「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
バゴオオオォォォン!!!
上条がグランドクエストに挑んでから既に15分ほどが経過していた。天井に咲く花の中央で待つ四枚の岩壁を目指して一心不乱にその特異な右手を振るい続け、上条はドーム内のおよそ中間地点にまで迫っていた
「ゴガアアアアア!!!」
ガキィン!!
「うぉらああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
バキイイイィィィィィィッッッ!!!
攻撃を盾で防ぎ、右手で一撃を叩き込み、ガーディアンが爆散する。これをひたすらに繰り返した。既に何十体ものガーディアンを沈めたが、彼のHPは未だに安全圏内を保っていた
「はぁ…はぁ…くそっ、本当にキリがないってのはこのことだな…」
「ゴガアアアアア!!!」
ブンッ!ドガアアァァン!!
「だけど俺は…諦める訳にはいかねぇんだよ!!」
ガーディアンが振り下ろした剣を避け、カウンターを叩き込んだ。白銀の鎧がガチガチと悲鳴をあげ、その四肢が煙となって弾けた
「まだまだぁ!!」
『中々どうしてやるじゃないか。幻想殺し』
「ッ!?オティヌスか!?」
『いかにも』
意気込む上条の耳に不意にオティヌスの声が聞こえた。しかし、ドームの中に隻眼の魔神の姿はなく、彼女の声が聞こえた瞬間に周りのガーディアンはその場で動かなくなった
『なに、私が直接出向いて世界を丸ごと終わらせてもいいんだが…この世界は曲がりなりにもゲームだ。楽しんでいるか?』
「なにがゲームだ!わざわざペインアブソーバーまでいじくりやがって!お前のせいでキリトとアスナは…ッ!?待てよ…世界を丸ごと終わらせるって…まさかお前…!」
『ん?ああ、察しの通り槍なら完成したさ。もうコレは私にとってお前を消す為の余興でしかない』
「野郎…!一体どうすりゃみんなを助けられるんだ!」
『簡単な話さ。私の槍を破壊すればいい。私の槍はいわば約6000人のSAOプレイヤーの記憶から作った鋼鉄の城そのもの…私の槍を破壊すれば槍を形作っている彼らの意識は元の世界に戻っていく…まぁ出来もしないとは思うがな』
『しかし一筋縄で行くと思うなよ。この世界で貴様が死ぬということは貴様の精神が行き場を失くすということに他ならないのだからな』
「俺の…精神…?」
『ああ。何しろ貴様は我々の生み出したALOのソフトで意識だけをメディキュボイドによって元いた世界とは異なる世界に飛ばしている。普通にログアウトする分には話は別だが、貴様に死に戻りなどという道はない。もし仮に貴様が蘇生猶予時間外を超えて強制ログアウトしようものなら、貴様の意識は元の世界に戻ることなく無数の世界を永遠に放浪することになる』
「んなっ!?」
『まぁ世界の基準点となる貴様の幻想殺しという『概念そのもの』がリメンライトと共にその場に残りはするが…それは貴様の意識がなくなった後に私が丁重に潰すとしよう。そうして私が望む本当の世界がようやく完成する』
「ッ!テメェッ…!!」
『さて小休止は終わりだ。今は丁度ドームの中間地点か…精々私が痺れを切らして世界ごと終わらせる前にガーディアンどもを退け私の元にたどり着くことを期待しておこうか』
「ゴガアアアアア!!!」
シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュン!シュンッ!
オティヌスの言葉の終わりと同時にガーディアンが再び行動を始め、ステンドグラスからも次々に新しい敵が湧き始めた
「望むところだあああああああ!!」
バキッ!ドゴッ!グシャッ!ドガッ!
「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
ズガァァァッ!!
「クライン…!」
ドゴオオオッ!!
「エギル…!」
バキィィィッ!!
もしも誰かが彼の戦い目の当たりにしたのなら、たった一人の孤独な戦いだと言うだろう。しかし上条当麻がそれを聞けば、それは違うと言うだろう
「アルゴ…!」
ドガァァァッ!!
「シリカ…!」
バゴォォォン!!
「リズ…!」
ガキィィィン!!
そう、彼の中では紛れもなく生きている。あの剣の世界を共に生きた仲間達が。白銀の騎士を拳で落とし、振り下ろされる剣を盾で弾く度、その記憶を蘇らせてその名を呼ぶ。そして彼の脳裏に蘇るのは…一人の少女が眠る病室のベットの前で何度も夢見た…必ず取り戻すと誓った彼女との時間…
「美琴ぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」
ドガガガガガガガガガガッッッ!!!
右手を前に突き出し、翅を懸命に打ち鳴らしてガーディアンの大群を強引に掻き分けて進む。未だ届かぬ天の高みへと、少年は手を伸ばす
「あああああああああああああああああああああああああああ!!!!!」
ドガガガガガガガッッ!…ガシッ!!
「ッ!?」
しかし、突き進む上条の足を一体のガーディアンが掴み、その飛翔に待ったをかけた。彼を止めた守護騎士が白銀の仮面の向こう側でほくそ笑んでいることを想像するのは難しくなかった
「クソッ!離せこのっ!俺はこんなとこで止まってる場合じゃ……!!」
ドスッ!!!
「ッ!?がっ!?」
ドスッ!グサッ!ドスッ!ズブッ!!
「いぎっ!?ぐっ!?ヅっ!?あがぁっ!?」
足を掴まれ空中で身動きの取れなくなった上条の身体を彼目掛けて突進したガーディアンの剣が貫いた。そしてまた一本、もう一本と剣が彼の身体を貫いていき、激痛を伴いながら彼のHPは容赦なく減らされていった
「・・・ぁ…終われ…ねぇんだ…俺は…何が何でも…テメェら全員…ぶっ飛ばして…みんなに…会いに…」
「・・・・・ギギギ」
ズバンッ!!!
そして、どこまでも無慈悲な守護騎士の冷たい白銀の剣が振り下ろされ上条の首を刎ねた。その瞬間、上条の眼から見える世界がぐるりと回りHPが完全に底を突いた。そして…
[You are dead]
「…………ぁ」
ボウッ!!!
目の前に血で染まったような赤い文字が広がった瞬間、上条の体はあっけなく砕け散り黒いエンドフレイムに包まれた。そして無情にも彼の視界は闇に包まれた