とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第55話 激突

 

シュンッ!!

 

「・・・ここは…?」

 

 

世界樹の頂点へと続くと言われるゲートに触れた上条は、見知らぬ場所に転移されていた。そこは何もない空間だった。目に見えるのはどこまでも広がる闇。一切の光はなく自分がどこにいるのか、足に立っているという感触があるだけで、実際に立っているのか浮いているのかすら分からない。その光景に、上条はかつてアインクラッドで最後にアレイスターと激闘を広げた宇宙空間を彷彿とさせていた

 

 

コッ…コッ…コッ…

 

「全く…待ちくたびれたよ。幻想殺し」

 

「ッ!?オティヌス…!」

 

 

不意に聞こえたのは甲高い足音。先の見えぬ闇から一人の少女が姿を現した。その手には小柄な背丈に余るほど長大な黄金の槍。このALOがモチーフとした北欧神話の最高神、その名を『オティヌス』

 

 

「しかしまぁ面白いものを見させてもらったよ。まさかあの状況をあんな型破りな方法でひっくり返すとはな」

 

「ああ…SAOじゃ長いことソロだったから忘れちまってたよ。常に一緒に戦ってくれる仲間がいるってのは…こんなにも頼りになるのかって実感した」

 

「そう言う割にはここには一人で来たようだが?」

 

「ああ…キリト達のSAOは…もう既にキリト達が自分達の手で決着をつけた。だからこの戦いは…俺がたち終わらせなきゃいけないんだ。俺たちのSAOは…俺たちが終わらせる。俺たちが今ここで本当の意味で終わらせなくちゃいけねぇんだ!!」

 

シャキィンッ!!!

 

「『天叢雲剣』」

 

ビキビキビキッ!パリィンッ!!

 

 

上条は背中の鞘から剣を抜き、その口で日本の神話に実在した剣の名を呼ぶ。すると上条の手に握られた見すぼらしいただの剣にヒビが入り、内側で何かが弾けるように黄金に輝く神剣へとその姿を変えた

 

 

「10000人のSAOプレイヤーの願いが剣という形作られた器に集結した神話の剣…それが天叢雲剣か」

 

「コイツでお前の『槍』をぶった切る。そこに囚われてるみんなを取り戻す!!」

 

 

そう言って上条は黄金に輝く剣の切っ先をオティヌスに向け、臨戦体勢に入った

 

 

「ふっ…よくもまぁこんな『物』にそこまで執着できるものだ…」

 

 

そう言うとオティヌスは自分の手に持つ槍をその手の上で転がし、弄び始めた

 

 

「・・・『物』だと?」

 

「ああ。こんな『仮想』などという誰かが作った偽物で塗り固められた大した意味もない下らん世界と、その世界で作られたなんの価値もない繋がりにそこまで執着するとはな」

 

「なら、お前は違うのか?」

 

「・・・なに?」

 

「お前が今言った、自分の口で言ったんだぞ。『誰かが作った意味もない世界』だってな。それはお前も同じじゃないのか?」

 

「私も……同じ……だと?」

 

「確かにお前は元の世界を望むなら、それは別に人としての道理だ。間違ってない。現に俺もSAOにいた時は現実の世界を焦がれ続けた」

 

「だけどな、いくら元の世界に戻りたいからって、それを自分の手で作るなら、それは元いた世界と全く同じでも、所詮は自分で作った偽物なんだよ。そんなんで自分の願いを叶えたところで、待っているのは虚しさだけだ。後には何も残らない」

 

「・・・言うではないか。なら、この私が間違っているとでも?自分の悲願を果たすために、自分で世界を成し遂げることが間違いだとでも?」

 

「ああ」

 

 

即答だった。その反応の速さにオティヌスは静かに眉間へと皺を寄せた

 

 

「お前はその世界でいつか、きっと自覚する。その世界がどれだけ完璧だろうと、そこに住む世界の人たちも、自分が作ったものなんだってな。どんなに幸せそうに笑っても、その笑顔は作られた物だと自覚する」

 

「・・・・・」

 

「だけど、仮想世界は違う。確かにSAOやこのALOは、お前やアレイスターが作った偽物の世界かもしれない。だけど、そこには紛れも無い人の意思があるんだ。世界は神が…誰かが作るものなのか?俺はそうは思わない。いつだって、世界ってやつはみんなの繋がりで少しずつ回って、少しずつ出来ていくもんなんだよ」

 

「・・・不毛だな」

 

コォンッ!!!!!

