サブタイトルだけで本編の方の修正はないです。
エネミーに警戒しながらメルトリリスを追いかけること十数分。
ようやく追いついた時にはあのイギリス風の街並みから離れた辺境にたどり着いていた。
「あら、よく追いついたわね、人形。そういう類の礼装でも持ってたのかしら?
……というか、その大切そうに抱えている右腕はなに?」
どうやら本気で引き離すつもりだったらしい。そして問いかけられたのは私の腕の中にある『彼』の右腕のこと。
……彼女から問いかけられたということは、発言してもいいと判断してよいのだろうか? 契約を破るとどうなるのかわからないため、恐る恐る口を開く。
「ここに来る前に、私を助けてくれた人の一部、だよ」
さっき少し無理をしながらメルトリリスに懇願したことである程度声帯の衰えも改善してきたらしい。まだ少し喉に引っかかる感覚が残っているが、これなら普通のコミュニケーションができそうだ。
「死体の一部を取ってきたってことかしら? って、いえそんなはずはないわ。
この世界はすべてデータでできているし、ムーンセルの管理下で死ねばその肉体はムーンセルによって削除される。死体だろうと生きてる人間の身体を切断しようと、なんの処理もしていない腕だけが残るなんてことはないはず……」
「そういわれても、現にこうして残ってるわけ、だし……」
「身体の方もそうだけど、本当に貴女謎だらけね。どうにかならないの?」
「私が一番知りたいです……」
「まあ私には関係ないことだろうし、追々わかるでしょう。
あと、抱えていたいのならそのままでもいいけれど、アイテムストレージに保管しておいた方が安全じゃないかしら?」
「…………あ、そっか」
「……冗談でしょう?」
本気で呆れられてしまった。
ただこれには一応理由があるのだと弁明したい。一応アイテムストレージの存在は知っていた。ただ最初のうちは心のよりどころとして抱えておきたかったから使わなかっただけで、そのあとはいろいろありすぎて頭の中からぽっかり抜けていただけなのだと!
ただそれを口に出すわけにはいかない。
そこに、こちらを見下すようにメルトリリスは不敵な笑みを浮かべる。
「もしかして、ただのお間抜けさんってことでいいのかしら、人形?」
「ちが……――っ!」
反射的に浮かんだ言葉を口を塞ぐことで飲み込む。その行動にメルトリリスは少し残念そうに肩をすくめる。
「残念、私の発言を否定してくれると思ったのに。頭の回転は速いのね」
あ、危なかった……やっぱりさっきのは契約違反を誘うものだったようだ。
「あ、私の聞きたいことは聞けたし、もう喋っちゃだめよ?」
そしてすかさず発言を禁止するメルトリリス。手際が良すぎて逆に感心してしまうレベルだ。
だが、まだすべてのコミュニケーション手段が奪われたわけでない。
『彼』の右腕を丁寧にアイテムストレージに保管した後、見ろ、と言わんばかりにメルトリリスに突き出したスケッチブック。そこに書かれていることを見たメルトリリスは眉をひそめた。
「『ここはどこ? SE.RA.PHじゃないの?』ですって?
……そういえば筆談を禁止するのを忘れてたわね」
『条件の追加は反則!!
これ以上追加されても守る義務はないと主張する!』
「それ、私が提示した条件2の『抵抗しない』に引っかかりかけてるの気づいているのかしら?
まあいいわ。どこまで制限してもあれやこれやと私とコミュニケーションを図ろうとしてくるだろうから考えるだけ無駄なんでしょう?
筆談なら私が無視すればいいだけだし好きに書いてなさい」
ため息をつきながら筆談は了承してくれたメルトリリス。もし筆談がダメでもいろいろと別の手段は考えていたのだが、早めに彼女の方が折れてくれたのは助かった。
『それで、ここはどこなの? 聖杯戦争はどうなったの?』
「……………………」
早速無視された!?
