最後の方が割とぐだぐだになってしまった感じがするので、いつか修正とかするかもしれない。
"生徒たち"を"クラスメイトたち"に修正
その他一部修正
後書きの技能説明修正
サブタイトル変更&微修正
2019.7/1 サブタイトル変更
side ハジメ
あの後到着した王宮で、王族方・お偉いさん方・僕たちの教官方の自己紹介とか、歓迎の晩餐会なんかが開かれ、その後各自に用意された部屋に案内され、部屋の中のベッドで即座に意識を落とした次の日。
早速訓練と座学が始まる事になった。
まず、集まったクラスメイトたちに12センチ×7センチ位の銀色のプレートが配られた。
不思議そうに配られたプレートを見る生徒たちに、騎士団長のメルド・ロギンスさんが直々に説明を始めた。
「よし、全員に配り終わったな?このプレートは、《ステータスプレート》と呼ばれている。
文字通り、自分の客観的なステータスを数値化して示してくれるものだ。
最も信頼のある身分証明書でもある。
これがあれば迷子になっても平気だからな、失くすなよ?」
非常に気楽な喋り方をするメルドさん。
この人は
僕たちもその方が気楽で良い。
遥か年上の人達から
「プレートの一面に魔法陣が刻まれているだろう。
そこに、一緒に渡した針で指に傷を作って魔法陣に血を一滴垂らしてくれ。
それで所持者が登録される。
〔ステータスオープン〕と言えば表に自分のステータスが表示されるはずだ。
ああ、原理とか聞くなよ?そんなもん知らないからな。
神代の"アーティファクト"の類だ」
「アーティファクト?」
"アーティファクト"という聞き慣れない単語に、天之河くんがそう言葉を返す。
「アーティファクトって言うのはな、現代じゃ再現できない強力な力を持った魔法の道具のことだ。
まだ神やその眷属たちが地上にいた神代に創られたと言われている。
そのステータスプレートもその一つでな、複製するアーティファクトと一緒に、昔からこの世界に普及しているものとしては唯一のアーティファクトだ。
普通は、アーティファクトと言えば国宝になるもんなんだが、これは一般市民にも流通している。
身分証に便利だからな」
なるほど、と頷き僕たちは顔をしかめながら……いや、隣にいた両儀さんは表情一つ変える事なく……指先に針をチョンと刺し、プクと浮き上がった血を魔法陣に擦りつけた。
すると、魔法陣が一瞬淡く輝いた。
血を擦りつけたプレートを見てみると。
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南雲ハジメ 17歳 男 レベル:1
天職:錬成師
筋力:10
体力:10
耐性:10
敏捷:10
魔力:10
魔耐:10
技能:錬成・言語理解
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と表示された。
まるでゲームのキャラにでもなったみたいだなー。
なんて思いながら、自分のステータスを眺める。
メルド団長からステータスの説明がなされた。
「全員見れたか?説明するぞ?
まず、最初に【レベル】があるだろう?
それは各ステータスの上昇と共に上がる。
上限は100でそれがその人間の限界を示す。
つまりレベルは、その人間が到達できる領域の現在値を示していると思ってくれ。
しかしレベル100というのは人間としての潜在能力を全て発揮した極地であって、そこにたどり着ける様な奴はそうそういない」
どうやらゲームのように『レベル上昇→ステータス上昇』という訳ではないらしい。
「ステータスは日々の鍛錬でも当然上昇するし、魔法や魔法具で上昇させることもできる。
また、魔力の高い者は自然と他のステータスも高くなる。
詳しいことはわかっていないが、魔力が身体のスペックを無意識に補助しているのではないかと考えられている。
それと、後でお前たち用に装備を選んでもらうから、楽しみにしておけ。
何せ救国の勇者様ご一行だからな。
国の宝物庫大解放だぞ!」
宝物庫、と聞いた両儀さんの表情が少し曇った。
ああ、確かにこんな異世界じゃあ刀なんて無いだろうしなー。
「次に【天職】ってのがあるだろう?
