「それにしても驚いた。こんな所にアストライアーがあるなんて。何であるのかしら?」
「んーと確か、海から引き上げた機械のデータに設計図が入ってたんだって。最近戦闘機も攻めて来るようになったから作ったんだって。」
「海から引き上げたって何の機械?」
「ヒュペリオン…だっけ?」
「えっ…?衛星の?」
(待って。つまり整理すると…私はデータがあったから逃げた場所が特定出来て捕まったとか?でも私は元々ここに居て…いつからここに…?えーっと…ぼんやりとしか思い出せない。)
「お姉ちゃん?」
「ああ、ありがとうアポロ君。物知りだね。どんどん頼っちゃおうかな。」
「えへへ…僕、本読むの好きだから。将来医者になってみんなを「直して」あげるんだ!お姉ちゃんが知りたそうな事も調べてるんだ。」
「本当にありがとう。大好き!」
「僕もお姉ちゃん大好きー!」
次の日、男子達も数日間試験があるらしく寮には入れなくなっていた。その日はただただ黙々と重労働をこなした。
(今試験をしてるって事は男子も同じ様な事してるのかな?何してるんだろう?)
掃除をしていてもあの時の失敗作の少年には会わなくなった。アポロに会えないだけで一日が二日分くらい長く感じた。
三日後、男子寮に行くと明らかに人が少なくなっていた。丁度アポロが廊下を歩っていた。
「あの…アポロ君。この区域を掃除してた人は?人も少ないみたいだし…」
「あっお姉ちゃん。試験中に敵が攻めて来ちゃったから減ったんだよ。あの人は身体が弱かったけど使える分だけ臓器を他の人に移したよ。」
「えっ?それって…」
「もう居ないよ。」
「そんな…」
本当に道具のようにバラバラにされて殺されてしまうなんて。
「1番弱かったから。怪我をした強い人を生かす為だから別に悪い事じゃないよ。」
「アポロ君まで何言ってるの!?そんなの間違ってるよ!あの人だって生きたかったはずだよ?
生かしてもらえて嬉しいって…」
アポロが寮に戻ると兄達が入り口で待っていた。
「お前いつまで甘えてんの?」
「うぅ…」
「自信がないから強い兄弟に守ってもらおうと思ってんだろ?」
「もう一人で戦えるようにならないと死ぬよ。俺はお前を守って死ぬなんて嫌だから。近くに寄って来るなよな。」
「…僕…嫌だよ…一人ぼっちは嫌だよ…!」
座って休憩してるとアポロがとぼとぼ歩いてきた。
「アポロ君。どうしたの?」
「…お姉ちゃん!」
駆け足で近寄って泣きついた。
「僕、失敗作かもしれない…どうしよう、どうしよう…」
「どうしたの?何かあったの?」
「実戦の時にね、失敗作だから身代りになれって殺されそうになった。いつか認めてもらえるって信じてたのに…だから僕は一人で戦わなくちゃダメだって。でも僕は出来ないから…」
「酷い…大丈夫。アポロ君は大丈夫。アポロ君は頭が良いもの。身体はこれから成長するから。」
「あまりそいつを甘やかすな。」
「何で?」
「甘えているから弱いんだ。」
「じゃあずっと泣かせてろって言うの?」
「自分で泣き止むさ。」
「そんな風に冷たくしたら余計泣いちゃう。
私には貴方がわざと泣かせてる様に見えるけど。」
「…これだから女は。」
実戦で生き残れたのだからアイン君はかなり優秀なのかもしれない。
「お姉ちゃん?」
「あれは嫉妬ね。」
「?」
「女の勘よ。」
「何それ?」
「アポロ君には仲の良い兄弟は居ないの?」
「うーん…. あんまり…」
「そっか…」
「大好きだったお兄ちゃんはここから逃げちゃったから…」
「ねえ、大好きだったお兄ちゃんの事教えてくれない?メモを渡してくれたから知りたいの。」
「うん。お兄ちゃんは本当にお兄ちゃんで僕と遺伝子が違うの。緑色の瞳だからみんな区別出来て、頼ってたし沢山可愛がってくれたんだ。攻撃から何度も弟を庇ってた。強いのに弱い奴を残して死ぬような事はするなってよく怒られてた。だけど戦いの中で沢山弟達が死んでおかしくなっちゃった…」