注意!
この世界線ではアルトとユウキは親戚ではなく、ユウキの体も原作通りとなっています。
「明日奈~着いたぞ~」
ったく、嫁の迎えなら自分で行けよな。
何をしたのやら知るよしもねぇが、和人は明日奈の親御さんが苦手らしい。
ダイシーカフェに向かう道すがら、明日奈を拾って現地で落ち合うことになってる。
二度言うが嫁の迎えなら自分で行け。
「颯真さん、わざわざありがとうございます」
「世間話は後だ。さっさと乗れ」
「どこに行くのかしら?」
投げ渡したメットを被りサイドカーに明日奈が乗り込んだところで、家から出てきた女性の声が響く。
「母さん……」
「あなた、私の言ったことが理解できてないのかしら?もう時間を無駄にしてる暇はないの。遊び歩く時間があるのなら1秒でも長く机に向かってる方が有益なの」
ウザッ、典型的なスパルタ母ちゃんかよ。
「三神さん……私、今の学校から転校することになったの」
「ああ、和人から聞いてる。今日だって和人の奴が迎えに来る予定だったんだろ?でもお前から別れを切り出したって言ってた」
SAOに囚われる前のエリートコースへ復帰させるために自由な時間を割き、朝から晩まで勉強三昧。
和人に寂しい思いをさせるぐらいなら、踏ん切りをつけた方がいいと。
「……なぁ」
「あなたは?」
「三神颯真。明日奈はアンタの人形か?」
「何が言いたいのかしら?」
「いい歳して人形遊びなんざ、恥ずかしくねぇのか?」
ピシリ、と空気が凍った。
「人形遊び?」
「だってそうだろ?明日奈を自分の思い通りに着飾ろうとしてる。それを人形遊びと言わず何て言うんだ?」
「全ては明日奈のためよ。輝かしい未来が待っているの、私と一緒かそれ以上のキャリアを積んでもらい、将来立派な職に就いてもらわないと困るのよ。あなたにわかるかしら?」
「それじゃアンタは明日奈の気持ちを考えたことがあんのか?立派な職に就いてもらわないと困る?笑わせんな。結局はテメェのためじゃねぇか。強いられた未来になんの価値がある?テメェの利己のためにテメェの子供を巻き込んてんじゃねぇよ」
「名誉毀損で訴えるわよ」
「好きにしろよ。そんなに大事な名誉なら後生大事に懐にでもしまっとけ。もっともこの程度で傷つく名誉なんざ、たかが知れてるけどな」
歯噛みする明日奈の母ちゃんを尻目にバイクを走らせる。
バイクを走らせ暫しダイシーカフェに到着。
「もう、口が悪すぎるよ三神さん……心臓に悪いよ」
「なにかを強いる、押し付ける奴は大嫌いでね。もっとも他所様の家庭事情に首は突っ込みたくねぇが、和人が絡むんなら話は別だ」
「和人くんのこと大好きだもんね」
「誤解の招く言い方はやめろ」
お店のなかに入って見渡してみたけど、和人くんの姿はない。
「あ、やっと来た。颯真遅ーい!」
「うるせぇぞ
「和人くんは?」
「明日奈にフラれたのが結構ショックだったみたいよ。ALOに入ってきても解散するまでずーっとボーっとしてるんだから」
「そう、なんだ……」
「けどま、どこかのツンデレプレイヤーに発破掛けられていつも通りに戻ったけどねー」
「奇特な奴も居たもんだ」
「明日奈さん、三神さんがなにか失礼なことをしませんでした?」
「人を問題児扱いしてんじゃねぇぞ
「『いい歳して人形遊びなんざして恥ずかしくねぇのか?』颯真さんの悪事は全部録音済みです」
「悪事言うなユイ」
わたしが、くよくよ迷っていたから……。
悔悟の念とともに強く唇を噛んだ。
最初からユウキの心情に従っていれば、と。
ごめん、と口にしようとした私の手にユウキが自らの手をそっと触れさせた。
「ごめんね、アスナ。ボクの短気にアスナも巻き込んじゃって。でもボク、後悔はしてないよ。だってさっきのアスナ、出会ってから一番いい笑顔で笑ったもん!」
ユウキのその言葉に手を握り返して応じた。
「わたしこそ、役に立てなくてごめん。この層は無理かもしれないけど、次のボスは絶対みんなで倒そう!」
私たちのやり取りは、【スリーピング・ナイツ】の全員にも伝わったようだった。全員がぐっと頷き、円陣を作って前後に備える。
後方から殺到してくるおよそ三十人のプレイヤーたちは、既にギルドメッセージか何かで状況を伝えられているらしく、全員が抜剣済みだ。
円陣を作った七人に対して、前後のプレイヤーたちが勝ちを確信した笑みを浮かべた…………その直後。
