第二次月戦争の跡 アストライアー編   作:まぐねたー

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新しい生活

 私はここで別の名前で呼ばれる様になった。

「ライアで良いかな?でもライアだと嘘つきみたいだし…レア?レイア?」

 どれもピンと来なかった。親しみ深い名前はもう自分の物じゃない。

「もしかして落ち込んでる?」

「何でも良いよ…」

 リビングを後にして勝手に家事を手伝う事にした。何かして現実を忘れたかった。それはエンディミオンと呼ばれる彼も同じだった。非雇用の人手不足の危険な仕事を渡り歩いているらしい。家に居るのは寝ている間だけ。仕事がない時はこの家の外で警備をしている。先程この家の前で追い返された時の様に。

「またクビになってしまった。仕事は人並み以上に出来ているが、やはり信頼されていないらしい。」

 珍しく昼に帰ってきたエンディミオンはミリアムに理由を述べた。

「無理して働かなくて良いのに。」

「働く以外に何の役割がある。」

「貴方、ラルフと同じなんだよね?私と仕事、どっちが大事なの?戦時中は仕事の方が大事って言ってたっけ?」

「それはもちろん戦時中だったからで…」

「今はもう戦時中じゃないでしょ?」

「それは………いや…仕事の方が大事だ。どんな事があろうと覆らない。」

「そう…」

「それにあの娘は追い出されてすぐに捕まった。目を付けられてる。仕事がないなら見張りをしなくては。」

 エンディミオンは作られた夕食も外で見張りをしながら食べると言って出て行ってしまった。

 朝が来て目が覚めた。緊張して全く寝れなかった。エンディミオンも徹夜で眠っていたが眠たい目を擦り朝支度をした。ラルフと一緒に朝ごはんが食べたかったから。冷蔵庫を開けて材料を切って、焼いて…

「あれっ起きてたの?」

「わああっ!お、おはよう…」

「朝ごはん作ってたんだ。」

「う、うん…で、でも寝ぼけて作ったやつだから!食べなくて良いから!」

「えー?ちょっと味見させてよ。」

「絶対美味しくないって!」

「普通に美味しいけど?というか…ミリアムが作ったのと同じ味だ。」

「えっ?…えーっと…口にあったみたいで良かった。」

「でもなんでこんな朝早くから。昨日警備してたんだろ?ちゃんと寝たのか?」

「うん。2時間くらいね…」

「全然寝てないじゃないか。」

「うん…でも…」

「ちゃんと寝ないと家事もドジるぞ。」

「大丈夫。ドジらないくらい簡単なのやるから…」

 前を向かずに倉庫に行こうとして思い切りシャッターにぶつかった。

「あーあ。見てらんないよ。」

「大丈夫…私遺伝子操作されてるから…長時間労働も耐えられるから…」

 モップに支えられながら掃除している。

「おーい、改造だのされてたって寝ないと人間は死ぬぞー

…聴こえてないな。倒れてもしらないからな。」

バタッ

「あ、倒れた。おい!しっかりしろ!」

「うーん…ラルフ…ごめんなさい…」

 朦朧としながら呟いた。

「あんなに泣き疲れたのに寝ないで家事までやろうとするな。俺の為に働きたいなら心配させるなよ。」

 (寝ちゃったみたいだ。腕に抱えてベッドまで運ぶか。義手と機銃は少し重いな。それで疲れに来て倒れたのか?エンディミオンと筋トレしてて良かった。)

 廊下にエンディミオンが居た。

「それ、重いんじゃないのか?」

「いや、別に。」

「俺に代わって。」

「なんで?もうすぐそこなんだけど。」

「そうだけどさ、お前はそんなに可愛がらなくて良いよ。誤解されたらどうするんだ。」

(相変わらずだな…)

 

 瞼の向こう側が眩しい。私は揺られながら両腕に抱えられて運ばれてる。暖かい胸に身体を寄せてる。ラルフ…私なんかにこんなに優しくしてくれるなんて…。

「ありがとう…」

「どういたしまして。」

 目を開けるとそこにはエンディミオンがいた。

「きゃあっ!なんで貴方が!?ちょっと、離して!貴方の義手硬くて痛いのよ!」

「随分だな。運んでやったのに。」

「余計なお世話よ!ラルフがお世話してくれてたはずなのに。」

「重いから俺が代わった」

「なっ…!それって貴方の主観でしょ?ラルフがそう言った訳じゃないわよね?」

「さあね。」

「あんたってほんと嫌な奴!ラルフと同じ性格じゃないの?」

「…」

 エンディミオンは目線を逸らし、うつむきながら怒ってた。

「私の何が気に食わないのよ…」

「「嘘の記憶に騙されるな」って伝えたのにまんまと騙されてるって所。」

「騙される…?」

「そうだ。惑わされてる以前に恋人なんかいないんだよ。全部嘘っぱちだ。」

「騙されたくなかったからこうして確かめに来たのよ。貴方だってそうでしょ。」

「それに…」

「それに?」

「俺は、…ラルフは本当はミリアムが好きなんだ。なのにお前は…似てるからラルフを惑わすかもしれない。そんな事になったら二人は…」

 …ん?それって…

「そんな事言ったって…貴方はどうなの?私と違うの?」

「…もういい。」

 外に出て行ってしまった。

「呆れた。どうしてあそこまで冷たくするのかしら。」

「アストライアー…あいつの事は気にすんな。」

「あいつは本当に貴方の性格を移されたの?全然似てない。」

「移されてるよ。ミリアムを探してる間は俺とあいつは本当に仲が良かったし以心伝心だった。あいつもかなり苦しい思いをしてるんだ。そのせいで冷たい性格になってしまった。嫌いにならないでやってくれ。」

「私、彼の事何も知らない。同情出来ない。ねえ、話を聴かせてくれない?」

「ああ、分かったよ。そう、あれは3ヶ月前…」

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