TS主人公がロリコン仮面と出会ったら~ 作:バウよりカッコいいMSはいない
ようやく第一話ですけど、本格的にヤツと絡むのはちょっと先ですネ。
第一話 宇宙世紀と少女
「──比べるべくもないさ……
さあ、可憐なお姫様お手をどうぞ」
「さわるなロリコン」
サングラスをキリリと決めた男。
その男は端正な顔立ちと、惚れ惚れするような金髪を穏やかな風に波立たせていた。
「ふむ、人聞きの悪いことを言う
どうやらお姫様はご機嫌斜めのようだ」
おそらくこの男は自分の容姿をよく理解している。
ニヤリ──この表現がよく似合う表情で微笑む男は、一般人が嫌うはずのその表情さえ様になっているのだから。
「近寄ったらその金髪をむしりとって
大衆の前に立てないちょんまげにしてやるからな
いいか、それ以上近寄るなよロリコン」
さて、対するはまだ齢12にも、届かないだろう幼さの残る少女だ。名をアズハという。
男を美青年とするなら、この少女は幼いながらも人を惹き付ける美少女といえるだろう。
銀糸の艶やかに靡くセミロング。健康的というよりは、陶磁器のように白い肌。そして何よりもその顔立ちは、仏頂面だというのに完成された人形のようだ。まだ幼いため、美しいというよりは可愛いらしい、というべきだが。
「これは困ったな」
その少女を見つめつつ、そう言いながら微笑む男はさらに絵になっている。それはさながら絵画の中からきたお姫様を口説く王子様のようだが、相手が少女なので少々危ない絵面……ではある。
しかしサングラスのむこうには、隠された復讐の炎がたしかに灯っている。
優しげな表情から感じとれる人間などいないだろう。その自信もあれば隠し通す度胸もある、そういう男だ。むろん、この少女は知っているのだが。
──時にU.C.0077
この少女と男が出会うのは偶然か、はたまた神の敷いた必然と呼ぶべきストーリーの一片なのか。
ただ言えるのは、この出会いは双方にとってこの先の人生を大きく変える、分岐点の始まりに過ぎないということである。
〇第一章〇
TS少女と無色の蒼
「人が宇宙への開拓を進め、努力の末進出してから早77年。
お前らはどういうことか分かるか?
77年前の先人は、地球から飛び出て何もかも初めての地で生存権を得たのだ。まるで数百年前、人類が初めて海の向こうを知った日のようにな。
そこにはたくさんの失敗と一つの成功しかない。比率を見れば大失敗だったかもしれん……しかし大きな一歩だったのだ。
なぜなら、その一歩があるからこそ、我々スペースノイドはこうして生きているのだからな。
そしてこれら我々人類が宇宙へと進出した新時代を、宇宙世紀とよぶ……と、授業はここまでだな
予習復習はしっかりするように!あとフランツは遅刻するなよ~」
「ぶっ」「「「はーい」」」
チャイムの音、子供たちのシンクロした声とともに授業が終わった。
先程の科目は歴史。中でも宇宙世紀に関係する内容で、何から何まで興味をひかれる話だった。
「あまり騒ぐんじゃないぞ」
じゃあなと、一通り準備を終えた先生が教壇を離れると、先程まで静かだった教室は一気に喧騒に包まれる。
我先にと立ち上がる生徒、大声で話し出す生徒、居眠りをしている生徒。それはさまざまだった。
「……はは」
そんな中でも俺は、先程の話を思い浮かべ、冷めやらぬ興奮を抑えるのに時間を有している。それは一重に、俺がこの世界の外を知っているからなのか……
さてちんぷんかんぷんな人のために説明することにする。
まずここは12歳までの少年少女が通うジュニアスクールなのだが、知りたいのはここにいたるまでの経緯だろう。
さて、俺の歴史を辿っていこうか。
まずこっちに来た時の話だ。
あの狂人……神と話をしたあとのことだ。
突然視界が狭まり気づくと女性の腕の中で目覚めていた。
結果的に彼女は俺の母親だった訳だが、初めは何が起きたのかと動揺して大泣きしてしまったし、じたばたとおおいに暴れた。
今では本当に申し訳ない気持ちでいっぱいだけど、その時はなんとか母さんに落ち着かせるように背中を叩いてもらい、優しく暖かみのある腕の中で落ち着いてまた眠っていた。
つまるところ、俺は赤ちゃんからの再スタートを切ったのだ。
やったね、人生リセット強くてニューゲームだね!