わずか二十メートル先にまで迫っていた敵増援部隊の、更に後方から。回廊の緩く湾曲する壁面上を、何かが……誰かが横向きになって疾駆してくる。あまりのスピード故に、人影は黒く霞んでいる。
人影は、超高速の壁走りで増援部隊をまるごと追い越すと、悠々と床に飛び降り、靴底のスパイクから盛大に火花を散らしながら制動。敵増援とアスナたちの中間地点で背中を見せて停止した。
その人影……否、黒衣の剣士は、右手を霞むほどの速度で閃ひらめかせ、背中の黒革の鞘から薄青い刃の片手剣を引き抜くと盛大な音を立てて足元の石畳に突き立てた。
その気迫に呑まれたかの様に、三十人のプレイヤーたちが立ち止まる。
「悪いな、ここは通行止めだ」
響くその声に、新参の三十人のみならず、私たちの後ろにいる二十人も、そしてスリーピング・ナイツの面々までもが絶句した。
その黒衣の剣士……キリトくんの肩の上では、ナビゲーション・ピクシーのユイが手を振っていた。
余りにも不遜なその振る舞いに、最初に反応したのは増援部隊の先頭に立つ痩身のサラマンダーだった。信じられないとばかりに大きく頭を振る。
「おいおい、
全身の黒色に由来するあだ名を持つ剣士は、好戦的に笑いながら答えた。
「いいや、アンタらを相手にするのはもう一人いるぞ?こっちは俺たちに任せてボス部屋に進め!」
その言葉を聞いても動けない。
もう一人味方が来ると言ってはいるが、キリトくんがいたとしても、二人でこの数を相手にするのはーー
「大丈夫だ!俺たちをを信じてくれアスナ!」
その時、回転しながら落下してきた影が増援部隊の中央に落下。数人のプレイヤーを巻き込みポリゴンを散らすと同時にその手に握る大剣と短剣を周囲に一閃、辛うじて防御が間に合ったものの大きく体勢を崩された。
「楽しそうなことしてんな。俺も混ぜてくれよ」
右手に大剣、左手に短剣を握った異形の二刀流。
灰色の髪を揺らし、獰猛な笑みを溢すプレイヤーはこの広いALOでも一人しかいない。
「バ、
「よーし、お前は真っ先に殺す」
実力者の噂を聞いては飛び回り、その全てを打ち倒してきたアルトくんにつけられたあだ名。
敵に囲まれながらも悠々と歩きキリトくんと並び立つ。
「もう一度言う。ここから先は通行止めだ」
「死にたい奴から前に出な」
「多勢に無勢、しかも背水の陣ときた」
「逃げるなら今のうちだぜ?」
「ハッ!冗談!これだけ燃えるシチュエーションもそうそうねぇだろ」
ホント、バーサーカー。
後方部隊から放たれる魔法を上位ソードスキルで相殺し、真っ正面から切り崩していく。
「キリトよーい!まだ生きてるかー!」
「遅ぇぞクライン!全部喰っちまうぞ!」
「全滅させる必要はないんだけどな!」
話は変わるが
だけどこのフルダイブ型VRなら?
STRが上がれば物を持つ、剣を振るう、人を背負う、など筋力が必要とされる動作が可能になる。
力が入る動作にSTRが反映されると言えるわけだ。
何が言いたいのかと言うとーー
「
剣を咥えて受け止める、という荒業もやってのけるアホも居るというわけだ。
物を噛む。つまり
首の力で咥えた剣をもぎ取ると反対側から迫っていた敵の胸目掛け放り、剣を奪われた相手の頭を下から短剣で突き上げるという目を覆いたくなるような惨状だ。
「化け物だ……」
そう言いたくなる気持ちはよく分かる。俺もそう言ってやりたい。
後日
結論から言ってしまうと増援部隊及び先見部隊合わせて総勢五十人の部隊は、たった三人のプレイヤーに壊滅させられることになった。
戦意を喪失して逃げていったやつらも居るが、キルされたプレイヤーの殆どは戦闘馬鹿がやった。闘うことでアイツに並ぶことのできる奴は人間を止めた部類の人間だろう。
闘うことを悪いとは言わないが、頼むから嬉々として剣を振り回さないでほしい。
割りと切実に。
「んで?【絶剣】とやらとは本当に戦う気か?」
「ん?お前は戦わないのか?」
【絶剣】の噂を聞いた身としては真っ先にコイツが戦いたがると思ったんだけど……。
「まぁ別に戦ってもいいんだが食指が動かねぇ」
「???」
「なんつーか部類としては俺側なんだろうが、本気で命を懸けてるって言えばいいのか?SAO時代の俺を見てるみてぇでな」
なんとなく分かる気がする。
「つー訳でアッチから挑んで来ねぇ限り俺は干渉しねぇ。過去の自分を見せられてるようでなんかな」
「今もSAOの時とあまり変わってないけどな」
「どういう意味だ?言いたいことがあるなら剣で語れ」
そういうところがだよ!バーサーカー!
