とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第52話 団結

 

「・・・戻ってきたな」

 

「うん…次こそは…絶対に…!」

 

 

上条とキリトのデュエルが決着し、一行の決意はより強固なモノとなった今、上条達は世界樹のドームの前にいた

 

 

「アスナ…本当に大丈夫なのか?確かにアスナが一緒に戦ってくれるのは心強いけど…俺としては…これ以上アスナを…」

 

「待って。それ以上はダメだよキリト君」

 

 

キリトは世界樹の前に戻る時に一緒に戦うと言ったアスナを心配するように声をかけたが、そんな彼の言葉にアスナは手の平を見せ、その言葉を止めさせた

 

 

「アスナ…」

 

「私も一緒に戦う。これは私が自分自身で決めたことなの。確かにこれからまたあの痛みと戦うのかと思うと怖くて堪らない。けど、それ以上に今みんなで一緒に戦えないのはもっと怖い。だから、心配しないで。キリト君が私を守ってくれるように、私もキリト君のことを守るから」

 

 

そう言って、アスナはキリトに顔を近づけると、彼の頬に優しくキスをした

 

 

「・・・よし、分かった。頼りにしてるぜアスナ!」

 

「うん!任せてキリト君!」

 

「パパ!ママ!頑張って下さい!私も私が出来ることを全力でやります!」

 

「ああ、ありがとう。ユイ」

 

「ユイちゃん…このグランドクエストが終わったらみんなでピクニックに行こうね」

 

「はい!約束ですよママ!パパ!」

 

「よーっし!それじゃあ!」

 

バッ!

 

 

気合いを入れて声を上げたリーファは、何やら自分を含めた四人の妖精から見た丁度真ん中ほどの位置に自分の右手を差し出した

 

 

「?どうしたんだよリーファ?いきなり右手なんか出して…」

 

「なるほど…そういうことか」

 

トンッ!

 

「そうだね、やっぱり団結する時はこういうのが一番だもんね」

 

トンッ!

 

 

上条が疑問を感じる中、リーファに続いてキリトとアスナが右手を差し出し、各々の右手に重ねていった

 

 

「ほら、上やん君も!」

 

「え?俺もって…ああなるほど!そういうことか!」

 

トンッ!

 

 

上条がやっと自分以外の全員が右手を重ねた意味を理解すると、最後に自分の右手を一番上に重ねて円陣を組んだ。そして、その中心である上条の右手にユイがちょこんと座った

 

 

「みんな…ありがとう。こんな見ず知らずの俺のために一緒に戦ってくれて…俺はみんなのことを一生忘れはしない!」

 

「うん!」

 

「おう!」

 

「ええ!」

 

「はいっ!」

 

「確かにあのドームの中の痛みは尋常なもんじゃない…でも、俺たちならきっとなんとかできる。俺が先陣を切って突き進んでガーディアンをぶっ飛ばす。だからみんなはなんとか俺だけでもあのゲートに届けてくれ。恐らくあのゲートの先にいる最後の敵は…俺にしか倒せない」

 

「分かった。そういうことなら俺は上やんに続いて前線に道を開ける。アスナとスグは後方から回復を頼む。もしチャンスが来たなら、一緒に前線に上がって一気に道を開いてくれ」

 

「了解っ!」

 

「うん!分かった!」

 

「・・・正真正銘これが最後の戦いになる。だから…いつかまたみんなに会って礼を言うために、俺の本当の名前を教えておこうと思う」

 

「俺の名前は『上条当麻』!」

 

「あたしの名前は『桐ヶ谷直葉』!」

 

「俺の名前は『桐ヶ谷和人』!」

 

「私の名前は『結城明日菜』!」

 

「私の名前は『ユイ』です!」

 

「よし…行くぞみんなっ!!」

 

「「「おおおおっ!!」」」

 

 

こうして自分達の勝利を誓って円陣を切った上条達は、無数のガーディアンが待つグランドクエストへと挑み、その頂上で待つオティヌスの元を目指すのだった

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「ッ!?」

 

パリィンッ!!

