「じゃ、始めるか」
「おう、先に言っとくけど、スグの時みたいにリザインは無しだからな上やん」
「もちろん」
そう言うとキリトは上条にデュエル申請を送り、上条はデュエル申請を「完全決着モード」で承認し、デュエル開始までのカウントダウンが始まった
「始まるんだね…お兄ちゃんと上やん君の真剣勝負が…」
「うん…生き抜いたSAOは違う世界だったけど…正真正銘それぞれのSAOをクリアに導いたプレイヤー同士の戦いだよ…!」
「パパ…上やんさん…頑張って!」
がらんとした石畳の中央に、小柄な黒い人影がぽつんと二つ。両者は10メートルほどの距離を置いて向かい合い、その光景を上空からリーファとアスナとユイは見守っていた
[3…2…1…]
「行くぞ!上やん!!」
ブォンッ!!
「来い!キリト!!」
ザンッ!!
カウントダウンが0に近づき、キリトは自分の背丈ほどある大剣を抜き放つ。一方の上条は盾を左腕に装備し
右手の拳を握り、大地を踏みしめた
[Start!]
「「うおおおおおおおおおお!!」」
ダダダダダダダッ!ガキィンッ!!
スタートの合図とともに両者は一斉に駆け出した。キリトの大剣が振るわれ、上条は盾でそれを受け止めた
ガリガリガリッ!!!
「でやぁっ!」
ブンッ!!
「ッ!!うおおおおおおっ!!」
ガキィンッ!!
最初は大剣を受け止める盾を両手で支えていた上条だったが、盾から右腕を離すと右ストレートをキリトに向けて放つが、キリトはそれをかわしてもう一度大剣を振るい直したが、またも上条は盾でその一撃を防いだ
(強い…!初見で俺の右拳をかわす並外れた反応速度に…卓越した剣術…!流石だぜキリト!世界は違えど同じくSAOをクリアしたプレイヤーだけのことはある!)
(流石だよ上やん…油断も隙もあったもんじゃない…茅場に引けを取らないその防御術と…迷いのない拳…こうして君と本気で戦えることを光栄に思うよ…今…本当の意味で俺は…君と…)
(ああ、分かる…言葉にしなくても…こうして戦っているだけで分かる…俺は今…本当の意味でお前と…)
((同じ世界で戦っている!!))
「うおおおおおおおおっっっ!!!」
「うおおおおおおおおっっっ!!!」
ガキィンッ!!
両者の剣と盾が熱くぶつかり合い火花を散らす。両者の実力はほぼ互角。攻撃を喰らえばお返しとばかりに反撃を繰り出す。HPの減少は常に平行線をたどっており、一進一退の攻防が続いていた
「す、すごいです……」
「あれ…本当にあたしたちと同じ人間よね?」
「うん…でもきっと…もう二人にとっては勝ち負けなんてどうだっていいんだよ。ただお互いが見てる世界がどう映っているのか…それを知りたいと思うことに、もう現実も仮想世界もないんだよ」
「・・・はい。きっと」
アスナの言葉が心に染み渡り、本気でぶつかり合うキリトと上条を見てリーファは優しく微笑んだ
「キリトッ!!」
シャキンッ!!フォンフォンッ!!
「ッ!?」
パシンッ!
「・・・これは…」
「そういうモンなんだろ?お前が使ってたユニークスキルは。そんな初期の片手剣で心許ないかもしんねぇけど…見せてくれよ…お前の本当の本気ってやつを」
「!!!なるほどそういうことか…そういうことなら勿体ぶらずに見せるよ…これが俺の最高の切り札…『二刀流』だ!」
上条がデュエルの最中にキリトの名を叫び、背中の鞘に収めた片手剣を抜き彼に向かって投げた。キリトはその片手剣を受け取ると、その剣を左手で握りしめ、雄々しく二本の剣を構えた
「はあああああああああああああああああああああああっっっ!!!!!」
キンキンキィンッキンキィンッ!ガキィキィンキィンッギインッガキィン!
