第二次月戦争の跡 アストライアー編   作:まぐねたー

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旅の始まり

(それにしても随分飛んだなあ。ゾードムはかなり遠いみたい。人間の居住可能地域は地球の8%だしそのほとんどがゾードムなんだからこんなに離れているはずは無いんだけど…)

 追われている恐怖から全速力で飛んでいたが元いた場所から離れれば離れる程孤独になっていった。マップは見ていたが自分の行き先には味方がいるのかすら定かではない。

(怖い。寂しいよ。心も身体も冷たい。こんな時、アポロ君がいてくれたらな。明るくて暖かくて本当に太陽みたいだった。少しおかしくなってしまった所もあるけど、外に出ればきっと直ったはずなのに。無理矢理連れて行けば良かったのかな。

 出る時にやれるだけの事はやったつもりだけど無意味だったかもしれない。基盤を剥がしたから飛んだ方向は分からないと思うけど、基盤を剥がした時も監視カメラにはある程度映ってるだろうし、これに乗って逃げたことも分かってる。もし基盤を剥がしても無駄だったら…私の場所もバレてるかもしれない。…ずっと追いかけて来てるかもしれない。早く降りて逃げないと。)

 地平線に僅かに光が見え始めた。街に近付いてきたようだ。

(ようやく見えてきた。それにしてもどこに降りたら良いんだろう?こんな戦闘機を街の近くに停める訳にはいかないし、遠くに停めて敵に見つかるわけにもいかないし…もし私達の敵に見つかったら…)

 聞いた話を思い出した。

「彼等は連行する為に私達を無力化しようとするの。でも彼等は私達の身体について知らない。私達に対して手加減の仕方が分からないから結果嬲り殺しにされるの。だから絶対捕まっちゃダメ。」

(って…私はきっと連行とか保護はしてもらえないだろうな…この腕だもん。絶対警戒するよね………絶対に殺される…!

 この怯えが殺意となって、争いを生む。それは分かってる。だけど生き延びる為には手段は選べない。彼に逢えないなんて死んでも死に切れない。殺られる前に殺らなくちゃいけない…

 いや…絶対に見つかっちゃいけない。殺さない為にも。これから生きていく為にも。)

 

 着陸するとコックピットをこじ開け、外に出ると爆薬をセットした。

(これで墜落した事になると良いんだけど…)

 急いで荷物を持って駆け出すと爆発して破片が自分を飛び越して目の前に落ちて来た。

(あ…危なかった…もう元の形も分らなくなっちゃったけど換金してもらえるかな?でもアストライアーと知れたら多分大事になるだろうし…これで良いんだよね。)

 少し歩くと地面と同じ土色のボロ布が落ちていた。

(汚い…元の色も分からない。でも使えそう。)

 羽織っていた軍服をしまって、ボロ布を被って擬態出来るようにした。

 

 アストライアーを降りて歩き続けて5日程経った。雨と砂煙で髪はボサボサになり服も土まみれになった。持ってきた食料は底を尽き水も無くなった。それなのにお腹も空かず喉も乾かなかった。

(思ったよりも遠かった…大分歩いたはずなのに…変だなぁ。もしかしてもう死んでるとかないよね?)

 

 町に着いたが壊れた機体を回収してくれる業者が見つからなくて建物の影にへたり込んだ。

 しばらくすると警官の一人が駆け寄って来た。町を監視していた警察はホームレスではなく街の外から来た者だと分かったようだ。

「おい!大丈夫か?何があったんだ!?」

「う…うぅ…」

 信用してもらえるか、敵と思われないかと言葉に詰まった。

「話せない程危険な事なのか?取り敢えず安全な所に行こう。」

 差し出された手に義手を伸ばした。

「ひっ!?…鉄の…腕…?」

 

 自動車で宿舎に連れて行かれ、シャワーを浴びさせてもらった。

「わぁ…」

 シャワーから出ると彼は挨拶もなく感嘆の声を漏らした。

「いや、やっぱり綺麗だなぁと思って。あんなに汚れてても何故か気品があるように感じてさ、もしかしてどっかから逃げてきたお姫様なんじゃないかと…」

「お、お姫様!?」

「君ほど美しい人間は見た事がないよ。いや、口説いてるというより本当に。」

「私が元いた所では同じ顔の人は沢山いるけど…」

「えっ!?それってどういう事?君はアンドロイドって事?」

 その時お腹が鳴った。

「…お腹空いた。」

「今ごはん用意するね。」

「何から何まですみません。」

「警察は迷子の保護も役割だからねー」

「迷子って…子供じゃありません!」

「じゃあ君幾つ?」

 そういえば自分の歳を知らなかった。何かないか荷物を探ってみるとドックタグがあった。

「えっ…?」

「どうしたの?」

「17歳…」

「じゃあやっぱり子供だね!」

「えっ!?そんな…何かの間違いよ!誰か別の人のとか…」

「見た目的には合ってると思うよ。どこかに同じ番号が二つ書いてないかな?あ、ごはん食べてからね。」

 ごはんを食べつつ考える事にした。

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