それは言うなれば才能だ。
末尾にある【技能】と連動していて、その天職の領分においては無類の才能を発揮する。
天職持ちはそう多くはいない。
戦闘系天職と非戦系天職に分類されるんだが、戦闘系は千人に一人、ものによっちゃあ万人に一人の割合だ。
非戦系も少ないと言えば少ないが……百人に一人はいるな。
十人に一人という珍しくないものもある。
生産職は持っている奴が多いな」
自分のステータスを見る。
確かに天職欄に【錬成師】とある。
どうやら【錬成】というものに才能があるようだ。
自分たちは上位世界の人間だからこの世界、トータスの人間よりハイスペックである、とイシュタルから聞いた。
俺TUEEEEE出来るのでは、と思わずニヤついてしまう。
「後は……各ステータスは見たままだ。
大体レベル1の平均は10くらいだな。
まぁ、お前たちならその数倍から数十倍は高いだろうがな!全く羨ましい限りだ!
あ、ステータスプレートの内容は報告してくれ。
訓練内容の参考にしなきゃならんからな」
メルド団長のその言葉を聞いた僕から喜びは消え去り、嫌な汗が噴き出るのを感じた。
あれぇ~?僕のステータス、どう見ても平均なんですけど……もういっそ見事なくらい平均なんですけど?チートじゃないの?俺TUEEEEEじゃないの?
……ほ、他のみんなは?やっぱり最初はこれくらいなんじゃ……。
なんて思っていたら、メルド団長の呼び掛けが始まり、早速天之河くんがステータスの報告をしに前へ出ていた。
そのステータスは……
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天之河光輝 17歳 男 レベル:1
天職:勇者
筋力:100
体力:100
耐性:100
敏捷:100
魔力:100
魔耐:100
技能:全属性適性・全属性耐性・物理耐性・複合魔法・剣術・剛力・縮地・先読・高速魔力回復・気配感知・魔力感知・限界突破・言語理解
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ちょっと引くぐらいチートだった。
ちなみに団長のレベルは62で、ステータス平均は300前後、この世界でもトップレベルの強さだ。
しかし、天之河くんはレベル1で既に三分の一に迫っている。
成長率次第では、あっさり追い抜きそうだ。
しかも、天之河くんだけが特別かと思ったら他の連中も、光輝に及ばないながら十分チートだった。
なんでどいつもこいつも戦闘系天職ばかりなんですかね……。
そして錬成師……響きから言ってどう頭を捻っても戦闘職のイメージが湧かない……。
技能も二つだけ、しかも一つは異世界人にデフォの技能の【言語理解】……つまり、実質一つしかない。
世界とは悲劇なのか……などと思っていたら報告の順番が回ってきてしまったので、メルド団長にプレートを見せた。
今まで規格外のステータスばかり確認してきたのであろうメルド団長の表情はホクホクしていた。
が、しかし、その団長の表情が「うん?」と笑顔のまま固まり、ついで「見間違いか?」というようにプレートをコツコツ叩いたり、光にかざしたり、ジッと凝視したりしている。
団長……?何やってんだよ、団長ォッ!
やめて!もう僕のライフはゼロよ!
そんな風に現実逃避していた僕に、やがてもの凄く微妙そうな表情をしたメルド団長がプレートを返してきた。
「ああ、その、何だ。錬成師というのは、まぁ、言ってみれば鍛治職のことだ。鍛冶をするときに便利だとか……」
歯切れ悪く僕の天職を説明するメルド団長。
鍛治職ということは明らかに非戦系天職だ。
クラスメイトたち全員が戦闘系天職を持ち、これから戦いが待っている状況ではほとんど役立たずだろうなぁ……。
なんて思っていたら、檜山がニヤニヤしながらウザい感じに声を張り上げてきた。
「おいおい南雲ぉ。もしかしてお前、非戦系かぁ?鍛治職でどーやって戦うんだよ?メルドさん、その錬成師って珍しいんすか?」
「……いや、鍛治職の十人に一人は持っている。国お抱えの職人は、全員持っているな」
「おいおい、南雲~。お前そんなんで戦えるわけぇ?」
檜山が実にウザイ感じで僕と肩を組んできた。
見渡せば周りの生徒たち、特に男子はニヤニヤと嗤っている。
とりあえず強気に答えてみる。
「さぁ、やってみないと分からないかな」
「じゃあさ、ちょっとステータス見せてみろよ。天職がショボイ分ステータスは高いんだろうなぁ~?」
メルド団長の表情から内容を察しているだろうに、わざわざ執拗に聞いてくる檜山……こいつ本当に嫌な性格してるなぁ……。