まるで自分以外に誰もいないかのように歩いていってしまうメルトリリス。だが、こちらも負けじとメルトリリスの前に立ち、スケッチブックを見せつける。
そんなやりとりをすること数分、突然身体がふわりと浮かび始めた。
「っ!? っ!?!?」
それだけではない。さきほどまでは辺境とはいえちゃんとした街並みが続いていたはずなのに、突如としてグリッド線だけの空間が地平線の先まで広がっていた。
メルトリリスが何かをしたというわけではない。彼女はただ何もせずただこちらを眺めているだけだ。
ワイヤーに吊られたように不自然に浮いている私の姿を眺めて彼女は嗜虐的な笑みを浮かべている。
「てっきり叫んで今度こそ契約違反ってなると思ったのだけれど、残念ね」
『説明を! 早く!』
「布が邪魔で恐怖に強張る表情が目ぐらいしか見えないのは残念だわ。顔全部が見えてたらこのまま眺めていても退屈しなかったはずだもの」
『せ つ め い を は や く』
「ふふふ、聞こえないわよ人間」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!!」
時間たっぷりこちらをいじり倒したメルトリリスは至極ご満悦でその場に腰を下ろした。
そこに椅子のようなものはもちろん、身体を預けられるようなものは存在しない。しかし空気椅子のような無理をしている様子もない。
「この空間はわりと融通が効くのよ。座りたいときはそうイメージすればそれに適した状態で身体が固定される。その気になれば羽ばたく白鳥のように空を飛ぶこともできるわ。
逆に自分の今の状態をきちんとイメージしないと無重力に放り出されたようになるの。ちょうど今の貴女みたいにね」
メルトリリスのアドバイス通りに自分の今の状態をイメージする。当たり前の状態をイメージするというのは思ったより難しく時間がかかってしまったが、それまでの態度が嘘のようにメルトリリスは気長に待ってくれた。普段は親切な性格なのだろうか?
ちゃんと二本の足で立ち、そこからメルトリリスと目線が合うようにこちらも腰を下ろす。
「思っていたより飲み込みが早いのね。慌てふためく貴女を見ているのは飽きなかったのに残念だわ」
前言撤回。この人の性格は根っこからドSだ!
「さて、この空間のことは身をもって実感したでしょうし、貴女の質問に答えていきましょうか。
……その前に、SE.RA.PHという名を知っているということは、ムーンセル、ウィザード、サーヴァント、聖杯戦争……これらの単語についても知識があると見ていいわね?」
その問いに頷くとメルトリリスは一度息を吐き、間を置いてから改めて説明を再開した。
「ここは貴女の言う通りムーンセルによって作られた霊子虚構世界『SE.RA.PH』で間違いないわ。そして聖杯戦争も行われていた。
けれど、聖杯戦争は優勝者を決める前に幕を閉じたわ。この私が現れたことでね。
私は今いるこの空間とは違う場所で生まれたハイサーヴァントと呼ばれるイレギュラーな存在なのだけれど、そんなものをムーンセルは許容しない。だから本来ならこの空間に現れればムーンセルにバグとして消される運命だった。
でも私はBBのバッ……」
不意にメルトリリスの言葉が詰まる。まるでさきほど私が反論を飲み込んだ時のように。そして首を横に振りながら肩をすくめる。
「何でもないわ、忘れなさい。いろいろとあって私はムーンセルからの直接干渉は受け付けないようになっているの。
でも私がイレギュラーな存在であることには変わりないからムーンセルは聖杯戦争を一時中断し、私を消滅させることに全力を注いでいるというわけ。
そのためにすでに何体かサーヴァントが刺客として送られてきたけれど、悔しそうな表情を浮かべることしかできずなす術なく私に蹂躙されていたわ」
その時の相手の表情でも思い出しているのか、恍惚の笑みで当時を語るメルトリリス。
……というか、そんな人物と一緒に行動しているというのは、もしかしなくても自分はかなりヤバイことに首を突っ込んだのではなかろうか?
