重い足で帰ると大人達が食事の片付けをしている所だった。
「あっ、ようやく帰ってきた。どこ行ってたの?これも貴方の仕事なんだから。」
「すみません。私の仕事っていくつあるんですか?」
「炊事洗濯掃除に片付け。あと日用品と食料の運搬。」
「はあ…身の回り全部の仕事ですか?」
「そう。その腕があるなら大丈夫よね?」
「いや、力仕事は出来ると思いますがこの指では細かい作業は難しいかと…」
右手は指紋がなく滑りやすかった。そして左腕は爪が鋭かった。加えて両腕ともとても握力と腕力が強くて調節が難しい。
「だからそれでどれだけ出来るか見せてよ。だけどそれでミスしても大目に見る事はしないから。腕のせいにしないで出来るだけやって。」
「あの…私は力仕事より普通の義手で仕事がしたいんです。全ての仕事を効率良くこなすならもっと一般的な義手の方が良いと思うんです。この爪では洗濯物を引き裂いてしまうかも。」
「滑りやすいのは慣れで何とかなるでしょう。左腕はそうね…質力が見たいから試験的に付けたらしいし、力仕事をメインにしてもう少し様子を見てからね。」
「はい…」
結局どんどん仕事を任され、質問したり間違えて怒られながら仕事を終えた。
(疲れた…このままベッドに倒れたい。)
三段ベッドの窮屈な2段目で隅に座ってうずくまった。
(これからどうなるんだろう?もし役立たずで足を変えても使い物にならないと判断されたら?嘘の申告でそう思われたら?私生かして貰えるのかな?)
不安になってきて腕で自分の身体を抱いた。しかし鉄の冷たい義手は安らぎを与える事なく、更に恐怖を与える物だった。
(涙が溢れそう…誰か助けて…)
疲れ過ぎと不安でなかなか眠れなかった。
朝、警報のような目覚ましで叩き起こされると急いで顔を洗って歯を磨いた。階段を駆け下りて食料を持ってエレベーターに乗り、寮へ戻り朝食を作った。と言っても冷凍食品を温めたりスープを作ったり配膳台に乾パンを置く簡単な作業だけだ。
朝食を作っていると小さな丸い窓から朝日が差し込んできた。その真っ直ぐな光は黄金色で暖かかった。見惚れてスープを焦がさないようにしていたがなかなか目が離せなかった。外の世界に飛び出したい気持ちが強くなった。
「おはよう。ああ、今日も変わり映えのない食卓。」
「おはようございます。はい、どうぞ。」
女性は渡したスープを一口飲むと一言。
「美味しくないわ。」
「飲み飽きているからでは?」
「どうかしらね。料理人の腕が良くないのかしら。」
意地悪そうに笑ったのを無視して調理の後を片付けた。自分もスープを一口飲んだが風味が悪くあまり美味しくはなかった。調味料が塩くらいしかないからどうしようもない。