とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第54話 全身全霊

 

「そ、その作戦!やったとして成功率は一体どのくらいなんだ!?」

 

バキィィィッ!!!!!

 

 

四人で背中合わせでそれぞれを守りながら戦い、リーファの作戦の説明を聞いた上条達。上条は目の前に迫ったガーディアンを殴り飛ばしながらリーファにそんな疑問を投げ、その疑問に対しリーファが口を開いた

 

 

「そんなの分っかんないよ!みんながみんなコイツらの相手しながらやらなきゃいけないし…でももう私が思いついた方法はこれしかないの!」

 

ズバァンッ!!!!!

 

「だったらもうやるしかないんじゃないか!?どうせもうこのまま普通に闘ってたってコッチがジリ貧だ!俺はスグの作戦に賭ける!」

 

「も、もし仮にその作戦が失敗したらどうするの!?」

 

「・・・きょ、強行突破?」

 

「・・・ははっスグ、発想が上やんに似てきたな」

 

「要するにもうこれ以上の妙策は出てこないってことね…分かった!私もリーファちゃんの作戦に賛成!いくよキリト君!」

 

 

そう言うとアスナは手慣れた口調で魔法の呪文を詠唱した。発音した言語がアスナの周囲を光の文字となって包み込み、キリトを対象にした補助魔法が発動し、彼の身体に不思議な力が働いた

 

 

「おお…これが『移動速度強化魔法』ってヤツか…身体が軽い…ありがとうアスナ!」

 

「その魔法の補助持続時間は1分も保たないわ!キリト君と上やん君は作戦通り早く下に!」

 

「分かった!」

 

「ちょっ!?俺まだその作戦了承してな……だーーーー!!!もう分かったよちくしょう!やりゃあいんだろやりゃあ!」

 

ギュンッ!!ゴオオオオオォォォ!!

 

 

上条が半ばヤケクソ気味に作戦を了承する。アスナとリーファはその場に残り、ひたすら目の前に迫るガーディアンを追い払い続けた。だが上条とキリトはそんな二人とガーディアンの大群に背を向け、自分たちの眼下に広がるドームの床をめがけて急降下を始めた

 

 

ゴオオオオオォォォォォォ!!!

 

「上やんっ!!」

 

 

移動速度強化魔法によりキリトと上条の差はドームの床に近づくにつれてどんどんと離れていった。しかしそんな中、急に前方にいるキリトが上条の方へ振り向き声をかけた

 

 

「どうしたキリト!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・勝とうぜ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「!!!・・・ああっ!勝つぞ!」

 

「おうっ!!!」

 

ゴオオオオオォォォ…ダンッ!

 

「よしっ!」

 

キキッ!!シュンッ……

 

 

キリトが床に降り立ったのを確認すると、上条は床からアスナとリーファ達までの丁度半分くらいの場所で翅を目一杯に広げ空中でブレーキをかけ翅を閉まった。そしてあろうことか自身の左腕に装備した盾を外し、それを自らの足場にして片膝をついた

 

 

「準備オッケーだ!!頼むみんな!これが世界樹のてっぺんまでたどり着く最後のチャンスだ!!」

 

「「「おおおおおおっ!!!」」」

 

 

全員が上条の言葉に鼓舞され意気込むと、来たる時に向け各々の決められた位置で準備を始める。そして一番初めに動いたのはキリトだった

 

 

「いっけえええええええええ!!!」

 

ドゥンッ!!!ゴオオオォォッ!!!

 

 

キリトがその脚に込められる最大の力で床を蹴って宙へと飛び出した。移動速度強化魔法の効果をフルに活用し、上条めがけて彼の身体はまるで弾丸のようにグングンと加速していく

 

 

(まだだ…まだ上がる!!もっと…もっと速く…!!)

 

ギュアアアアアアアッッッ!!!!!

 

「上やん!行くぞっ!!!!!」

 

「来いっ!キリトッ!!」

 

ドッゴオオオオオオォォォ!!!!!

