、そりゃ男なら仕方ないと思いますのことよ!?」

 

「でも上やん君、あの二人が自分から離れていった時ちょっと残念そうにしてた」

 

「し、してねーよ!!」

 

「そこでムキになるところがなおさら怪しい」

 

「うぐっ……」

 

「ふんっ!上やん君なんてもう知らない!今回も後先考えずに無茶ばっかりして!」

 

「す、すみませんでした…」

 

「・・・でも、ありがとう」

 

「え?」

 

「きっと上やん君がいてくれなきゃ、今回の件はどうにもならなかったと思う。だから今度はあたしの番。絶対に助けようね!みんなのこと!」

 

「・・・ああ、ありがとう。リーファ」

 

 

飛びっきりの笑顔でリーファは上条にそう言い、上条は礼を返した。しかしリーファは少し間を置いた後、夕陽に映えるような物憂げな表情を浮かべた

 

 

「ねぇ、上やん君…」

 

「ん?なんだ?」

 

「名前…聞いてもいい?」

 

「・・・名前?ああ、俺の本当の名前ってことか…でもなんで急に?」

 

「もしも…世界樹のてっぺんに行ってみんなを助けたら…上やん君はもうこの世界に戻って来ないんでしょ?」

 

「え?な、なんでそう思うんだよ?」

 

「あたし、思うんだ。あたしと上やん君が繋がっている世界はこの世界だけで…あたしたちの住んでる現実の世界はきっと違う世界なんだろうって…」

 

「リーファ…」

 

「でも、上やん君の名前を知っていればいつかきっと現実でも繋がれると思うんだ。現実の私たちに翅はないかもしれない…でも、繋がりたいっていう想いがどこまでも飛んでいって、いつかまたきっと会えると思うの」

 

「だから、名前はあたし達の世界の架け橋…かな。だってあたし達はリアルの顔も知らないんだから名前が分からないと、出会っても分からないでしょ?」

 

「そうか…分かった。俺もリーファ達とはいつかまた現実で会いたいからな。俺の本当の名前は『上条当麻』だ」

 

「上条…当麻…うん、ありがとう。じゃああたしの名前も教えておくね。あたしの名前は『桐ヶ谷直葉』。まぁ周りが知人しかいない時はお兄ちゃんが『スグ』って呼んでるから分かりやすいかな?」

 

「そっか、桐ヶ谷直葉か…でも、てことはキリトも桐ヶ谷なんだろ?じゃあキリトのなm…いや、やめとくか。こういうのは本人に直接聞いた方が意味があるからな」

 

「ふふっ、うん、そだね。お兄ちゃんもきっと上やん君から直接名前聞かれたいと思う」

 

「あ、でも大事なことだから一つ付け加えてておくぜリーファ」

 

「え?」

 

「俺が思うに…現実世界と仮想世界はきっと俺たちにとっては変わらない場所なんだと思う。そこに人がいれば、そこにいる誰かと話して…同じ感情を共有できる…つまり、仮想世界だって言い換えるなら現実そのものなんだよ」

 

「だから、リアルでも繋がりたいと思うのはもちろんだけど、俺とリーファは『仮想世界って現実』でちゃんと繋がってるんだぜ?」

 

「・・・ぷっ…あはははははは!!」

 

「え?今の笑うとこ?」

 

「あはははは!!…ううん、違うのな、なんでもない…あははっ!」

 

「ひ、ひでーな…人が折角いいこと語ってやったっていうのに…」

 

「うん、ありがとう。私、これでも今すっごい嬉しいんだ!」

 

「え?それってどういう…」

 

「それっ!」

 

フワッ!

 

「ちょっ!?いきなりかよ!?」

 

フワッ!

 

 

上条が話し出すよりも先にリーファは翅を出して空に浮かび上がった。それを見ると上条も慌てて翅を広げて空に浮かび上がった

 

 

「さ!行こう上やん君!アルンまでひとっ飛び!まさか夕方までかかると思わなかったからね!お兄ちゃんとアスナさんもきっと待ちくたびれてるよ!」

 

「ったく…ああ!行こうぜ!」

 

ビュオオオオオオオオオオ…

 

(お兄ちゃん…上やん君は…一緒だよ。仮想世界がもう一つの場所だって認めてる…私が誰よりもカッコいいと感じたお兄ちゃんと!)

 

 

夕暮れ妖精の世界を飛びながら、リーファは兄の姿と上条の姿を心の中で重ねながら翅を目一杯に打ち鳴らした

 

 

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