そろそろ次の街への旅費が溜まってきた。従業員達は暖かくて「いつでも帰って来て良い」と言ってくれた。しかし深夜にインターホンが鳴らされ店長が出て行った所に何人かの人間が押し入って来た。
「お客さん、こんな時間は困りますよ。」
「調べさせてもらうぞ。何か隠してるのは知ってるんだ。」
二階の寝室からドアに耳を当てて聴いていた。
「なんでこんな時間に?どうしよう…どうしたら良いの?」
「こんな時間に来るって事は、白昼堂々出来ない事をするつもりなんだろう。君は逃げろ。殺されるぞ。」
「でも…みんなは?」
「俺達は大丈夫だよ。」
「…死なないでね!」
しかし暗い中に誰が潜んでるか分からないまま逃げ回る事は出来なかった。みんなを見捨てる事も出来なかった。裏口で息を潜めていると何度か銃声や打撃音が聴こえた。
(嫌だ…死んじゃ嫌だ…!)
何も物音がしなくなってからドアを開けると店員達は上向けになって死んでいた。
「あ…あぁ…」
額は血に塗れ潰れた機械が付いていた。
(…これは?そういえばみんな帽子や前髪で額が隠れていた。この機械は何?まさか…みんな操られていたから私の味方をしていたの?)
「ひっ、ひぃぃっ」
先程の思案など放り捨てて暗闇の中を走り出した。もう誰かが追って来るなんてどうでも良かった。荷物を背負って一目散に走って無人のレンタルショップで車をレンタルして方角も気にしないで街の出口へ。
(もう誰もいない所でいい。私の味方は居なくていい。一人で暮らせる所。もっと人の少ない所。)
朝になると自動運転で目的地に着いていた。
(はぁ、これからどうやって暮らそう?…ホームレスも良いかもね。この車で寝て…レンタル料金がいくらになるか分からないけど。近々借金もするかも…)
新しい町を散歩していると人の少ない場所なのに声をかけられた。
「よお、おねーちゃん。可愛いね。どこから来たの?」
「どこでもいいでしょ?こんな人の少ない町でナンパされるなんてね。」
「人が少ないから出合いもないんだ。君みたいな若い子が来るのは久し振りだよぉ〜」
「出合いならインターネットもオススメよ。じゃあね。」
「待ってって!おじさんの話し相手だけでも!お嬢さん名前は?」
「ミリアム。悪いけど私恋人いるから!」
「その名前聴いた事あるな。少し前にここに越して来た…」
「え?そうなんだ。偶然ね。」
「でもその子も声かけたんだけど彼氏がいるんだよな〜あっちも可愛いんだけどな〜」
「残念だったわね。」
「あ〜あの子にも同じ事言われたな〜…そういや君達、言う事も声色も同じだなぁ…」
「な、何言ってんの?偶然でしょ?」
「じゃあ会いに行ってみれば?僕も君達がどんな関係か気になるし。地図描いてあげるよ。」
「場所知ってるのね…ストーカーじゃない。」
「だって俺役所に勤めてるし!」
「…最低。」
「でも最近そのミリアムって子を探して男が二人来たね。一人は恋人でもう一人は付き添いだとか…」
「も、もういい。情報漏洩しなくて良いから。」
「早くしないと彼氏取られちゃったりして…取られちゃったら俺のとこに来て…」
話を聴かないで描かれた地図をかすめ取って小走りで向かった。