とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第4話 独白

 

「全くあのバカは…ふふっ…」

 

「・・・・・」

 

 

上条が病室を後にし、病室に美琴と2人残された吹寄は上条の足音が聞こえなくなると美琴に向けて1人話し始めた

 

 

「本当にあの鈍感男は…気づいてんだか気づいてないんだか…なんで私が自分の星座を覚えてるのか不思議に思ったりしないのかしらね…」

 

「・・・・・」

 

「ねぇ、御坂さん…だったわよね?私なんとなく分かるんだけど、あなた上条のこと好きなんでしょ?」

 

「・・・・・」

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

 

しかし、美琴が吹寄の問いかけに答えることはない。代わりに返事をするのは無感情で一定な心音を伝える機械音のみ

 

 

「私もね……好きなんだ。上条のこと」

 

「・・・・・」

 

「あはは…まだ誰にも話したことないんだけどね…でも、あなただけは特別。何でかしらね、初対面のはずなのにあなたには話したいって思ったの」

 

「・・・・・」

 

「最初はね、なーんとも思ってなかった。高校時代なんて、そんな私のことをみんなは『対カミジョー属性を持つ女』なんて呼んでたのよ?笑っちゃうわよね」

 

「・・・・・」

 

「でもね、好きになっちゃったんだ。きっかけはお見舞いに通うようになってから。最初は本当に委員長だから、クラスにあいつが戻って来てくれないとクラスに活気が戻らないから。って理由だけで始めたことだった」

 

「・・・・・」

 

「でもね、お見舞いに通うようになってたから気づいた。本当に寂しかったのは私だったんだって。アイツと過ごす日々が突然なくなって悲しかったのは私の方だったんだってね。ほら、よく言うじゃない?本当に大切な物は失った後に気づくって」

 

「・・・・・」

 

「でも、それをもってこれが恋だなんて最初は全く思わなかった。本当にただ寂しいだけなんだって思ってた」

 

「・・・・・」

 

「でも、アイツがゲームに囚われてもうすぐ1年になるぐらいのある日に私…夢を見たの。その夢で私はいつも通りアイツの病室にお見舞いに行ってた。でも、病室のドアを開けたらアイツが目を覚ましていて私に向けて笑顔を見せてくれる…そんな夢を見たの」

 

「・・・・・」

 

「その夢を見て私はバッ!って飛び起きたの。そしたらいても立ってもいられなくなって、まだ夜中の3時ごろだったのに、私は着の身着のまま自分の家を飛び出したの。今の夢はきっと正夢なんじゃないか、今の夢はきっとアイツが目を覚ましたことを私に教えてくれたんだ…そう思って病院目がけて全速力で走り出した」

 

「・・・・・」

 

「それで真夜中の病院に忍び込んで、アイツの病室にたどり着いた。ドアを開けたらアイツはきっと目を覚ましてくれてる…そんな淡い期待を寄せてね」

 

「・・・・・」

 

「でも、アイツは目を閉じたままだった。私が体を揺すっても、返事の一つも返してくれない。今までと…何も変わってなかった」

 

「・・・・・」

 

「そしたら私ね、涙が止まらなくなっちゃったの。もの凄く泣いたわ。それはもうわんわんと声をあげて泣き喚いたわね。アイツが寝てるベッドに縋り付いて、ちっとも動かないアイツの胸を借りてね。きっと今までの人生で1番泣いた自信があるわ」

 

「・・・・・」

 

「それでその時に気づいたんだ。『ああ…私は自分ではどうしようもないぐらいにコイツの事が好きなんだ….』ってね」

 

「・・・・・」

 

「きっと御坂さんもそうなんでしょ?だったらいつまでも寝てないできちんと女性として勝負しましょう?あなたが起きるまでは、私も手を出したりなんてしないから」

 

「・・・・・」

 

「・・・でも、きっと負けちゃうんだろうなぁ…アイツはSAOに囚われてたみんなを助けたいって言ってるけど、本当はきっと誰よりも御坂さんのことを助けたいって思ってるんだと思う。今日のアイツの目を見てたら、それが嫌でも伝わって来たわ」

 

「・・・・・」

 

「でも、それでもいいわ。私がアイツにあげたヘアゴムがアイツのお守りになってくれるなら、私はそれで本望。だって、私がアイツの助けになれるのなら間接的に私も御坂さんの手助けが出来てるってことでしょ?」

 

「・・・・・」

 

「・・・余計なお節介だったかしらね。本当私もこういう世話焼きなとこ変わんないなぁ…ありがとね、私の独り言にこんな長々と付き合ってくれて」

 

「・・・・・」

 

「それじゃ、私もそろそろ行くわね。次に会う時はきっとあなたが目を覚ました時だと思うわ。そしたらアイツにあなたを正式に紹介してもらうわね。そしたらよろしくやりましょう?女友達としても、恋敵としても」

 

「・・・・・」

 

「・・・それじゃあね」

 

 

スタッ…ガラガラガラ……

 

 

そう言い残して誰の耳にも届くことのない独白を終えた吹寄は椅子から立ち上がり、美琴の病室を後にした

 

 

「・・・・・」

 

ピッ…ピッ…ピッ…

 

 

病院の空いたドアから吹き抜けきた風が悪戯っぽく美琴の髪の毛を少し揺らし、その頬に一輪の桜の花弁が落ちていた。5月になり、ほとんど散っていたはずの桜の花びら。出会いと別れを意味する桜の花。彼女の頬にかかった桜の花がそのどちらを意味しているのか、それを知る者はまだ誰もいない

 

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