遅れてしまってすみませんでした。
言い訳をさせていただきますと、真面目にめちゃくちゃ忙しかった時期があり、どうにかそれを乗り越えたら"頑張った自分へのご褒美"などと言いながらモンハンやっていたり、別の小説書いたり、ハーメルンで面白そうな小説を漁ったりしていました。
まぁそんな感じなのでで、今後僕の小説の更新を待つ時は、あんまり期待しないで待っていて下さい。
そういえばFGOで空の境界コラボイベント復刻版が来ましたね。
スペシャルゲストに浅上藤乃が来たのには驚きましたね。
ガチャの感想としては「FGOにも"好きな鯖が貰えるチケット"的なものが欲しいなぁ」という感じです。
というか「剣式さん来てほしいなぁ」という感じです。
まぁ自分、微課金勢なんですけどね。
実はFGOに来る前から「ふじのん(を元にしたオリ主)が主人公な小説書きたいな」なんて思っていたり。
・三人称視点
その魔物は巨体であった。
二メートルはあるだろう巨躯に白い毛皮。
やはりど言うべきか、赤黒い線が幾本も体を走っている。
見た目は熊の様ではあるが、足元まで伸びた太く長い腕の先には三十センチはありそうな鋭い爪が生えている。
その爪熊がいつの間にか接近して来ており、ウサギとハジメ、四季を睥睨していた。
ハジメは元よりウサギも硬直したまま動かない……いや、動けない。
そのウサギの様は、まるで先程のハジメの様で、爪熊を凝視したまま凍りついている。
「……グルルル」
突然爪熊が、この状況に飽きたとでも言うかの様に、低く唸り出した。
「ッ!?」
それを聞いたウサギは、ビクッと一瞬震えると踵を返し、まさに脱兎の如く逃走を開始した。
今まで敵を殲滅するために使用していたあの踏み込みを逃走のために全力使用する。
それに対し、爪熊はその巨体に似合わぬ素早さでウサギに迫り、その長い腕を使って鋭い爪を振るったからだ。
ウサギは流石の俊敏さでその豪風を伴う強烈な一撃を、体を捻ってかわした。
ハジメと四季の目には、確かに爪熊の爪は掠りもせずウサギはかわしきったかの様に見えた。
しかし着地した蹴りウサギの体はズルと斜めにずれると、そのまま噴水のように血を吹き出しながら別々の方向へ、ドサリと転がった。
ハジメは愕然とした。
狼の群れを殲滅できる程の圧倒的な強さを持っていたウサギが、まるで為す術もなくあっさり殺されたのだから。
同時にウサギが怯えて逃げ出した……逃げ出そうとした理由がよくわかった。
あの爪熊は別格なのだ。
ウサギの強力な脚撃を持ってしても歯が立たない化け物なのだ。
爪熊はのしのしと悠然と蹴りウサギの死骸に歩み寄ると、その鋭い爪で死骸を突き刺しバリッボリッグチャと音を立てながら喰らってゆく。
ハジメは動けなかった。
あまりの連続した恐怖に、そしてウサギだったものを咀嚼しながらも鋭い瞳でこちらを見ている爪熊の視線に射すくめられて。
冷静であった四季はひたすら熊を観察していた。
あの不可思議な魔法を見極め、隙や弱点を見つけて、
爪熊はわずか三口ほどでウサギを文字通り全て腹に収めると、グルル……と唸りながらハジメと四季の方へ体を向けた。
その視線がまるで、次の食料はお前たちだ、と言っているかの様で。
結果、ハジメはその視線に耐えきれず、恐慌に陥った。
「うわぁぁあああッ!!」
「!? 南雲くん!?」
意味もなく叫び声を上げながら折れた左腕の事も……自身の決意さえも忘れて、必死に立ち上がり爪熊とは反対方向に逃げ出す。
しかし、あのウサギですら逃げること叶わなかった相手からハジメが逃げられる筈が無く、
ゴウッと風がうなる音が聞こえ、何かにぶつかられる衝撃を感じた直後、それよりも強烈な衝撃がハジメの左側面を襲い、壁に叩きつけられた。
「がはっ!」
「うぁっ……!」
肺の空気が衝撃により抜け、咳き込みながら壁をズルズルと滑り崩れ落ちるハジメ。
衝撃に揺れる視界で何とか爪熊の方を見ると、爪熊は何かを喰らっていた。
ハジメは、最初は爪熊が何を食べているのかが分からなかった。
ウサギはさっき食べきっていたはずだ、と頭の隅でそこまで考えた時、その喰らっているモノが人間の腕である事に気がついた。
それは白く細い綺麗な腕で、その周囲には
ハジメは理解出来ていない事態に混乱しながら、自身にもたれかかっている四季に目を向けた。
「ハァッ……ハァッ……」
「両…儀、さん……?」
