重い防火扉の向こうの女子寮には私と同じ顔で同じ服装の女達が沢山居た。
「ちょっと!何ボサッとしてるのよ。早く運んできて。」
「は、はい。倉庫ですよね。でもあの、倉庫だったら替えの義手もあるんですか?この義手重くて仕事がしづらいので付け替えたいんですけど…」
「は?何言ってるの?アンタは非力で、愚図で、役立たずだから腕を付け替えられたのよ。失敗作を機械化で優秀に出来るかのテストでね。」
「え…?事故じゃないの?…そんな理由で?」
「今から重い物を持ってこいって言ってるのにアンタバッカじゃないの?文句言ってないでその新しい腕でさっさと仕事をしなさい。」
「うふふ。大丈夫よ〜動き回ってればそのうち身体もついて来るわ。」
「ノロノロ歩いてると足まで取り替えられるわよ。あはははは!」
「ひっ…」
(ひどい…そんな勝手な理由で腕を付け替えられたの?私の意思も関係なく?)
「テスト中なんだから沢山仕事をあげて試さなきゃねー」
疲れも無視して走って食料を運び、配膳を終えると逃げる様に会議室に戻った。
「お姉ちゃんおかえり。遅かったね。」
「ただいま…うぅっ…」
「お姉ちゃん泣いてるの?ねえどうしたの!?いじめられたの?」
「うん…」
「な、泣かないでっ…えっと、えっと…僕もいじめられてるから、辛いのお姉ちゃんだけじゃないよ!いつか見返せる様になるんだ。お姉ちゃんも一緒に頑張ろうよ!お姉ちゃんにはその腕があるから大丈夫だよ!」
「励ましてくれてありがとう。だけど私この腕は嫌いなの。でもこの腕じゃなくても役に立てるって証明すれば普通の義手を付けてくれるかもしれない。私も頑張るね。」
「あっ、ごめんなさい…その腕かっこよくて強くて羨ましいなぁって思ってて…僕応援するよ!お姉ちゃんならきっと出来るよ!」
「もう大好き!私も貴方の事応援するよ!」
思いっきり抱きしめた。
「お姉ちゃん痛い…よ…」
「あっ!…やっぱりこんな腕じゃ…」
「違うよ!僕が我慢すれば良かったんだ!ごめんなさい。泣かないで…」
抱きしめられなくなった私に今度は少年が胸に飛び込んできて抱きついた。
「わっ、ちょっと…もう…」
(あったかいな…どうしてこんなに必死になってまで私を励ましてくれるのかな?自分もいじめられてるから?それともお母さんが居ないから甘えたいのかな?でも確かに私は勇気付けられてる。この子は私の心を明るく照らそうとしてる。そうだ。この子の名前は…)
「思いついた。アポロっていうのはどうかしら?貴方の名前よ。」
「アポロ?」
「太陽の神様…かな。貴方って暖かくて明るいから。」
「神様…?」
「最初は天使みたいだと思ってたけど貴方のイメージはもう太陽で固まっちゃったのよね!普通の人名も考えてたけどどれもしっくりこなくてね…それにさっき気付いたけど貴方ってずっとスナイパーライフルを持ってるでしょ。だから遠弓の名手のアポロかなぁって…ダメ?」
「別に良いけど…実感湧かないなぁ。」
「これからよろしくね!アポロ君!」
「うん…よろしく。」
「そうだ。貴方にメモを渡したお兄ちゃんの事だけど…」
「もう戻る時間だよ。」
「そっか…じゃあ明日もまたここに来れるかな?」
「うん!良いよ!」
「じゃあまた明日!」
女子寮へ歩き始めたけど足取りは重かった。
(戻りたくないな…)