「不幸だーーーーー!!!!!」
季節は夏。上条当麻がALOから帰還し、SAO患者全員が目覚めてから三ヶ月ほどが経過していた。上条当麻はいつもの口癖を叫びながら、夕日に照らされる大学の中庭を走り抜けていた
「何が不幸よ全く!貴様が今日〆切のレポートを今日までほったらかしていたからこうなったんじゃない!だからいつも課題は早めにやっておけと言っているのに貴様というヤツは…!」
「すまん!!」
「すまんで済んだら風紀委員はいらないわよ!!!」
「怖すぎやしませんか吹寄さま!?」
そんな彼の隣で同じく夕暮れの中庭を走る彼女は吹寄制理。世話焼きの彼女は今日〆切の上条のレポートを手伝う為に夏休みの時間を割いてまで大学を訪れていた
「いやでも普通夏休み中に課題の〆切日設けますかね!?なんで授業もないのにレポートなんざ出しにわざわざ大学に…!」
「貴様の場合は出す前に図書室でパソコンと睨めっこしてワード打つのも込みでしょうが!そんなことよりごちゃごちゃ言ってる暇があったら走れバカ者!このままじゃ本当に間に合わないわよ!?」
中庭を抜けた二人は大学に隣接する生徒用の駐車場にたどり着いた
「どれだ!?吹寄の車!」
「アレよ!前に停めてあるあの水色の軽自動車!」
「了解!」
ガチャッ!バタンッ!
上条と吹寄は駐車場に置いてある一台の軽自動車のドアを開けると、上条は助手席に、吹寄は運転席へと乗り込み車のキーを差し込んだ
「場所と時間は!?」
「第3学区のロイヤルホテル!時間は後30分!てかそれはいいけど吹寄!お前本当に車の運転なんて出来んのか!?」
「舐めんじゃないわよ!貴様がナーヴギアを着けながら寝てる間にこっちはちゃんと教習所行って免許取ってんのよ!」
ブルルルルンッッッ!!!
「第3学区か…少し遠いわね…飛ばすわよ上条!シートベルト締めたわよね!?」
「お、おい!本当に任せて大丈夫なのか!?」
「ふっ…言っておくけど、軽自動車で初心者マーク付けたてのペーパードライバーだと思って気緩めてんなら…」
ギュルルルルルルルルッ!!!
「舌噛むわよっ!!!!!」
ブウウウウウウゥゥゥンッッッ!!!
「いいっ!?どわああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!?!?!?」
上条達を乗せた車はおよそ軽自動車とは思えないほどのスピードで飛び出した。上条はそのスピードに息を呑み、絶叫マシーンに乗せられているかのように叫んだ。まるでレーシングカーのように疾走する軽自動車は、第3学区に続く道を爆走した
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ブゥゥゥゥゥン…キキッ!
ここは第3学区にある高級ホテル。このホテルは元々は学園都市への外交目的で訪れるVIP用のホテルである。しかし今、そんなホテルの出入り口に、不相応もすぎる水色の軽自動車が停車した
「ふーっ、ジャスト5分前。案外何とかなるものね」
「ゔう…星が…回る…」
「先に言っておくけど上条、ゲロるなら車の外でゲロりなさい。さもないと同じ速度とコースで後24時間走り続けるわよ」
「わ、分かりまぢだ…うっぷ…」
ガチャッ…
そう脅され上条は口元と吐き気を無理矢理抑え込みながら車のドアを開け外に出た
「っぷ…あー…不幸だ…本当に…」
「全く…そんなんで大丈夫なの?貴様は今から始まるパーティーの主役みたいなもんでしょ?もっとシャキッとなさい」
「あー分かってる分かってる…サンキュー吹寄…わざわざ送ってくれて…どうだ?なんだったら吹寄も参加してみたら…」
「バカね。私が行ったって場違いにも程があるわよ。いいから早く行きなさい。きっとみんな待ってるわよ?」
「それもそうか…まぁ、ありがとな」
「羽目外しすぎて帰れなくなっても流石に帰りは迎えに行かないからね?」
「分かってるって」
「それじゃ、楽しみなさい」
バタンッ!ブウウウウゥゥゥン……
上条がドアを閉めると、吹寄の軽自動車は再び走り始め、段々とその車体が見えなくなっていった
「さてと、行くk…」
シュンッ!!
「どわっ!?」
「ふーーっ、ありがとう黒子。おかげで間に合ったわ」
「いえいえ、他ならぬお姉様のお願いですもの。これくらい当然ですわ」
ホテルのロビーに入ろうとした上条の目の前に二人の少女が突如として現れた。空間を丸ごと瞬間的に移動したのであろう登場を果たした二人は、常盤台高校の制服に身を包んだ御坂美琴と白井黒子だった
「ビックリした…美琴達だったのか…」
「あ、アンタも今来たんだ?」
「ぬがっ!?そこにいるのはお姉様を誑かす憎き憎き類人猿…!お姉様を下の名前で呼ぶその愚行!万死に値すると思い知りなさいですわーーっ!!」
「やめんかコラーーーーー!!!」
バチバチバチバチバチッッッ!!!