「ごめ……なさい……間に合わな、かった……」
玉の様な汗を噴き出し、必死に息継ぎをする四季。
彼女の左腕は二の腕の辺りから無くなっていて。
左腕のあった場所からは蛇口をひねったかの様にドクドクと赤い血が流れていた。
両儀さんが自分を庇ってくれたのか、と理解し息を呑んだ直後、
「ガァッッ……!!!」
強烈な痛みがハジメを襲った。
痛みの元へと目を向ければ、そこには半分以上が切断されてほぼぶら下がっているだけの様な自身の左腕があった。
彼女が自分を庇ってくれていなければ、熊の目の前にあったのは自分の腕であっただろう。
そう理解できてしまったハジメは、体から血の気が引いていくのを感じた。
四季の腕を喰い終わった爪熊が悠然と二人に歩み寄る。
その目にはウサギのような見下しの色は無く、ただの食料であるという認識しかない。
「あ、あ、ぐぅうう、れ、〔錬成ぇ〕!」
あまりの痛みと恐怖に涙と鼻水で顔を汚しながら、ハジメは右手を背後の壁に押し当て錬成を行った。
ほとんど無意識の行動だった。
無能と罵られ、魔法の適性も身体スペックも低いハジメの唯一の力。
通常は武具を加工するためだけの魔法で、その天職を持つ者は例外なく鍛治職に就く。
故に戦いには役立たずと言われ、しかし異世界人ならではの発想でクラスメイトを助けることもできた力。
だからこそ死の淵でハジメは無意識に頼ったのだ。
背後の壁に縦60センチ、横130センチ、奥行2メートル程の穴が空く。
獲物が逃げようとしている事を察知した熊は二人に迫ろうとする。
「ぐっ、ガァァァアアアッッ!!!」
その直後、ハジメはぶら下がっていた自身の左腕を
ドチャッ、と熊の横に落ちたハジメの腕に熊は惹かれ、喰らい付いた。
「〔
その隙にハジメは、四季の服に噛み付きその体を引っ張りながら穴の中へ体を潜り込ませた。
「グルァアアアッ!!」
獲物を逃した事に気がついた熊は、怒りをあらわにしながら固有魔法を発動し、ハジメが潜り込んだ穴目掛けて爪を振るう。
凄まじい破壊音を響かせながら壁がガリガリと削られていく。
「うああああっ!!〔
熊の咆哮と壁が削られる破壊音に半ばパニックになりながら、少しでもあの化け物から離れようと連続して練成を行い、奥へ奥へと進んでいく。
がむしゃらに錬成を繰り返し、四季を引っ張りながら地面をほふく前進する様に進んでいく。
左腕の痛みの事は既に頭から無くなっており、ただ"死にたくない、死なせたくない"という感情のまま、唯一の力を振い続ける。
どれくらいそうやって進んでいたのかハジメにはわからなかったが、恐ろしい音はもう聞こえなくなっていた。
しかし実際はそれほど進んではいないだろう、とハジメは頭の隅で思う。
一度の錬成の効果範囲は二メートル位であるし(これでも初期に比べ倍近く増えている)、人間一人の服を咥えながら引っ張っているし、何より左腕の出血が酷い。
そう長く動けるものではないだろう。
実際、ハジメの意識は出血多量により既に落ちかけていた。
それでももがくように前へ進もうとする。
「〔
何度錬成しても眼前の壁に変化はない。
意識よりも先に魔力が尽きたのだ。
ズルリと壁に当てていた手が力尽きたように落ちる。
ハジメは、朦朧として今にも落ちそうな意識を何とか繋ぎ留めながらゴロリと仰向けに転がった。
ボーッとしながら引っ張ってきた四季を見つめる。
この辺りは緑光石が無く明かりもないため、彼女の荒い息継ぎだけが聞こえてくる。
何時しかハジメは昔の事を思い出していた。
もしかしたらこれが走馬灯というやつなのかもしれない、とハジメは思った。
まだ小さな頃から、小学校、中学校、そして高校での思い出。
様々な思い出が駆け巡り、最後に思い出したのは……月明かりの下で儚げに笑う
その美しい光景を最後にハジメの意識は闇に呑まれていった。
意識が完全に落ちる寸前、ぴたっぴたっと頬に水滴を感じて。
ハジメはそれが、誰かの流した涙の様に感じた。
『空の境界』知らねぇ、って人は読まなくても良い感じの後書き。
今更ですが、この小説のオリ主の性格は最終的には
『物騒な感じを無くしたFGOの両儀式(セイバー)』
みたいな感じになります。
僕はまだ『両儀式』というキャラクターの事をあまり知りませんが、
『殺人衝動のやべーヤツ(ファンの方々に怒られそうな言い方)』
というよりは
『FGOに登場する綺麗で格好良くて可愛いヤツ』
みたいな感じです。