ありふれた転生者の異世界巡り   作:折れたサンティの槍

5 / 16
原作を見ながらカリカリ書いた。
ハジメの出番もほとんど無いし、ちょくちょく読み飛ばしても良いんじゃないかな。
あと女口調難しい……。

《原作プロローグ前》の話を結構修正しました。

12/15 モソモソ修正。
1/8 少し修正


異世界召喚 『縋り難い希望』

side 四季

 

 

咄嗟に南雲くんの腕を掴み、光に包まれ気が付いた時には、私は巨大な壁画のある、大理石の様な白い石でできた大聖堂にいた。

周りには、自分と同じ様に呆然と周囲を見渡している白崎さんたちとクラスメイトたちがいる。

あの教室にいた全員があの魔方陣による異常に巻き込まれてしまったのだろうか。

ふと、掴んでいた腕の感覚を辿る様に振り向くと、自分と同じ様に周りを見渡していた南雲くんと目が合った。

勝手に腕を掴まれて怒っているのか、顔が少し赤い。

 

「勝手に掴まってしまってごめんなさい」

「あ、ああいや……大丈夫だよ両儀さん。両儀さんは怪我とかしてない?大丈夫?」

「ええ、おかげ様で。ありがとう南雲くん」

「うっ…うん、どういたしまして」

 

謝りながら腕から離れると、そんな言葉が返ってきた。

悪感情を持つどころか、本心からこちらの心配をしてくれているのがわかった。

 

(こんなに優しくて良い人と友だちになる事が出来て良かった)

 

………自分が一方的にそう思っているだけで向こうは単なる"趣味の合う話し相手"という認識かもしれないけれど。

 

少し混乱していたものの今は落ち着き、冷静に周りを確認する余裕が生まれた。

昔から異常事態や緊急事態には、ほとんど動揺する事無くすぐに冷静になる事が出来た。

そんな自分を不思議に思う事は多かったけど、今はそれに感謝すべきだと思う。

 

どうやら自分たちはこの大聖堂の奥にある台座の様な場所にいて、その台座の前方には白い法衣を纏った三十人近い人々が、祈りを捧げるかの様に跪き、両手を胸の前で組んでいた。

 

その中でも特に豪奢(ごうしゃ)(きら)びやかな衣装に、細かい意匠の凝らされた烏帽子(えぼし)の様なものを被った老人が進み出てきた。

その老人は手に持った錫杖(しゃくじょう)をシャラシャラと鳴らしながら、深みのある落ち着いた声音で告げる。

 

「ようこそトータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様、歓迎致しますぞ。私は聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバルドと申す者です。以後宜しくお願い致しますぞ」

 

そう言って、イシュタルと名乗った老人は、好々爺(こうこうや)然とした微笑を見せた。

 

 

= = = = = = = = = =

 

 

場所を移した私たちは今、10メートル以上はありそうなテーブルがいくつも並んだ煌びやかな作りの大広間に通されていた。

恐らくここで晩餐会を行ったりするのだと思う。

上座に近い方に愛子先生とアマノガワコウキたち四人組が座り、後はほとんど適当に座っている。

南雲くんは最後方、私はそのいくつか隣だ。

 

全員が着席したタイミングで、メイド服を着た使用人さんたちがカートを押して入ってきた。

使用人さんなど始めて見たのか、この場にいるほとんどの男子が彼女たちを見ていた………私はメイド服はともかく使用人さんは見慣れているので、『あのメイド服は絶対に自分には似合わないでしょうね』くらいしか思うところは無い。

カートに乗っていた飲み物が座っている全員に行き渡るのを確認すると、イシュタルが話し始めた。

 

「さて、あなた方はにおいてはさぞ混乱している事でしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」

 

そう言って話始めたイシュタルの話は、実にファンタジーでテンプレートでどうしようも無い程に勝手な話だった。

 

まずこの世界は《トータス》と呼ばれていて、大きく分けて《人間族》《亜人族》《魔人族》の三つの種族が存在している事。

この内の、人間族と魔人族は何百年も戦争を続けていてたが、最近になって"魔人族による魔物の使役"という異常事態が多発している事。

魔物とは、それぞれ強力な固有の魔法が使える凶悪な害獣の事だという事。

その魔物の大量使役によって人間族側の"数"というアドバンテージが崩れ、人間族側は滅びの危機を迎えている事。

 

「あなた方を召喚したのは《エヒト様》です。我々人間族が(あが)める守護神、聖教教会の唯一神にしてこの世界を創られた至上の神。

人間族が滅びると悟られたエヒト様は、その滅びを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位に存在し、例外なく強力な力を持っています。

召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのです。

あなた方という“救い”を送ると。

あなた方には是非その力を発揮し、エヒト様の御意志の下、魔人族を打倒し、我ら人間族を救って頂きたい」

 

そう言ったイシュタルはどこか恍惚(こうこつ)とした表情を浮かべていた。

神託を聞いた時の事を思い出しでもしているのだろう。

 

私は言い知れぬ危機感を抱いていた。

“神の意思”を疑い無く、それどころか嬉々として"それ"に従ってしまうのであろう、この世界の人間の(いびつ)さに。

 

そんな時、突然立ち上がり、猛然と抗議する人が現れた。

愛子先生だ。

 

「ふざけないで下さい! 結局この子たちに戦争させようってことでしょう! そんなの許しません! 先生は絶対に許しませんよ! 私たちを早く帰して下さい! きっとこの子たちのご家族も心配しているはずです! あなたたちのしている事は、唯の誘拐ですよ!」

 