……なんて思ったのは一瞬でした。
なぜなら、そこからは羞恥心との長く苦しい戦いが待っていたからである。
「アズハ~まんまの時間よ?」
「アズハはいいこでちゅね~」
「あら、おもらししちゃたのね」
…………何も言うまいて。
という訳で、そこの辺りは大きくカットという名の割愛をさせていただく。
それより後の事を話すべきだと思うな、うん。
俺の生まれた家庭はリーベル家といい、コロニー間の中ではそこそこ裕福な家庭だったらしく、家……というより豪邸には複数人のお手伝いさんがいた。
歩けるようになって屋敷内を探索していると、とても好意的に話しかけてくれたものだ。
突然抱きついて拉致して着せ替え人形にするのはどうかと思うけどね。
「アズハさまぁ……次はこのドレスぅ」
「あら、アズハさま涙目っ……カワイイ」
「はっ!写真……報道用の撮影カメラ持ってこーい!!」
「(……カエリタイ)」
早くここから出してくださいよぉ……状態の涙目の俺をもてあそんだあいつらは許さんが。ぜったいだ。
それと、お気づきかと思うが、俺の今生の名前はアズハ。アズハ・リーベルという。
はは、なんだか女の子みたいな名前だなあ……なんて初めて聞いた時は思ったものだ。
母親もよく女の子の服について話していたので、まさかな……とは思っていたけど。
その行動は一応だった。一応確認のため、絶対ありえないと思いつつも触った一歳初めのこと。
(拝啓神様
性転換するなんて聞いてませんでした)
絶叫したのは言うまでも無い。
そこからはまさしく苦節というにふさわしいものだった。
なにせ前世は大人と呼ぶべき年代だった男が、今や箱入りお嬢様をやっている。
もちろん『俺』というのは禁止されているため、対人的には『私』という一人称を強制されていたりする。
口調はなるべく子供っぽく話しているけど……これもなかなかむずかしいのだ。
なにせ、十数歳の子供が流暢に、それも男口調で話しては気味が悪いだろう。はずかしくても我慢している。
そしてまあ色々あってこのジュニアスクールに至るわけだ。
え?説明不足だって?……子供の成長記録を見て何が楽しいんですかね?
ああそういえば、原作キャラとも会うことが出来たんだった。
俺の生まれたコロニーはサイド1にある3バンチコロニー、通称エデンである。
このコロニー群はソロモン要塞建設地に近い事もあり、どちらかと言えばジオン寄りの人々とよく出会う。ちなみにここまでで3人と出会った。
彼らの名前は──
「アズハちゃん!……アーズーハちゃーん!!」
「……へっ?!」
「へっ?じゃないよ!
ほら、ハゲのつまんない授業も終わったんだから帰ろ!」
数分程固まっているとクラスメイトが話かけてきていた。
なかなかに強引な彼女は俺の手を強くひいて席を立たせる。
(イタタタ、待って、この子何故か俺をつれ回して遊ぶ子じゃん)
この子はいいんだけど、この子のお姉さんたちはうちの
(い、行きたくない!
こ、ここは何か言い訳をつけて離脱だ。びば離脱!!)
「ちょっ、いや、あの、ほほほら、私ちょっとやることが……」
「え、でもアズハちゃん朝すぐ帰るって言ってたよ?」
(え?言ってませんけどそんなこと…………?)
不思議に思って首をひねると、女の子の後ろ後方、窓の向こうの木に女性がぶら下がっているのに気がついた。
(あれ、なんでここにうちの使用人がいるんですかねぇ?)
「どうしたのアズハちゃん
すごいあせだよ?大丈夫?」
心配する少女を横目に使用人を睨む。
しかし返ってきたのはぐっというサムズアップ……何が言いたい。
「あ、そういえば、アズハちゃん家のおてつだいさんイイ人だね!
朝話したんだけど、とっても……」
(おまえか!!!!)
その女性は満面の笑みを浮かべ木から離れていった。
「まっ!」
「ちょっと、アズハちゃん?
聞いてる?ほら」
おねえちゃんたちがきてるよ?
(オワタ)
「じゃあね!アズハちゃん!」
「……ふぁい」
大きく手を降る彼女に小さく手を振り返す。
俺は疲れている。
なにせかれこれ三時間はあのお姉さま方に付き合わされたのだ。
(疲れた……早く帰って寝よう)
やつれた顔を手で隠し、遠い所を見つめながら送迎車のドアを閉めるのだった。
「おかえりアズハ」
「「「おかえりなさいませ」」」
「ただいま」
家に帰ると母さんと使用人がいて、いっせいに出迎えの声がかかる。
ほとんどの人間が揃っているようだが、残念ながらあの使用人は出掛けているようだ……逃がさんぞ。
「あら、ずいぶん疲れているわね
ふふ、お友達とずいぶん遊んだようね」
(いえお母さま、遊んだのではなく、遊ばれたのです
ふくしゅーまったなしです)
「おや」
ふつふつと怒りと復讐の炎に燃えていると、横から恰幅のいい男が寄ってくる。
この人はバルドー・リーベル、つまり俺の父にあたる人だ。
「おかえりアズハ
さあ、元気な顔をお父さんに見せてごらん」
「うん、ただいまお父さま」
疲れているが、両親には笑顔を見せて挨拶をする。もちろん二人とも笑顔で返してくれるし、そのあと抱き締めてくれる。
いつでも心配かけないよう笑顔でいる、これは産まれてすぐに決めたことだ。
使用人の言葉を聞いたからそう思ったのだけど、どうやら両親にはなかなか子供が出来なかったらしい。
医師に見せても異常はなく、特に問題も無いというのに。
そう、俺は両親にとって長く長く悩み、それでも望み続けた子供だったのだ。
なのに産まれたのは過去を持つ歪んだ子供である。両親にはこのことを伝えてはいないが、聞いてしまったらきっと……俺の中にあるのは愛情ではなく、罪悪感のような歪な感情だった。
だからこれは贖罪なのかもしれない。
「ふふ、アズハはいつも元気ね」
「私達の娘だからな」
本当にごめんなさい。
転生主人公にも家族はいる。
もちろんネーム付きの家族じゃなくて、原作で言うところのモブキャラたちだったとしても。
自分としては飛ばそうかとも思ったけど、そんな主人公の背景は無視してはいけないと考えたのですよ。
ガンダムの世界は人が死にすぎるから……なんて