とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第6話 ログイン

 

「さて、アバター登録といきますか…ALOはアバターの容姿は勝手にゲームが決めるみたいだし、そんなに手間はかからんだろ…まずはユーザーネームを…」

 

 

そうして上条は目の前のキーボードの役割をしているウィンドウを操作し、自分のユーザーネームを入力していく

 

 

「やっぱこれだよな…[Kamiyan]っと…」

 

 

[『Kamiyan』でよろしいですか?]

 

 

「[OK]っと…」

 

 

このように上条はなんの躊躇いもなく、かのSAO時代と同じ自分のユーザーネームを承認した。そう、いわゆるこれは上条の中のケジメなのだ。自分の戦いはまだ終わっていない。みんなを助けるまで、この名前を捨てるわけにはいかないという決意の表れだった

 

 

[では次に、あなたのアバターの種族を選択して下さい]

 

 

そうゲームのメッセージが伝えると、9つの種族の妖精のイメージホログラムが表れた

 

 

「えーなになに、サラマンダー…ウンディーネ…シルフ…ケットシー…レプラコーン…っていやこれ種族多すぎだろ…いくら種族間の戦闘を促すゲームとは言ってもこりゃ多すぎるぜ…」

 

 

そんな愚痴を言いながらも手元のウィンドウを操作し、それぞれの種族を一瞥していくと、ある種族の画面を前にして上条の手が止まった

 

 

「・・・『スプリガン』…か…」

 

 

上条は黒を基調とした幻惑魔法を得意とする種族の妖精であるスプリガンに一目置き、興味を持ったのかスプリガンの詳細に目を通し始めた

 

 

「まぁ、やっぱり日本人は黒髪が一番似合うよな。よし!俺はこのスプリガンに決めたぜ!」

 

 

[『スプリガン』でよろしいですか?]

 

 

「[OK]!」

 

 

そんなあまりにも自由すぎる理由でスプリガンを選択した上条。そして彼の周囲の光景が薄っすらと変わっていき、ついにゲームの舞台の幕が上がろうとしていた

 

 

「この感覚は五ヶ月ぶりだな…やってやるぜ!」

 

 

[Welcome to Alfheim Online!]

 

 

そのシステムのテロップを最後に上条の周りは一瞬で暗転し、まばゆいばかりの閃光が辺りを包んだかと思えば目の前には果てしない青空が広がっていた

 

 

ビュオオオオオオオォォォォォ!!!

 

「うおおおおお…すっげぇなこれ…本当に飛んでるのか…俺…」

 

 

自分の身の回りの空気を切りながら空を泳ぐ上条。生まれて初めて味わう空を飛ぶと言う感触に心が踊る

 

 

「うっひょおおおおお!!!たーのしぃぃぃぃぃぃ!!!こりゃみんなが夢中になって遊ぶワケだぜ!!」

 

 

空中浮遊を自身の思うがままに楽しむ上条だったが、その途中である異変に気付く

 

 

「しかし、これ意外と前に進まないもんなんだな…飛べるのは魅力的だけど案外走る方が早いんじゃないのか?っていうか…あれ…?」

 

 

ところが、上条はある違和感に気づいた。何故だか知らないが今のALO内で設定されている時間は夜らしい。綺麗な満月がフィールドの真上に浮かんでいる。しかし上条にはその満月がどうにも自分からどんどん離れていっているように見えていた

 

 

「ってことはだ…つまりこれは…飛んでるわけじゃなく…ひょっとして…」

 

 

そう、今上条は空気抵抗を自分の下側からしか受けていない。それはつまり…

 

 

「落ちてるだけだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

 

 

そういうことである。

 

 

ゴオオオオオオオオオォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!!!

 

「ヤバイ!ヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイヤバイ!!!!!なんとかしないとぉぉぉぉぉ!!!ログインして1分にも満たないで初死になんて冗談でも笑えねぇぇぇぇぇ!!!!!」

 

「そうだ!飛べばいいんだ!…って飛び方なんも分かんねぇぇぇ!!!」

 

「うわああああああああああああああああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!?!?!?!?」

 

 

ズドーーーーーーーーーン!!!!!

 

 

上条の健闘も虚しく、最後は地面に正面からものすごい勢いで叩きつけられた。上条の身体の周囲の地面はまるで隕石が落下した後のようなクレーターができており、遥か上空まで砂埃が舞い上がっていた

 

 

「ぐふっ…ふ、不幸…だ……………」

 

 

そう言いつつも足腰に力を込め、なんとか立ち上がった上条。HPは0になる寸前をなんとか維持していた

 

 

「痛ててててて…生きてるのは不幸中の幸いか…てか逆に何で生きてんだ…HP残ってる方がおかしいだろこれ…こりゃ将来も楽な死に方は出来そうにないな…」

 

 

そんな自虐を混ぜつつ自分の被った砂埃を叩いて払いながら周囲を確認していた

 

 

「んで、え〜っと?ここは一体どの辺なんだ?」

 

 

上条が周りを見渡すと、辺り一面は森林で鬱蒼とした木々で囲まれており、目立つ建物は特に存在していなかった

 

 

「景観的にはSAOでいつか行った『迷いの森』に似てるな…まぁいくらか前向きなイメージだが…こりゃ下手したら脱出も手間だな。まぁそうならないためにも今はきちんと現状把握だ」

 

 

そう言うと上条は右手を振り下ろしメインメニューを開こうとした。しかし、その右手が空を切っただけで何のアイコンも現れることはなかった

 

 

「あ、そういやチュートリアルでメニューは左手で開くって言ってたっけか…ほい…よし、出たな」

 

 

上条が左手を振り下ろすと、今度こそメインメニューのウィンドウが目の前に現れた。そしてそのウィンドウを指先で操作し、真っ先にあるボタンを探した

 

 

「ちゃんとあった…ログアウト…安心したぜ」

 

「さて、とりあえずマップを」

 

 

ログアウトボタンを確認し安堵の息を吐くと、上条はメニューからマップを開いた。するとどうやらここは中立域の森の中であることが分かった。ここから少し離れた所には何やら街があるらしいが、どんな街かまでは分からなかった

 

 

「まぁ現在地が分かっただけでもよしか…じゃあお次はステータスを…ってあれ…?あれれ?」

 

 

ウィンドウを操作してステータスを確認する上条。HPやMPはバリバリの初期値であろう数値は確認する事が出来たが、彼の目に止まったのは、今の自身が持つスキル項目だった

 

 

「『索敵スキル』940…『盾スキル』が1000…他にも『筋力』に『敏捷』まで…これSAOと同じスキルとステータスじゃねぇか…しかも数値まで…最後にSAOをプレイしていた当時の俺と…全くもって同じ…」

 

「それに加えて『コイツ』は…」

 

 

初期アバターにしては異常なほど多く所持しているスキルと桁外れのスキル熟練度を持つ自分のステータスに驚くこともさることながら、それぞれを確認しながらウィンドウをスクロールしていき、一番下のスキルにたどり着いた。そしてそこに記されていたスキルの名は…

 

 

「幻想…殺し…」

 

 

彼の右手に宿る力であり、剣の世界でもその猛威を振るった彼だけが持つ能力の名だった

 

 

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