とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第44話 限界

 

「ッ!ダメ!止まってキリト君!」

 

ズザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザザ!!!!!

 

 

ガーディアンを退けて出来た道を全速力で駆け抜けたキリト達の前にまたしてもステンドグラスから出現したガーディアンが先へ進ませまいと道を塞いだ

 

 

「また出てきたか…!アスナ下がってくれ!俺がピンチになったら回復頼む!」

 

「任せて!」

 

「うおおおおおおおおおおお!!!」

 

ズバンッ!ズバンッ!

 

シュンッ!シュンッ!

 

「クソッ!次から次へと…これじゃ数が多すぎてキリがない!!覗くだけ程度でこれか!これじゃ後戻りしようにも…!」

 

「!!!!!」ギュンッ!

 

「!!!!!」ギュンッ!

 

「なっ!?両側から!?しまっt…!」

 

ガキィン!ザクッ!

 

 

キリトは両側から迫ったガーディアンの右の剣を己の大剣で受け止め、左の剣を自分の腕で受け止めた。当然のごとく左の腕に刺さった剣は無慈悲にキリトのHPバーを減らした。しかしそれ以上に……

 

 

「ッ!!あぎっ…!?」

 

(やっぱりそうか…ここで受けるダメージは…現実の痛覚を通じてダイレクトに伝わって…!)

 

 

キリトは自分の左手に走った鋭い痛みに思わず顔を歪めた。まるで「本当に左腕を切りつけられたかのような痛み」が彼を襲ったのだ

 

 

「クソッ!!でやああああああああああああああああああああああ!!!」

 

ズバァンッ!!ズバァンッ!!

 

「はぁ…はぁ…はぁ…次ぃぃぃ!!」

 

 

そしてまた痛みを紛らわすように咆哮すると、大剣を両手で持ちそのまま水平になぎ払った。ガーディアンの体が二つに別れ、エンドフレイムとなって燃え上がり白い煙がキリトを包み込んだ

 

 

「!!!!!」ブンッ!

 

ズバンッ!

 

「うあああああああああっ!?!?」

 

(!?キリト君なんであれだけの攻撃でそんなに怯んで…まだHPも半分減ったぐらいなのに…ううん!悩んでても仕方ない!私は私のやるべきことを!)

 

 

「þú fylla heilaqr austr brott sudr bani!」

 

キュイイイイイイィィィ…

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

ギィンッ!ズバッ!!ドスッ!!ザンッ!ブスッ!ズバァンッ!!

 

 

自身のHPが全回復してることにも気づかないままひたすら白銀の騎士を切り伏せていくキリト。白いバラのように咲く断末魔の炎を掻い潜っていき顔を上げると、天蓋に視線を向けた。すると意外なほど近くに天空都市へのゲートが迫っていた

 

 

(後戻りする道もガーディアンだらけ…距離的には頂点にほど近い…だったらいっそのこと…覗くだけなんて言わずに上やんの言うあの先を目指す!)

 

ギュンッ!!

 

ドスッ!!

 

「ヅッ!!!」

 

 

天蓋へ向かって上昇しようとしたその時、冷たく輝く光の矢がキリトの足を貫き細く鋭敏な痛みが足から全身に伝わり彼の動きが止まった。そしてその瞬間を狙い定めたかのように、ガーディアンの放つ矢が雨のように降り注いだ

 

 

ピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュピュ!!!

 

 

「!!ヤバい…!」

 

「Þú sér lind ásynja,burt eimi og sverð!」

 

コオオオオオオォォォ…!!

 

キンキンキンキンキンキンッ!!

 

「ッ!?アスナ!!」

 

 

降り注ぐ無数の矢を見たアスナが防御魔法を詠唱した。魔法で呼び出された無数の蝶がキリトの身を包み込み、光のシールドが矢を弾き返すが一矢一矢を弾く度に蝶の壁が削られ、アスナのMPがみるみる減らされていく

 

 

「ッ!?ダメッ!防ぎきれない!!」

 

バキィィィィィィン!!ピュピュピュピュピュピュピュピュ!!!

 

「〜〜〜ッ!!うおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

キィンッキィンッキィンッキィンッ!

 

 

アスナが展開した光のシールドが音を立てて崩れ去り、降り注ぐ矢を大剣ではたき落としていくキリト。しかし、ゆうに100本を超える矢はキリトの速さの限界を上回り、彼の身を貫いた

 

 

ドスッ!ブスッ!ドスッ!ザクッ!ザシュッ!グサッ!!

 

「あ!あがっ!!あうっ!あ゛!あああああああああああああああ!!!」

 

ヒュウウウウウウウウゥゥゥ…

 

 

矢が身を貫く度にHPが減少していきその度に身体に痛みが伴う。鍼治療なんて生易しいものではなく、その痛みが走る度にキリトは悲鳴をあげ、飛行姿勢を維持出来なくなりその身体がゆっくりと落ちていった

 

 

「ッ!?キリト君!?」

 

ガシッ!!!