 

「ッ!?!?!?」

 

 

次の瞬間、移動速度強化魔法で出せる限りのトップスピードを保ったまま、キリトが上条の足場となっている盾に向かって激突し、その衝撃に上条は思わず息を呑んだ。そしてキリトはそのまま盾の裏側の取手を掴み、上に乗せた上条ごと持ち上げながら飛んで連結した列車のようになると、もう一度翅を懸命に打ち鳴らして加速し始めた

 

 

「上やん!盾にしがみついて絶対にそこから落ちるなよ!!」

 

「ああっ!!」

 

ゴオオオオオォォォッッッ!!!

 

(ここだっ…!!)

 

「うおおおおおぉぉぉぉぉっ!!!」

 

ドンッッッッッ!!!!!

 

 

やがて加速しながら飛び続けたキリトと上条はアスナとリーファを追い越した。そしてタイミングを見計らったキリトが持てる限りの力でトップスピードのまま上条を盾ごと押し飛ばした

 

 

「アスナッ!!!!!」

 

「Ek verpa einn brandr muspilli, kalla bresta bani, steypa lundr drótt!」

 

ボゴウッッッ!!!!!

 

 

キリトに盾ごと押し出され、最高速度のまま上条は空中に放り出された。それに続いて今度はアスナが着弾式の爆裂魔法を唱え、その火球が上条の盾に向かって一直線に飛んでいく。その火球が上条の盾に着弾し、爆発しようかというまさにその瞬間!

 

 

「リーファちゃんっ!!!」

 

「þeir slíta fimm grǿnn vindr!」

 

ズドオオオオオオオオオッッッ!!!

 

 

アスナが唱えた爆裂魔法が爆発するほんの数秒手前でリーファが真空攻撃魔法を発動した。吹き荒ぶように上条の足場の盾の下で旋風が巻き起こり、爆裂魔法の爆発によって発生する爆風の威力を風魔法で無理やり増幅させた

 

 

「ッ!!!!!!!!」

 

ゴオオオオオォォォッッ!!!!!

 

 

爆風によって打ち出された上条の勢いはまさにミサイルそのものだった。限界を超えて加速したその身体にかつてないほどの重力がのし掛かるが、上条はそれに抗い自分の脚に力を入れた

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

ドッッッ!!!ゴウッッッ!!!!!

 

 

自分の足場の盾を脚力が許す限りの力で思いっきり蹴飛ばし、背中から翅を広げ空へと飛躍した。己の筋力全てを翅に回し、加速の上にさらなる加速を重ねる。そしてその右拳を掲げ、その速さと勢いをそのままにガーディアンの壁へと突っ込んだ

 

 

ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッッッッッッッ!!!!!!!!

 

 

右の拳を掲げ、幾重にも重なったガーディアンを強引に吹き飛ばしながら一本の道を作る。それは、世界樹の頂点へと至らんとする三人の妖精が一人の妖精の為に導いた最後の道だった

 

 

「「「上やん(君)ッッ!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「いっけえええええええええええええええええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっっ!!!!!」」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」

 

ビキビキビキビキッ!パキィンッ!!

 

「ギャオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッッッ!!!」

 

 

上条はその握った右拳を開き、その掌を天へと伸ばした。その瞬間、彼の右手からヒビ割れるような音が響き、目には見えない「何か」が吼えた

 

 

「・・・すごい…」

 

「あれは…キリト君とのデュエルに最後に上やん君の右手から出た…」

 

「・・・上やん…君は一体…」

 

 

それは本来、目に見えない「何か」である。キリト達にもそれが何であるかは見えていなかった。しかし、その時だけは別だった。それは彼らの想像に過ぎないのかもしれない。だが、彼らの目には確かに上条の右手から「巨大な竜の顎」が見えていた

 

 

「いいぜオティヌス…お前があの世界を…あの世界のみんなを利用して…自分の知る世界だけを肯定して、他の全ての世界を否定するってんなら…」

 

バッ!!!!!

 

「まずは!そのふざけた幻想をぶち殺す!!!」

 

ドゴオオオオオッッッッッ!!!!!

 

 

「竜王の顎」がガーディアンの壁を喰らい尽くし、ついに上条はその壁を突き抜けた。そして、天蓋へと伸ばし続けたその右拳がついに世界樹の頂点へと続くゲートの岩盤に触れた。するとその瞬間、上条の身体は光に包まれ、別の空間へと転移した

 

 

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