『ひょっとして、あなたと一緒に行動している私も削除対象に入ってる?』
「あら、今更気づいたの? まあ遠からずそうなるでしょうね」
頭が痛くなってきて思わず天を仰いだ。しかし太陽が励ましてくれることもなく、そこにはグリッド線がいっそ不自然に感じるほど存在感を放っている空だけが広がっていた。
……冷静に考えてみるとここにはオブジェクトどころか光と影という概念すら感じられず、お互いの姿だけが異様なほどはっきりと視認できている。まるで作成途中のポリゴン空間に自分やメルトリリスというアバターだけが配置されているかのようだ。
「この場所も私の影響で作られているものよ。『ムーンセルから干渉を受けない』という力が、ムーンセルの作り出した空間すら歪めているみたいね。
そして、この空間にいる限りムーンセルは内部を観測できても削除のような直接的な干渉をすることはできない。そういう空間が私を中心として展開されているみたいよ。私自身はそれを確認できないから、どこまで広がっていてどういう形状なのかということはわからないけれど」
つまり、少なくともメルトリリスについている限りは消滅させられる可能性はないということか。その代わりにこの空間から離れた瞬間消滅させられる可能性が高くなっていく気がするが……
先のことが不安になってうなだれていると、その姿にサディストの心がくすぐられたのかメルトリリスの目が怪しく光った。
「私から離れたらどうなるのか、実験してみましょうか?
まだムーンセルの削除対象に入ってないかもしれないわよ?」
「っ!」
彼女の表情は明らかによからぬことを考えている。ならば櫛波湊人という存在はすでに削除対象に入っている可能性が高まっていると考えた方がいい。そうでなくとも元々危険を承知でメルトリリスについていくと決めたのだから、ここで彼女に離れられるのは阻止しなければ……!
ただし首を振るわけにはいかない。それをすればメルトリリスに反抗したとみなされる可能性が高い。メルトリリスが実行に移さないことを祈りつつ布から覗かせた目で必死に訴えかけていると、彼女は本気で悲しそうな表情でため息をついた。
「そんな目で見ないで頂戴。調子が狂うわ。
そこまでしてでも離れるつもりはないようね。その態度を反抗と取るべきかどうか悩ましいところだけど、今回は良しとしましょう。
……他人を自分の思うように動かすというのは思っていたのより大変なのね」
ひとまず今回は許されたらしいことにホッとした。本当にこの人は油断も隙も無い。それほどまでに私がついていくのが嫌ということなのかもしれないが。
『ところで、あなたを中心に空間がこんな風になるなら、さっきの街並みはなんだったの?』
「それについては簡単よ。ムーンセルの力だけではこの空間に干渉することはできない。
そしてこの空間での動きづらさはあなたも体験した通り。私も最初は戸惑ったけれど、今ではこっちの方が心地いいくらいよ。たとえサーヴァントを送り込んだところでこの空間内では私より優位に立つことは不可能。どんな手練れでもこの空間では等しく私の経験値に変わるだけなのよ。
さすがにムーンセルもここままではダメだと判断したのでしょうね。だからまず空間を安定化させるために別のアプローチで空間を作ることにした、というところかしら。
その結果がさっき私たちがいた場所よ。あれはサーヴァントの固有結界によって作り出された空間。ムーンセル由来の力ではないからか、私がいても空間が歪む様子はないわね」
『固有結界?』
「それは知らないのね……
固有結界は心象風景を具現化する宝具。自分の有利なフィールドに相手を引きずりこむ大魔術、と認識しておけばおおよそ間違ってはないわ。
本来固有結界は別位相に作られるものだけど、ムーンセルは各々サーヴァントが作り出した固有結界をSE.RA.PHと同化させることで、サーヴァント側の負担を減らしつつ万全の状態で私を迎え撃つように切り替えた、ってところね。
苦肉の策にしてはよくやってる方だと思うわ」
つまり、先ほどのイギリス風の風景は誰かの心象風景ということか。メルトリリスの説明と自分の経験を合わせることで大体の状況は把握することができた。
ただ気になることが一つ。
『このまま戦い続けて、あなたが助かる未来はあるの?』
ムーンセルの勝利条件はメルトリリスの討伐であり、そのためにさまざまなサーヴァントを投入しているのはわかる。だが、メルトリリスの勝利条件は何なのかわからない。
このまま終わりのない戦いを自分が倒れるまで続けるしかないのだろうか……?