「この音はなに?」
「音?」
母さんをALOにダイブして貰って説得する。
宮城のお爺ちゃんたちの家を思わせるあの風景を見て泣き崩れる母さんを支えたとき、明らかに異質な音を問われ視線を巡らせる。
火花を散らしながら二つの人影が雪の降る杉林のなかを疾走する。
片や二振りの剣、片や大剣と短剣。
剣が振るわれる度にその剣圧で降り積もった雪が巻き上げられ、巻き上げられた雪の壁を切り裂いて再び斬り結ぶ。
「どうしたよ!フラれて傷心中か!?剣先がブレてんぞ!」
「うるさい!俺はアスナを諦めない!絶対にだ!」
「ハッ!事実フラれた奴がなに言ってんだ!」
嵐とも言える剣戟がぶつかり合い、金属音が衝撃波のように響き渡る。
「あれはどうなってるの?」
素人目にはどうして勝負が成立しているのか理解できない。ただ闇雲に剣を振るっているように見えているかもしれないけど、事実はその逆で嵐のような剣戟全てが並の相手なら一瞬でなます切りに出来るような代物。
彼らの戦いを毎日のように見てきた私だから、彼らの動きを目で追える。
「二刀流の方がキリトくん、大剣の方がアルトくん。あの二人はいつも戦ってるんだよ。SAOの頃からずっと」
「キリト……桐ヶ谷くんね。アルト……」
「
「三神、颯真……」
「口は悪いんだけどね、本当は優しい人なんだよ。言葉の裏に隠した想いを汲み取らないといけないんだけどね」
アルトくんが人形遊びと口にしたのは、『親の考えを子供に押し付けるな』ということなんだと思う。
親の言葉通りに動く子供を人形に例えのかな?
「諦められるかぁ!」
「今のお前に何ができんだ!?」
「俺の想いを全部ぶつける!大した学も将来性もない俺にできるのはそれだけだ!」
降り積る雪を融かしてしまいそうなほどの
「凄いのね……彼」
「うん……」
「…………明日奈、大学には必ず通いなさい。それが約束できるなら、卒業まで今の学校に通うのを認めます。でも今まで以上に成績を上げること。これが条件」
「母さん……」
「それと彼……桐ヶ谷くんとの交際は黙認します。ただし、少しでも貴女に不利益になると判断した場合はーー」
「ならないよ絶対に」
「支える覚悟があるのね。なら今よりも強くならないと駄目よ」
その言葉に視線を外へ戻せばアルトくんと目が合った。
キリトくんの思いを母さんに聞かせるためにわざとここで戦ってたんだ。
ありがとうアルトくん。でも、あとでお話しがあるから覚悟してね。
明日奈と和人が元鞘に納まった。
学校の方も今まで通りだそうだ。
あれこれと柄にもなくフォローに回ったが結果が伴い良しとする。
そして、ふと思い出すのは新生アインクラッド二十七層フロアボスを突破したギルド【
噂では聞いたことがある程度だが、その実力は恐らくSAO攻略組と遜色ないほどのレベルだろう。それは【スリーピング・ナイツ】単体で新生アインクラッドのフロアボスを突破した実績が物語ってる。
所属メンバーはその動き方からフルダイブ馴れし過ぎていると言ってもいいかもしれない。ハッキリ言ってしまえば一般プレイヤーではなくSAOサバイバーに近い。
アバターの動かし方を頭と体の両方で理解する。
これは長い時間を掛けて培っていくもの。アミスフィア発売当初からの古参プレイヤーなら完璧といかないまでも思考と動作の誤差を限りなくゼロに近付けることは可能だろう。どれだけリアルでの時間を惜しみ、フルダイブに注いだとしてもそこまでが限界だ。
なら彼らは?
その答えを知るのはもう少しあとになる。
アスナが【絶剣】の口から語られた真実。
【スリーピング・ナイツ】に共通する秘密。
そしてその名に込められた想いを。
この時ほど運命というものを呪ったことはないだろう。
何かを残し、誰かの記憶の中で生き続けるために彼らは命を燃やしている。
誰かの記憶の中で生き続ける限りお前は死なない。
だから安心して眠れ、ユウキ。
飛ばし飛ばして申し訳ない。
書きたかった部分をピックアップした結果、纏まりの欠片もない物に……
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