「あばばばばばbbbbb!?!?」
ジュウウウウウゥゥゥ…プスプス…
上条に鉄矢を構えて飛び交る黒子を見ると、美琴の身体から紫電が迸り、その電撃は黒子を全身真っ黒焦げにした
「全く…だから言ってんでしょ。こいつが私を下の名前で呼ぶのはSAOでの二年間があるから仕方のないことなのよ。アンタもいい加減諦めなさいってば…」
「ううう…認めませんの…認めませんのぉぉぉ…」
「全く…ほら行くわよアンタ」
「え?いいのかコレほっといて?」
「いいのよ。もうソレも高校生なんだから多少は自粛の精神を覚えた方がいいのよ」
「なんで私指示語だけで呼ばれてますの!?」
「そ、そうか…じゃ行くか。そんなに時間に余裕あるわけじゃないからな」
「そうね。じゃあね黒子。日付けが変わるまでには帰るからー」
「お、お姉ざばあああぁぁぁ…」
スタスタスタスタ
「えっと…パーティー会場ってどこのフロアだっけ?」
「2階の大ホールよ。そんぐらいちゃんと覚えときなさいよね。そうじゃなくてもこのホテル無駄に広いんだから」
ホテルにの中に入った上条と美琴の二人はエスカレーターを使って二階に上がると、大ホールにたどり着き受付を行っているホテルの従業員に話しかけた
「えっとすいません、今日のパーティーに参加しに来たんですけど…」
「かしこまりました。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「上条当麻です」
「御坂美琴です」
「上条様と御坂様ですね。招待状を拝見させてもらってもよろしいでしょうか?」
「はい、これです」
「失礼いたします……ご提示ありがとうございました。お待たせいたしました。本日は心行くまでお楽しみ下さいませ」
ガチャッ!
「ありがとうございます」
受付嬢がホールのドアを開けると、上条と美琴はパーティー会場の中に入った。するとそこには、豪華絢爛な造りのホールが広がっており、机には高級な料理や飲み物がズラリと並んでいた
ザワザワザワザワガヤガヤガヤガヤ…
「広っ!?なんだここ!?本当にホテルの中かよ!?」
「そりゃ当然でしょ。今日は学園都市内外からSAOプレイヤーを集めてのパーティーなんだから。まぁこれでもここには300人そこらしかいないんだけどね…でも少しでも多くの人でパーティーを共有できるように世界中のパーティー会場と中継を繋いでるらしいわ」
「なるほど…アイツらもここにいてくれるといんだけどなぁ…」
ブーーーーーッッッ!!!
「あ、開会式始まるみたいよ?」
バツンッ!バツンッ!バツンッ!
会場にブザー音が鳴り響くと、会場のライトが次々に光を失い、会場は暗闇に包まれた。そして数秒の間を置くと、舞台に立った1人の女性にスポットライトが当てられた
『本日は「アインクラッド攻略記念パーティー」にお越しいただきまして、誠にありがとうございます。開会式はここ、日本の学園都市会場から全世界のパーティー会場へ中継でお送りさせていただきます』
『申し遅れました。本日司会を務めさせていただきます「篠崎里香」と申します。不躾な司会ではございますが、本日は最後まで何卒よろしくお願いいたします』
パチパチパチパチパチパチ!!!
「篠崎里香!?ってまさかあれリズなの!?」
「ええっ!?マジかよ!?あのお転婆娘があんなマトモな司会できんのか!?」
『つきましては本日のパーティーの主催者であります「土御門元春」氏から祝電、及び伝言を預かっておりますので私がこの場で代読させていただきます』
そう、何を隠そう全世界のSAOプレイヤーを巻き込んで開催したこのパーティーの主催者は上条がよく知る土御門であった。全SAOプレイヤーを労って開催されたこのパーティーを開くのは、こういうことが好きな彼らしいと言えるだろう
「土御門…ありがとな…」
『・・・きょ、今日は遠路遥々それぞれの地区に設けられたパーティー会場まで足を運んでくれてありがとうだにゃー…いやー、数少ない友人にSAOプレイヤーを持った俺としても嬉しい限りぜよー…今日はみんな心ゆくまでパーティーを楽しんで欲しいぜよー…』
「前言撤回だあの恥晒しめ」
『ついては先にご紹介した俺の友人に今日の乾杯の音頭を取ってもらうぜよー!SAOクリアの立役者である上やんこと「上条当麻」だにゃー!というわけで!かーみやん!後はよろしく頼むぜよー!』
「・・・は?」
『んんっ!では改めまして、主催者の土御門元春からご紹介いただきましたSAOクリアの立役者!上条当麻さんに乾杯の音頭を頂戴したいと思います!学園都市会場にお越しの上条当麻さん!壇上までどうぞ!』
パチパチパチパチパチパチ!!!
「・・・野郎マジで覚えとけよ」
「ぶふっ!ほ、ほらお呼びよ。行って来なさいよ!くくっ!」
「こっちは本当に笑えねんだっつの…」
「いいからいいから!思いっきりかましてきなさい!」
「どわっ!?おい押すなよ美琴!?」
こうして上条は会場の人垣を掻き分けながら舞台の上へと上がった