理不尽な召喚理由に怒る愛子先生。

しかし残念ながら、低身長童顔という見た目に加え、見ている者に庇護欲を感じさせてしまう性格のせいで、周りの生徒たちは「ああ、また愛ちゃんが頑張ってる……」などと和んでしまっている。

 

……よくもまぁこんな緊急事態にそんな風にしていられるものね。

自分なんて目の前に置かれている飲み物に、口一つ付けていない程に警戒心全開だというのに。

 

そんな周りの生徒たちは、次のイシュタルの言葉によって凍りつく事になった。

 

「お気持ちはお察しします。しかし、あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

場に静寂が満ちた。

誰もが何を言われたのか分からないという表情でイシュタルを見やる。

 

しかし私は今、周りの生徒たちの表情を見渡せる程に冷静になっていた。

 

「ふ、不可能……!?不可能ってどういうことですか!? 喚べたのなら帰せるでしょう!?」

「先程言った様にあなた方を召喚したのはエヒト様です。

我々人間には異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな。

あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第、ということですな」

「そ、そんな……」

 

愛子先生が脱力したように、ストンと椅子に腰を落とした。

その様子を見た、警戒心皆無だった周りの生徒たちは、ようやく口々に騒ぎ始めた。

 

「うそだろ!? 帰れないってなんだよ!」

「いやよ! 何でもいいから帰してよ!」

「戦争なんて冗談じゃねぇ! ふざけんなよ!」

「なんで、なんで、なんで……」

 

恐慌(きょうこう)状態に陥る生徒たち。

しかし昔から(・・・)負の感情が一定以上(・・・・・・・・・)()()()()()()()()()()()私は、"ある程度この展開を予想出来ていた"のもありそれ程ではなかった。

前世も今世もオタクであるが故に、こういう展開の小説はいろいろと読んでいたのだ。

これ以上に最悪な、"召喚者奴隷扱い"モノや"異世界転移直後から目の前で化け物が大暴れしている"モノなんかも知っていたのだ。

……自分がこんな事に巻き込まれるとは、露ほどにも思わなかったけれど。

『事実は小説よりも奇なり』とはよく言ったものだと思う。

 

そんな誰もが狼狽(うろた)える中、イシュタルは特に口を挟むでもなく静かにその様子を眺めていた………いや、何となくその目の奥に侮蔑が込められているような気がする。

今までの言動から考えると『エヒト様に選ばれておいて何故喜べないのか』とでも思っているのかもしれない。

 

未だパニックが収まらない中、アマノガワコウキがテーブルをバンッと叩きながら立ち上がった。

その音に、ビクッと動きを止めながら注目する生徒たち。

アマノガワくんは生徒たち全員の注目が集まったのを確認するとおもむろに話し始めた。

 

「みんな、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない、彼にだってどうしようもないんだ。

……俺は、俺は戦おうと思う。

この世界の人たちが滅亡の危機にあるのは事実なんだ。

それを知って放って置くなんて、俺にはできない。

それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。

……どうですか?イシュタルさん?」

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍(むげ)にはしますまい」

「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」

「ええ、そうです。ざっとこの世界の者と比べると、数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」

「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、みんなが家に帰れるように!……俺が世界も皆も救ってみせる!!」

 

ギュッと握り拳を作りそう宣言するアマノガワコウキ。

無駄に歯がキラリと光った。

同時に、アマノガワくんが持っているらしいカリスマは遺憾なく効果を発揮した。

絶望の表情を浮かべていた生徒たちが活気と冷静さを取り戻し始めたのだ。

アマノガワくんを見る目はキラキラと輝いており、まさに希望を見つけた、とでも言うかの様な表情だ。

 

……はたしてこんな(泥舟)に希望を見たり、あるいは縋ったりしても良いものか。

 

「へっ、お前ならそう言うと思ったぜ。お前一人じゃ心配だからな……俺もやるぜ?」

「龍太郎……」

「今のところ、それしかないわよね。……気に食わないけど、私もやるわ」

「雫……」

「え、えっと、雫ちゃんがやるなら私も頑張るよ!」

「香織……」

 

いつもの三人がアマノガワくんに続き、後は当然の流れの様にクラスメイトたちも賛同していく。

……アマノガワくんのいる方向から視線を感じたものの、当然の様にスルー。

 

いい加減、学校で一時期席が近くだったぐらいで身内認定するのをやめて欲しい。

一方的に話しかけてきて、言ってしまえば鬱陶しいことこの上なかった。

 

愛子先生はオロオロしながら「ダメですよ〜」と涙目で訴えていたが、アマノガワくんの作った流れの中ではあまりにも無力であり、結局全員で戦争に参加する事が、勝手に決まってしまった。

 

おそらくクラスメイトたちは、戦争をするという事が……殺し合いをするという事がどういうことなのかを、本当の意味で理解してはいないだろう。

………それは自分にも言える事ではあるのだけど。

彼らからすれば崩れそうな精神を守るための、一種の現実逃避とも言えるかもしれない。

 

さて……これからどうなる事やら……。




天之河くんがオリ主に付きまとう理由は、本文通りの理由に加えてオリ主が美少女であった為です。
席が近くだった時もほぼ一方的にオリ主に話しかけ、それに対して返事を貰えたから身内(この場合、同じグループの仲間)認定……多分『ありふれた〜』の原作天之河くんと変わりないですね!(白目)

次回予告
・『城』と聞いたら自分は大体《アノール・ロンド》とか《ロスリック城》とか《廃城カインハースト》をイメージしたりします。 by筆者
・ステータスプレートの話。
・プレートに表示されたオリ主の力とは……。

そんな感じ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。