 

 

上条の言葉にもはや眉間に皺を寄せるどころかしかめっ面を浮かべたオティヌスは、自分の手にした槍を構えた

 

 

「もはや言葉などいらぬ。来たまえ『人間』。そもそも私という存在が矮小な人間ごときとわざわざ戦ってやること自体が破格の待遇なのだが、貴様は特別だ。少しばかり私の神経を逆撫でしすぎた」

 

「・・・・・」

 

「『一撃』だ。今から私が放つたったの一撃で世界は終わる。世界なんて簡単だ…『神』とは何たるかを貴様に教えてやろう」

 

「そうかよ…なら俺も…全身全霊を持ってその一撃を叩き伏せる!!」

 

 

上条当麻は今一度、あらゆるSAOプレイヤーの願いの結晶体である黄金の剣を力強く握った

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

「・・・一体どうしたのよこれは…」

 

 

ガタガタガタガタッ!prrrrrrr!!ドタバタドタバタッ!!ガヤガヤガヤガヤガヤ!!prrrrrrr!ドタバタドタバタ!!

 

 

吹寄制理は第7学区のとある病院を訪れていた。同じ大学の寮に住まう上条当麻の部屋を訪れたが、そこに彼の姿が見えなかった為、この病院を訪れたのだ。しかし病院に着くやいなや、院内では男女問わず職員全員が慌ただしく動き回っていた

 

 

「えっと…とりあえず受付…ってもはや受付にも誰もいないし…」

 

 

一先ず病院内に入る為の受付を済ませようとした吹寄だったが、この混雑の所為なのか受付窓口はがらんとしており、受付窓口の奥では職員全員が絶え間なく鳴り響く電話の対応に追われていた

 

 

「これじゃ受付しようもないし…かといってこのまま入るというのも規則に反する訳だし…参ったわね…」

 

「あっ!吹寄さん!」

 

「はい?あ!いつもの受付嬢さん!」

 

 

この煩雑な状況にどうしたものかと困り果てていた吹寄の背後から声をかけたのは、彼女や上条が見舞いに通うたびに受付でお世話になっている受付嬢だった

 

 

「ごめんね!今から受付の用意するからちょっと待ってて!」

 

「あ、いえそんな!そちらが落ち着いてからで構いませんから!…でも一体どうしたんですか?受付嬢さんが受付から出てお仕事してるなんて…」

 

「それが実は今猫の手も借りたいぐらいの緊急事態で…私は普通にナースとしても仕事が出来るから『受付なんていいから患者の方を手伝ってくれ!』って借り出されちゃって…」

 

「そんな…そこまでするほどの緊急事態って…一体どんな…」

 

「えっと…それは…」

 

「おや?誰かと思えば『彼』の見舞い人の女の子だね君は」

 

 

顔馴染みの受付嬢と吹寄が話しているところに声をかけたのは、この病院の医者であるカエルによく似た顔をした、その数々の偉業から「冥土帰し」と呼ばれる医者だった

 

 

「あっ!先生!先ほどの患者さんの容体は…!?」

 

「・・・・・」

 

「・・・そう、ですか…」

 

「やはりこればかりはね…こちらが意識的にどうにかしようとしてどうにかなるものではないんだね」

 

 

受付嬢が切羽詰まったような顔で冥土帰しに先ほど対応したのであろう患者の容体を問いかけたが、そんな彼女に対し冥土帰しは首を横に振り、そう告げた

 

 

「えっと…すいません、一体なにがあったんですか?」

 

「ああっ!ごめんね!今受付の用意するk……あれ?でも吹寄さん一体誰のお見舞いに…それに後2、30分もすれば今日の面会時間は終わりなのに…」

 

「あ、えっとお見舞いっていうわけじゃなくてその…」

 

「『彼』だろう?」

 

「ッ!?やっぱり上条のヤツはこの病院にいるんですか!?」

 

「え!?でも先生、上条君はとっくに退院していて…それに御坂さんのお見舞いに来て受付をした覚えもありませんし…」

 

「ああ、大丈夫分かっているさ。君たちは知る由もないだろうけど、なにしろ彼に関する事情は複雑すぎてね…」

 

「あ、あの!上条に会わせてもらう訳にはいかないでしょうか!?私、なんだか嫌な予感がして彼を探しにここまで来たんです!」

 

「おや?君もだったのか…実は私もだったんだがね…どうやらその彼に対する予感は当たらずも遠からず…といったところだね」

 

「え?」

 

「僕に付いてくるといい。幸いここには普段は受付嬢の彼女も含めて優秀な職員が揃っている。君を彼の元に案内するぐらいは時間を割いても問題はないね。もっとも、そんなに余裕がある訳じゃない。彼の事情は歩きながら説明しよう」

 

「ほ、本当ですか!?ありがとうございます!」

 

「というわけで君、僕が許可するということで彼女の受付は不要ということにしてほしい。それと、しばらく患者のみんなを頼んだよ」

 

「は、はい!分かりました!こちらは任せて下さい!」

 

「では行こう。彼はここよりもう少し下にいる。その間歩きながら今の現状を話そうか」

 

「はい!」

 

 

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