とある魔術の仮想世界[2]   作:小仏トンネル

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第8話 初陣

 

「そうかい…だったらお望み通り…ここで串刺しにしてやるよぉぉぉ!!」

 

 

先ほど上条にぶっ飛ばされたサラマンダーが真紅の翅を広げ、叫びながらその手に槍を構え、上条に向けて猛突進してきた

 

 

「ッ!!ダメッ!!!!!」

 

「死ねやぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

「!!!!!」

 

バキィィィィィ!!!!!

 

「ごぼっ…ふっ…!?」

 

「・・・え?」

 

「これでまずは一抜けだな」

 

 

ボウッ!!!

 

 

上条はサラマンダーの槍の突進を潜り抜けると、右ストレートを敵の顔面に叩き込んだ。するとたちまちサラマンダーのHPは全損し、赤いエンドフレイムにその身が包まれた

 

 

(す、すごい…す、素手で一発…)

 

(なるほど…こりゃ本当に『あの頃』と大差ないな…ま、今の俺に関係してんのは『敏捷』と『筋力』と『幻想殺し』だけ…他は研究の余地ありだな)

 

「ッ!!!野郎よくもっ!!」

 

ビュンッ!!

 

「遅いですのことよ?」

 

「なっ!!!」

 

ドゴオオオオオォォォォォ!!!!!

 

「ぎゃああぁぁぁぁぁぁ!?!?」

 

ボウッ!!!

 

(・・・あそこで過ごした二年は伊達じゃない…ってことか)

 

 

上条はもう1人のサラマンダーが武器を構えるよりも早く、上条は驚異的なスピードで肉迫し、サラマンダーの顔面へ問答無用で右ストレートを叩き込んだ。そしてその強烈な一撃でもってHPを一気に0にし、その身体が燃えた

 

 

「す、すごっ……」

 

 

その様子にシルフの女の子は感嘆の声を漏らした

 

 

「で、どうする?残ったアンタも殴られたいか?」

 

「・・・やめておくよ。魔法スキルがもう少しで900なんだ、デスペナが惜しい」

 

「へっ、正直なやつだな…そちらのお嬢さんはそれでいいか?」

 

「・・・あたしも別に構わないわ。ただし、今度はきっちり勝たせてもらうわよ」

 

「そちらのお嬢さんともタイマンは遠慮したいな…そんじゃ…」

 

 

そう言うと残されたサラマンダーは背中の翅を広げ、どこかへと向かって飛び去っていった

 

 

「・・・さて…なぁ、この炎は?」

 

 

上条は全身に入れていた力を抜くと、自分の背後でゆらゆらと燃える二つの炎を指差してシルフの女の子に問いかけた

 

 

「しっ!それは『リメンライト』。蘇生限界時間が終わるまではそこでずっと燃え続けるの。だからヤツらの意識はまだそこに在るわ」

 

すうっ………

 

「ふぅ、よし。消えたわね」

 

 

リメンライトが残っていないのを確認すると、シルフの少女は自分の剣を腰に据えている鞘へと納めた

 

 

「とりあえずお礼を言うわ、助けてくれてありがとう。あたしの名前は『リーファ』。種族はシルフよ」

 

「俺は上やん。種族は見ての通りスプリガンだ。…それでちょっと頼みがあるんだけど、アイテムで鏡とかあったら貸してもらってもいいか?」

 

「鏡?ああ、さっき自分の容姿がどうのって言ってたやつ?ちょっと待ってね…」

 

 

するとリーファは左手を振り自分のメニューを呼び出し、アイテムストレージから手鏡をオブジェクト化させた

 

 

「はいこれ、鏡」

 

「おお、すまん。サンキュー…どれどれ…」

 

 

上条はリーファから手鏡を受け取ると自分の顔の写った鏡を覗き込んだ。するとそこにはやはり、黒髪でツンツン頭な現実と瓜二つな自分の顔が映っていた

 

 

「とほほ…やっぱり現実の俺の顔なのかよ…さっきのヤツが言ってたからそうなのかもとは思ったけど…まぁ仕方ねぇか…」

 

「?」

 

 

上条は鏡を覗き込みながら何やらぶつぶつと呟いているが、何しろ呟いているだけなので耳が良いシルフのリーファと言えど、あまり明確には聞こえず首をかしげた

 

 

「まぁいいや、ありがとうリーファ。これ返すよ」

 

「え、うん。…それで?なんでスプリガンがこんなとこうろついてんの?」

 

「あー…えーっとだな…道に…迷ってだな…」

 

「道に迷ったぁ?冗談はよしなさいよ。この森スプリガン領から途方もなく離れてるわよ?」

 

「え、えーっとだな…笑わないって約束してくれるか?」

 

「へ?ま、まぁ内容によるけど…」

 

「その…着地の方法が分からなくてだな…」

 

「着地が分からなくて…?」

 

「・・・・・落ちた」

 

「・・・プッ…あはははははははははははははははははは!!!!!本当にビギナーさんなんだね!はははははははは!!!!!分かる分かる!私も最初は木に激突したもん!」

 

「分かるならそんなに爆笑することないだろ…」

 

 

上やんは不機嫌そうに腕を組むと細い目でリーファを見つめた

 

 

「ははは、あー笑った。そっかそっか、なるほどね。それじゃ上やん君、助けてくれたお礼と爆笑したお詫びにあたしが一杯奢ってあげようか?」

 

「本当か!?いやーそれは助かるよ!実は色々と教えてくれる人を探してたんだ!」

 

「色々…って?」

 

「この世界のこととか、このゲームの遊び方とか、飛び方とかアイテムに装備の性能とか、とにかく色々と。特に『あの樹』のこととかな」

 

 

そう言うと上条は自分達から遥か遠くで天空に向かってそびえ立つ巨大な樹木を指差した

 

 

「あの樹って…もしかして世界樹のこと?」

 

「ああ」

 

「・・・いいわよ。あたしこう見えてもまぁまぁ古参のプレイヤーなの。一通りの説明とかアドバイスは出来ると思う」

 

「良かった。ありがとう」

 

「じゃ、ここからちょっと遠いけど北に中立の村があるの。そこまで飛びましょ?」

 

「あれ?さっきマップを見た限りだとこっからは『スイルベーン』って街の方が近いんじゃないのか?」

 

「本当に何も知らないのね。いい?あそこはシルフ領よ?」

 

「・・・で?」

 

「『で?』って…あのね、あなたスプリガンでしょ?この森は中立域だからどんな種族でも攻撃されれば等しくHPが減少するわ。だけど、シルフ領のあの街の中は話が別。シルフのみんなにあなたは攻撃出来ないけど、逆に領土内のシルフはそれがアリなの。つまり、上やん君がシルフのみんなに袋叩きにされても文句言えないわよ?」

 

「別にみんなが即襲って来るわけじゃないんだろ?それに同じ種族のリーファもいることだし、だったら大丈夫だろ。あ、それと俺のことは別に呼び捨てでいいぞ」

 

「そっか…じゃあ上やん君がそう言うなら…あ…」

 

「ははは、まぁそんな急には変えられないか」

 

「そうね…慣れて気が向いたら呼び捨てにすることにするわ。それじゃ、本当にスイルベーンに向かうけど、命の保障はないわよ?」

 

「ああ、大丈夫だ」

 

 

こうして二人は出会い、これから巻き起こっていく大冒険を共にすることになるとは、まだ誰も想像していなかった

 

 

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