とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第45話 戦う理由

 

「そ、そんな……」

 

(トールと戦った時に使ってたペインアブソーバーってヤツか…オティヌスのヤツ…なんだってそんなマネを…!)

 

「クソッ!!」

 

 

二人の話を聞いたリーファは思わず口を塞いでその目に涙を浮かべ、上条は苦虫を噛み潰したような顔で、こみ上げた悔しさに身を任せ、振り絞るような声と共に地団駄を踏んだ

 

 

「痛みもたしかに問題っちゃ問題だが…それ以上に厄介なのはあのガーディアンの数だ…ユイ…どうだ?」

 

ピュンッ!

 

「そうですね…あのガーディアン・モンスターは、ステータス的にはさほどの強さではありませんが、出現数が異常です…あれでは攻略不可能な難易度に設定されているとしか…」

 

「だろうな…」

 

「それに加え、いつもはLv.10に設定されているペインアブソーバーがあのドームの中だけはLv.4にまで減少しています…現実の身体には影響はありませんが…痛覚そのものは現実から僅かに劣っている程度でダメージを受けた時の痛みは普段のものと比べると想像を絶します…」

 

「そんな…そんなのもうゲームじゃ…」

 

「ねぇユイちゃん、あの痛みの仕様はグランドクエストが出た当初からあのシステムだったの?」

 

「いえ…それがどうやら…急にシステムが変更されたようです…パパとママがグランドクエストに挑んだ瞬間にペインアブソーバーのLvが切り替えられたようで…ですがおそらく、これからあのドーム内のペインアブソーバーが戻ることはないと思われます…」

 

「・・・分かった、ありがとう。二人ともごめんな。俺のためだけに辛い思いをさせちまった…みんなには感謝してもしきれない。今までありがとう。後は俺一人で全部終わらせる」

 

「「「えっ!?」」」

 

「ま、待ってよ上やん君!無理だよ!ユイちゃんも言ってたけどあのグランドクエストは攻略不可能な難易度に設定されてるとしか思えないの!それに一人でなんてとても…!」

 

「だったら、その攻略不可能な設定を超えればいいだけだ。それに、穴が開くことには開けられるんだ。だったらそこに全力をぶつける」

 

「た、確かに異常なのは上やんさんのステータスとスキル熟練度も同じですから…瞬間的な突破力だけならあるいは…可能性があるかもしれません…」

 

「ほら、ユイちゃんもこう言ってる」

 

「で、でも!上やん…君は耐えられるのか…?身体を裂く剣に、身体を刺す弓矢…それを君は…!」

 

「屁でもねぇよ」

 

「「「!!!!!」」」

 

 

キリトの疑問に上条は自分の目の前の階段の先でそびて立つ世界樹を真っ直ぐな眼で見据え、そう言った

 

 

「そんな痛みなんか気にならねぇ…よっぽど痛かった…よっぽど辛かったんだ。俺だけが帰ってきた…みんなが取り残されたんじゃない、俺だけが取り残されたんだ…どれだけ願ったか…この心を締め付ける痛みがなくなればいいと何度も思った…あの現実の心の痛みに比べれば…そんなの何ともない」

 

スタッ…スタッ…

 

 

上条は一段、また一段と目の前に広がる階段を踏みしめながら登り始めた

 

 

「たとえ無限の敵が立ちはだかろうと…」

 

 

一段。

 

 

「たとえ痛みでこの身体が灼かれようと…」

 

 

一段。

 

 

「たとえこの右手がなくなっても…」

 

 

一段。

 

 

「最後にあの世界のみんなと一緒に笑って現実に帰れるなら…俺はそれでいい」

 

 

そしてまた一段と、上っていく。

 

 

「それが俺の戦う理由になる」

 

 

右の拳を握りしめて、始まりの時から何一つ変わらない『幻想殺しの少年』は、世界を、人々を、取り戻す

 

 

「そこに助けたい誰かがいるなら俺は…何度だって戦い続けられる」

 

「上やん…」

 

「上やん君…」

 

「上やんさん…」

 

「上やん君…」

 

 

いずれ天へと続く階段を上る少年は決して振り向かなかった。彼の背中はどこか哀愁に満ちていて、それでいてなお、何よりも堂々としていた。そんな少年の後ろ姿はいつしかキリト達からは見えなくなった

 

 

「待ってろよみんな…今そっちに行くからな…」

 

『未だ天の高みを知らぬ者よ、王の城へ到らんと欲するか』

 

 

[グランドクエスト『世界樹の守護者』に挑戦しますか?]

 

 

[OK] ピコンッ!

 

 

『さればそなたが背の双翼の、天翔に足ることを示すがよい』

 

ズゴゴゴゴゴゴ…ズズンッ!

 

 

世界樹のドームへの扉を塞ぐ彫像の剣がゆっくりと扉から退いた。そして常闇が口を開けるようにそのゲートが開いた

 

 

「行くぞ…オティヌス…」

 

 

背中の盾を左腕に備え、幻想殺しを右の拳に携え、上条当麻は宵闇の中へと進んでいった

 

 

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