しかもムーンセルがメルトリリスの能力に対策を取り始めたということは、これ以降は苦しい戦いを強いられると考えた方がいい。
だというのにメルトリリスの表情に不安は感じられない。
「たしかにムーンセルが対策を練ってきたのは予想外だったわ。でも、さっきも言ったでしょう? これは『苦肉の策』って。
ムーンセルがサーヴァントの固有結界とSE.RA.PHを同化させたということは、その固有結界に影響があればそれはダイレクトにSE.RA.PH、果てはSE.RA.PHを作り出しているムーンセルにも影響を与える。そして私には相手の能力をドレインできる能力がある。
私の力で相手の固有結界の力を奪えば、その領地は私のもの。つまりムーンセルの一部が私のものになるのよ。
あとはそれをムーンセルを掌握できるまで繰り返せばいいだけ」
『何体ムーンセルがサーヴァントを配置したのかもわからないし、あんまり楽観視できないのでは?』
「何体サーヴァントがいるのかはある程度予想できてるわ。すでに一人始末して領域の規模は把握してるし、仮にすべてのサーヴァントがほぼ同じ規模で展開してるのならあと三体ぐらいでしょうね」
『でも、今私たちがいるのは固有結界の影響を受けてないところだから、そういうところもSE.RA.PHにはまだ存在しているってことだよね?』
「たしかに固有結界と固有結界の間は数百メートルほど離れてるから、サーヴァント全員を葬ればSE.RA.PHすべてを掌握、とはいかないでしょうね。でも、多めに見積もっても固有結界の影響がない場所は一割ほどよ。残り九割を占領できればそれぐらいどうにでもできるわ。
さらにムーンセルはSE.RA.PHと固有結界の同化だけで手一杯で、別枠で戦闘特化のサーヴァントを召喚する余裕もなし。
あと三体サーヴァントを葬れば晴れてムーンセルは私の物というわけ」
わからない部分もところどころあったが、それでも大まかな状態は理解することができた。
四体のサーヴァントのうち誰かがメルトリリスを討ち取ればムーンセルの勝ち。逆に全員を返り討ちにできればメルトリリスの勝ちというわけか。
さらにすでに一体にメルトリリスが白星をあげている状態ということは、メルトリリスが撃退不可能という難易度ではないことも証明済み。
決して楽な道のりではないが、可能であることは十分に理解できた。
『倒したサーヴァントってさっきのイギリスみたいな領地のサーヴァント?』
「いえ、あそこはまだ探索途中よ。
奪った場所はここと同じ空間になるから分かりづらいけれど、もう少し進んだ先にそのサーヴァントは陣取っていたわ。
たしか剣の墓場のような固有結界を展開した赤い外装の男だったわね。
手品のように剣を生成しては使い捨てにする特殊な白兵戦と弓を使った遠距離戦の二種類を使い分ける戦い方だから苦戦したけれど、なぜか最初からある程度の対処法が頭の中に浮かんでいたのよね……」
不思議そうに首をかしげるメルトリリス。サーヴァントが存在する『座』という場所では時間という概念はない、とおぼろげにだが記憶している。つまり、過去もしくは未来、さらには別の時間軸で現界していた場合、その記憶が知識としてぼんやりと覚えている時があるらしい。
ハイサーヴァントと自称していた彼女も、もしかすると別の時間軸で召喚され、その赤い外装の男と一戦交えていたのかもしれない。
頭の中にある違和感が気になるのか思い出そうとしていたメルトリリスだが、次第に眉間にシワがよって渋い表情になる。
「……なぜでしょうね。あのスカしたドンファン顔を思い出していると無性に腹が立ってきたわ。
