鉄の義手を少年と繋いで冷たく静かな廊下を二人で歩いていた。
「貴方達って女の子が珍しいの?」
手を繋いだ少年に訪ねた。
「女の子っていうか女の人。見た事なくって…みんな書物でちょっと知ってるだけ。」
「お母さんは?」
「お母さん?」
「貴方を産んだ人よ。」
「小さい頃の事は覚えてないよ。」
(まだお母さんに甘えたい時期でしょうに…)
「貴方何歳なの?」
「8歳だよ。」
「8歳かぁ…背が高いのね。」
多分140cmくらいあるかもしれない。
「そういえば名前を訊くのを忘れてた。名前はなんていうの?」
「f-1674」
「えっ?」
「f-1674だよー」
「それは番号でしょ?」
「番号だけど名前だよ。」
「ええっそんなの…機械や囚人みたいじゃない。そんな名前呼びたくないよ。」
「え?何で?6番目に造られた型で1674人目だもん。分かりやすいでしょ?」
「そんなに沢山居るの?」
「失敗作も居たから。死んだ人も沢山。僕は選抜されたんだ。すごいでしょ?」
「そう…でも番号は名前にならないわ。だって名前って言ったらジェームズとかマイケルとか色々あるでしょ?」
「何それ?それってどういう意味があるの?」
「意味なんてないの。そっちの方が親しみやすいでしょ?」
「うーん…でも短いのは良いね。」
「そうでしょう?」
「あ、ここの会議室使ってないみたいだよ。」
「じゃあ、ここで話しましょうか。」
少年はレディーファーストでドアを開けて通してくれた。二人共中に入るとドアを閉じた。こちらを振り返ったが脱力して壁にもたれ掛かった。
「あー、お腹空いたなあ。」
「あ…何だか私も。せっかく場所を見つけたのになぁ。」
「じゃあごはん持ってきてここで食べれば良いよ!」
「そんな事出来るの?」
「うん。場所は自由だから。」
「じゃあそうしましょう。そうだ。早く貴方の名前を考えなくちゃね。帰って来るまでに決めちゃおうかな。」
「別に無理して考えないでも良いよ?そうだ。よーし!じゃあどっちが早く帰ってこれるか競争だー!」
「はいはい。ごはんこぼさないでね。…って女子寮は!?」
廊下の遠くの曲がり角で少年が気付いて「3階だよー!」と言って見えなくなってしまった。
(なんて足の速い…)
競争はどうでも良かったが女子寮を探して急いで階段を駆け上がった。しかし義手が重くて少し疲れてしまった。
(はぁ。不便ね…)
どうやらそこには倉庫もある様だった。向かいの防火扉を開いた。やはりそこにはモデルの様に美しい女達がいた。
「あら、おかえり。遅かったじゃない。どこで道草食ってたのよ。」
「す、すみません…」
「食料の運搬と配膳は貴方の仕事でしょう?」
「お姉ちゃん。お腹空いた。早くして。」
「あ、はい…」
(これから苦労しそうね…)