第二次月戦争の跡 アストライアー編   作:まぐねたー

11 / 16
居場所

 勢いで彼等から逃げ出したものの、これからどうやって旅を続けるかずっと考えていた。

(とにかくお金がいる。旅に出たいけど、早く逢いたいけど働かなくちゃ。でもどこで働けば良いのかな?身分を証明する物がない。身の潔白を証明する物がない。人間である事を証明する物がない。証明する為に諦めて彼等の元へ帰る?)

 暗い細道に隠れていると窓から人の話し声が聴こえてきた。

「捕まった人造人間が逃げ出したって知ってる?」

「うんうん、ニュースで見た。」

「ここから結構近いよね。」

「見つけちゃったらどうしよう?どうやって捕まえるんだろう?」

「麻酔薬が効かないらしいよ。だから手足を使えないようにするしかない。」

「でも骨折しても走れなくはないよね。痛みもあんまり感じないらしい。」

「最終手段は手足を落とすしかないよね。」

「そういえば逃げた子も手が無いんだっけ。足も無ければ良かったのに。」

(…そんな…)

「それに人造人間が大好きな大富豪がいてね。変態なんだよそいつ。手足を高く買ってくれるんだ。だから捕まえたら懸賞金と合わせて双方から大金が貰えるんだよ。ああ俺も捕まえたいな。」

(私達は物じゃない…!)

「そんな簡単に捕まるもんか。人間の形をした化け物だぞ?罠を大量に買って数人がかりで捕まえるから、金もいるし分け前が少ないだろうよ。捕まらないと損するだけだよ。」

 数時間、震えて膝を抱えて動けなくなっていた。誰にも見つからないように土色のボロ布を深く被り、鉄の腕を隠す物を探した。しかし大きな右腕を覆う物が無かった。だが悪戯に付けられたアンバランスな細い左腕は何とかなりそうだ。寝ているホームレスを物色して汚れた手袋をくすねた。

(ごめんなさい…でもこれからは左腕だけは人に見せられる。シャツの袖も通るし手袋がある。)

 先程、ラルフの情報を印刷してくれた女性に泊めてもらうことにした。

「行く所がなくて…泊めてもらえませんか?」

「うーん…」

「…ダメですか?」

「うーん…別に良いけど…面倒なのは嫌だよ?」

「絶対にバレないようにします!泊めてもらう分働いて返します!」

「分かった。働くならなるべく影でね。」

「…ありがとうございます!!!」

「しーっ」

 親切な人達のおかげで貯金が増えてきた。

(次はどこに行こうかな?行き先でも仕事はあるかな?…もしなかったら自分の情報や体を売らないと…そんな事したらみんなが……いや、私は見られている。ずっと見られれば情報を知られる。あの忌まわしい研究所から、私が彼を目指して遠くへ歩けば歩く程、あの人達が死んでゆく…私を守ってくれた人達が、私に優しくしてくれた人達が、私に教えてくれた人達が…)

 あの場所で彼等の死体を山程見た。私に良くしてくれた人が死体になる瞬間が浮かんだ。それでもみんな同じ顔で見分けなど付かないだろう。

(私はアポロ君を見つけられない…)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。