 

 

とある大学の学生寮の一室で何かが砕け散ったような渇いた音が鳴り響いていた。その原因は彼女、この学生寮の一室に住まう吹寄制理にあった

 

 

「・・・今のは…一体なに…?」

 

 

吹寄は普段から自炊を心掛けており、この日の夕食も自分の手で調理したものを食した。おかげで手料理には多少なりとも自信がある。故に彼女は滅多なことがなければ皿など割らないのだ。であるにも関わらず、彼女の足元には既に割れた皿のガラス片が散在していた

 

 

「・・・嫌な予感が…胸騒ぎがする…まさか上条のヤツの身に何か…!」

 

 

そう、彼女がキッチンで洗浄していた皿を床に落とした理由はただならぬ予感をその肌で感じ取ったからであった。それが何であるかを自分の中で理解してからの彼女の行動は早かった

 

 

「とりあえず簡易用医療キッドは必要不可欠よね…後は携帯型健康食料…それと栄養ドリンク…化粧は…ええいっ!この際すっぴん晒してやるわよ!」

 

 

彼女は自分の意思の赴くままに、割れた皿など気にせず手に取ったカバンに医療キッドや日頃から通販で買い込んでいた健康食品を詰め込み始めた

 

 

キュッ!!

 

「一先ずはこんなものかしらね…急がないと…手遅れになる前に…!行ってきます!」

 

ドタドタ!ガチャッ!バタンッ!

 

 

吹寄は荷物を入れ終わったバックの緒をキチンと閉めると、部屋の中を慌ただしく駆け出し、玄関で靴に履き替えると大慌てで家を飛び出した。そして夜に包まれた学園都市を駆け抜け、上条の元を目指した

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

ピシッ!!

 

「・・・?」

 

 

その時、カエルのマスコットに良く似た顔をした名医、冥土帰しはその日の手術や治療を終え、患者のカルテをまとめていた。しかし、ふと喉の渇きを潤すため妹達の1人が自分の為に淹れたお茶に手を伸ばしたところ、その湯のみに突然ヒビが入った

 

 

「・・・これは…」

 

「おや?先生大丈夫ですか?と、ミサカはヒビが入ったにも関わらず中のお茶が漏れなかった湯のみを興味深く見つめます」

 

「・・・まずいねぇ…」

 

「えっ?み、ミサカの淹れたお茶は先生のお口には合いませんでしたか?と、ミサカは悲しみの表情を浮かべます…」

 

「え?あっ、ああいや…そういうことではないんだねこれは」

 

「?」

 

 

冥土帰しの言葉の意図が読み取れず、首を傾げるミサカ10032号を他所に、冥土帰しは自分の感じ取った予感について顎に手を当て、数秒間だけ思考を巡らせた

 

 

「まさか…いや、でもそれをまさかで否定しきるのは良くないねぇ…」

 

「?」

 

「ちょっと悪いんだけどね君、セキュリティ制御室の人に頼んで地下の仮想治療室の鍵を開けておいてもらえないかな?」

 

「仮想治療室…ですか?と、ミサカは確認を取るとともにそのワケを聞き出します」

 

「悪い予感がするんだね…僕も医者の端くれだ…患者の容体の異変やそういった僕の勘は…よく当たる」

 

「それは要するに…ミサカ達の恩人である『彼』の身に何かあったかもしれないということですか?と、ミサカは先生の勘について推測します」

 

「そうだね…きっとそうに違いない…ともあれこれから忙しくなるかもしれない。一先ずは鍵を開ける方をよろしく頼むよ」

 

 

そう言って冥土帰しは席を立ち、自室を出て廊下を歩き、設置されたボタンを起してエレベーターを呼び寄せた。そしてまるで彼らの不安を煽るかのように学園都市を闇夜が飲み込んでいった

 

 

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