今回はシンプルに腹に膝で殺したけれど、今度会ったら出来る限り痛めつけてやろうかしら」
よし、この話をこれ以上掘り下げるのは双方に無益なようだ。
さっさと話を切り替えよう。
『残り三人のサーヴァントだけど、もう対策はできてるの?』
「まだよ。
探索が難しい地形というわけではないけれど、あの霧が邪魔でなかなか探索が進まないのよね。
かといって屋上を渡り歩いても十分な情報は得られなかったし、強行突破するにしてもせめて相手の位置ぐらいは把握しないと。
何かいい方法は……」
しばし考えにふけるメルトリリス。真剣に何かを考えるその姿は、先程の嗜虐的な笑みを浮かべる彼女とまた少し違って見えて新鮮だった。そんな彼女を特に意味はなく観察していると、不意に彼女と視線が合う。
最初はこちらの視線に不快そうに眉をひそめるだけだったが、文句を言う前にハッと何かを思いついたらしい。
そして表情は再びあの嗜虐的な笑みへと変わっていく。
……ああ、これは良からぬこと考えてらっしゃる。
「ねえ、人形。敵情視察をするのに最も大事なのは、相手にこちらの素性がバレていないことだと思わない?」
甘く蕩けるような囁き声。その蠱惑的な振舞いには時と場合によっては誘惑されることもあるかもしれない。が、残念ながら今回はその時と場合ではない……!
『仰ってる意味がわかりません』
震える手で書いた文字をメルトリリスに見せると、その表情がさらに嗜虐的に歪む。しまったこれ逆効果だ!
「別に意味はくみ取らなくてもいいわ。たださっきの固有結界に戻って、サーヴァントの情報を調べてくるだけでいいの。簡単でしょう?」
ついさっきまで散々『大変だ』と言ってからのこれである。反論禁止の条件がなければ絶対言い返していたところだろう。
『一応確認だけど、拒否――』
「拒否権はないわよ?」
書いてるところを覗き込んでまで言葉を被せてこないでほしいです!
まあ最初から拒否できるとは思っていなかったので、これはただ自分の覚悟を決めるためだけに行った儀式のようなものだ。
ただ、自分が削除対象になっているかどうかと、固有結界の中で自分が削除されるかどうかという疑問はあらかじめ解消しておきたかったが、それについては現地で祈りながら確認する他ないだろう。
我ながらとんでもない人と一緒に行動することになってしまった。でも、不思議と後悔はしていない自分がいる。身の危険を感じることはあれど、どこか彼女がこちらに遠慮しているところがあるからだろうか?
「ならさっそく行ってらっしゃい。調べるのははサーヴァントの容姿と大まかな行動範囲。能力については貴女じゃ無理でしょうからそこまで高望みはしないわ。
……場合によっては期間延長も視野に入れているから、できる限り友好に接しておきなさい。それが貴女のためにもなるわ。
合流地点は……貴女私の位置はわかるのよね? なら頑張って私を探しなさい。ここは動かないであげるから。
あっちにまっすぐ進めば固有結界には入れるわ」
言いながら袖で手元の隠れた腕を上げ、ある一点の方角へ指をさすメルトリリス。それはありがたいのだが、親切なのか鬼畜なのかよくわからない注文がどんどんと追加されていき自分の表情が引きつっているのがわかる。
しかも個人的に一番問題な部分に対して何のアドバイスも指示もない。
『エネミーに対してはどうすればいい?』
「……そんなの自分でなんとかしなさい。私はここを動かないわ」
やっぱ彼女に親切さはないね、うん。
これ以上長く居座るとそれすらも反抗行為と取られそうだ。立ち上がるイメージと共に両足に力を入れ、メルトリリスが指さした方向へと歩き出した。