檜山の取り巻き三人もはやし立ててくる。
強い者には媚び、弱い者には強く出る典型的な小物の行動だ……もはや憐れみの感情が湧いてくるレベルの。
そんなことを考えながら、投げやり気味にプレートを渡した。
僕のプレートの内容を見て、檜山は大笑いした。
そして、斎藤たち取り巻きに投げ渡し、内容を見た他の連中も大笑いなり失笑なりしていく。
「ぶっはははっ、何だこれ!完全に一般人じゃねぇか!」
「ぎゃははは~!むしろ平均が10なんだから、場合によっちゃあその辺の子供より弱いかもな!」
「ヒァハハハ~、無理無理!直ぐ死ぬってコイツ!肉壁にもならねぇよ!」
次々と笑い出すクラスメイトたち。
……少し俯きながら、今はこの笑いが止むまで耐えよう、と考えていたその時。
「これは……【縫製師】、か……」
まだメルド団長の近くにいたからか、生徒たちの笑いの間を縫う様に、そんな声が聞こえた。
「縫製師は、あー、錬成師と同じ様に、衣服の仕立てる者たちの間ではそう珍しくはないらしい。布地を魔力によって作成したり、破れた衣服を魔力を使って直したりできるらしい……のだが……」
そんな歯切れ悪い説明の声に、顔を上げ、すぐ横を向いてみれば、そこにはまたしても微妙そうな表情をしたメルド団長と、苦笑している両儀さんの姿があった。
「大丈夫ですよメルドさん、魔力も日々の鍛錬で増えていくのですよね?そうすれば、応急処置の為の包帯ぐらいは作れる様になりますよ、きっと」
「お、おお……そう、だな」
苦笑しながらそう言った両儀さんに、おずおずとプレートを返したメルド団長。
そんな両儀さんに、僕のプレートを持った檜山の取り巻き三人組が近付いてきた。
その顔には『どんな反応するのか楽しみだなぁ!』という様な、嫌な笑みが張り付いていた。
「両儀さんも見てくださいよ、南雲クンのステータスをさぁ!」
「マジ爆笑ものですよこれは!」
「ドーゾドーゾ、ご遠慮無く!」
ヘラヘラと笑いながら近付いた三人組を、両儀さんは、ぎりっと奥歯を鳴らしながら睨みつけた。
うぐっ……と怖気付いた三人組の一人、中野から、僕のプレートを奪う様に掻っ攫うと、表を見ない様に裏返してから、僕の方に向き直り、プレートを差し出してきた。
……一部の生徒が舌打ちしていたのには、かなりイラっと来た。
「南雲くん、これ、返すわね」
「あ、うん、ありがとう、両儀さん……見なくても良いの?」
「見て欲しいものでも無いでしょうし、散々聞こえていたもの……ああ、私だけ知っていたら不公平よね?」
そう言った両儀さんが、堂々と僕に向けて見せてきた物は……
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両儀四季 17歳 女 レベル:1
天職:縫製師
筋力:25
体力:15
耐性:20
敏捷:25
魔力:5
魔耐:5
技能:布地生成・布地修復・言語理解
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そんな事が表示されていた、両儀さんのプレートだった。
「これが私のステータスです。……いくらでも笑ってくれて構わないわ」
苦笑しながらそう言い放った両儀さん。
それを見た周りのクラスメイトたちは、笑う事はおろか、何か発言する事すらも出来ない。
檜山と取り巻きの四人組に至っては、顔面真っ青である。
「それじゃあ、"ショボイ天職の、肉壁にもならない雑魚"同士、これから一緒に頑張りましょう?」
笑いながらそう言って、僕の手を取ってきた両儀さんに、
「うん、一緒に頑張ろう、両儀さん」
僕は、やっぱり苦笑しながら、そう返した。
ちなみに両儀さんのその言葉を聞いた、笑っていたクラスメイトたちは顔面真っ青に、檜山四人組は真っ青を超えて真っ白になっていましたとさ。
ザマァ。
【布地生成】…魔力を使って、使用者がイメージした布地を生成する事が出来る。
この技能で作られた布地は普通の物よりも少し頑丈であり、貴族たちの衣服なんかはこのスキルを持った者たちが仕立てていたりする。
【布地修復】…布地に空いた穴やほつれ、破れた場所なんかを直せる。
布地生成と同時に使用すると、焼失などして無理矢理失われてしまった部分を元通りに直せる。
という、結構設定ガバガバなオリジナル技能。
オリ主の着物はオリ主自身に直してもらいます、みたいな感じ。
次回予告
・ハジメと四季、周囲に関係を隠したりはしなくなった。
・香織さんはもう台詞無いんじゃないかなぁ……。
・原作サブタイトル詐欺になるかも。
やったね筆者!次回からハジメと四季の絡みが増えるよ!