「ッ!?」
キリトの持つ二本の剣から踊るような斬撃が次々に織り成されていく。上条はそれを盾で防いでいるが、自分の予想を遥かに上回るキリトの勢いに気圧されていた
「ッ!?これは…早すぎだろっ!?」
(抜けるっ!!)
「ぜやああああああああああああああ
ああああああああっっっ!!!!!」
上条がそこで目の当たりにしたのは尋常ではない速度で二本の剣から次々に繰り出される煌めく星屑のような斬撃だった。それはキリトが自分の脳裏に焼き付いた記憶から再現した流星の如き16連撃。二刀流を使いこなした彼にのみ許されたソードスキル「スターバースト・ストリーム」
ズババババババババババババババババッッッ!!!
「ッ!?がはっ!?」
キリトが繰り出した16連撃は1撃も漏らすこと無く上条の身体を切り裂き、上条のHPはもはや風前の灯火であった
「とどめだあああああああああああああああああ!!!」
ズバアアアァァァンッッッ!!!
キリトがとどめだと宣言し上条に向けて振り下ろしたのは、奇しくも彼から託され左手に握った片手剣だった。しかし、幸か不幸かその最後の一太刀は……
上条の右腕を切り落とした
「ッッッッッッ!?!?!?」
ゴウッッッ!!!
「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォッッッッッッッッ!!!!!!!!!」
「・・・ぇ?」
キリトは何が起こったのか全く分からなかった。彼の右腕を切り落とした瞬間、辺り一帯の空間を目視できない異様な「何か」が支配した。キリトの耳に聞こえたのは聞いた者を戦慄させる咆哮だった。全身から血の気が引いていくのを感じ、我に帰った時に目の前にあったのはデュエルの勝者を告げる表示だった
[WINNER Kirito!]
「・・・終わっ…た…?」
「いやぁ〜参った参った。流石に2本の剣であんなゴリ押しされた日にゃ俺の盾一つじゃ防ぎ切れねぇや」
キリトが呆気に取られていた間に上条のHPは底をついており、システムはデュエルの勝者がキリトであると宣言していた。当の上条はデュエルの仕様により純粋なPKで発生するリメンライトにはならず、HPが1だけシステムによって与えられていた
「・・・上…やん?」
「俺の負けだキリト。結果はどうあれ、いいデュエルだった」
「ちょ、ちょっと待ってくれ上やん!最後のは一体…!」
「あっはっは…まぁ細けぇこたぁ気にすんな!あ、悪いんだけど俺の片手剣返して貰ってもいいか?」
「え?あ、おう…」
「おう、サンキューな」
キリトは左腕に持っていた上条の剣を返すと、上条はその初期の片手剣を背中の鞘に納めた
(いやぁ…コントロールが効くようになったとはいえ右腕を切り落とされちまうとどうにもな…慌てて抑え込んだけど隠しきれなかったか…)
(・・・本人はこう言ってるけど…十中八九あの見えない「力」は上やんのモノだ…もし彼が最初からアレを使っていたら俺は二刀流でも勝てたのか?いやそもそも一太刀でも当てられたのか?本当に底が知れないな…)
「・・・なぁキリト、俺は元から1人でどうにかしようと思ってたんだが…今なら分かる。正直あのグランドクエストは俺一人じゃ絶対にクリア出来ない…だからもし…もしキリトさえ良ければ俺と一緒に戦ってくれ!」
「・・・何を今さら。それを覚悟する為に俺がデュエルを申し込んだんじゃないか。もちろん俺は上やんと一緒に戦うよ」
「ほ、本当か!?」
「ああ。男に二言はないよ」
「ありがとう!本当にありがとう!」
「こっちこそ、改めてよろしく。相棒」
そう言ってキリトは右手を上条に差し出し、上条はその右手を取って熱いデュエルを繰り広げ労いと、これからの共闘の感謝の意を込めて握手を交わした