 

「・・・ぅぁ…ダメ、だ…アスナ…」

 

「大丈夫!分かってる!ここは一旦逃げy…ッ!?…嘘でしょ…」

 

ズザザザザザザザザザザザザザッ!!

 

 

落下してきたキリトをアスナが空中で受け止め、彼に肩を貸して天蓋から背を向け撤退しようとするが、すでに彼女らの四方八方はガーディアンが埋め尽くしており、まるで監獄に閉じ込められたように逃げ場がなくなっていた

 

 

「こんな…こんなのって…!でももうやるしかない…!」

 

シャキィン!

 

「キリト君待ってて!私が今道を開けるから!」

 

「!?!?だ、ダメだ!行くなアスナ!」

 

「はあああああああああっっ!!!」

 

ズバッ!シャキィン!キィンッ!

 

「!!!!!」

 

ピュピュピュッ!ドスドスドスッ!

 

「痛っ!?え…?きゃっ!ぅあっ!」

 

 

アスナはその正確無比な細剣さばきでガーディアンを撃破していった。しかしガーディアンは彼女の全方位を取り囲んでおり、彼女にはどうしても死角が出来る。そして左から1本の矢が襲いかかりアスナの腕に刺さり、その矢は彼女の痛覚に本物の痛みを伝えた。その感覚に彼女が困惑していると、立て続けに2本の矢が背後から彼女の体を貫いた

 

 

「ゴガアアアアア!!!」

 

グサアアアァァァッ!!!

 

 

そして白銀の騎士はその神々しい外見にそぐわない叫びを放った。直後、白銀の刃がアスナの身体を背中からブスリと貫いた

 

 

「いっ!?!?ぅああああああああああああああああああああああ!!!」

 

「アスナ!アスナぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

ガシッ!!!!

 

「クッソオオオオオオオオオオォォォォォォーーーーー!!!」

 

ゴオオオオオォォォ!!!!!

 

 

身体を貫かれた激痛にアスナが絶叫する。そんな彼女の元にキリトが慌てて駆け寄り、剣が刺さったままの彼女の華奢な身体を抱き締めた。そして一目散に出口に向かってその翅を全力で打ち鳴らし急降下していく

 

 

「そこを…どけええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

ガンッ!ガンッ!ドガガガガガッ!!

 

 

出口までの道すらも塞ぐガーディアンをキリトはあえて倒さず、ひたすら押しのけていき、出口までの最短の道を強引に開かせた。しかし……

 

 

「!!!!!」

 

ヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンヒュンッ!!

 

ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!ドッ!

 

「ッ!ヅッ!〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」

 

 

ガーディアンの集団が決して二人を逃すまいと無数の光の矢を放ち、キリトの背中に矢が刺さっていき筆舌し難い苦痛がキリトを襲う。唇を噛み締めその痛みに耐える。耐える。耐える。

 

 

 

「うあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁ!!」

 

 

 

吼えながら出口から差し込む光に向かって飛ぶ。その間にも自分の身体に矢が刺さっていき、HPはとっくに危険域に到達しているがそんなのは気に留めなかった。自分の腕の中のアスナをこれ以上傷つけさせまいとキツく抱きしめながら自分の身体を盾にする。一心不乱に出口を目指し…そして……

 

 

バンッ!ゴロゴロゴロ!!バタッ……

 

「ああっ!はっ!うああっ!はあっ!はあっ!はあっ!」

 

 

世界樹のドームから飛び出した。しかし飛翔の勢いを殺しきれず地面を何度も転がり、そしてやっとのことで二人の身体は仰向けに止まった。キリトのHPはもう残ってるのかすらあやふやだったがなんとか逃げ延びた。生きているという事実を確認する為に息を何度も吸って吐いてを繰り返す

 

 

「はぁ…はぁ…はぁ…アスナ…」

 

「キリト…君…」

 

ダキッ…

 

「怖い…痛い…痛かった…痛かったよ…私死ぬんじゃないかって…怖くなって…それで、それで…」

 

「もういい…何も言わなくていい…アスナは生きてる…こうして俺の腕の中にいる…それでいいんだ…」

 

「ひっく…キリト君…キリト君…うわああああああああああああああああああああぁぁぁぁん!!!!!」

 

「アスナ…大丈夫…大丈夫…」

 

 

アスナの瞳から涙が溢れ、キリトの胸に縋りついて泣き叫んだ。続いてキリトの瞳からも光る雫が溢れ、アスナの温もりを感じながら静かに涙を流した。二人の涙はやがて妖精の世界の中心に、いくつもの染みを作った

 

 

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