今話は短いです。次話の投稿は未定です。
からーん。
「うー、あと十分……いや五分……」
「だめよ、起きなさい。」
「三分……さんぷんだけ……」
尚も肩をつんつんしてくる。セルカは優しいな。直葉なんて布団を剥がして叩き起こしてくるというのに。
「もう五時半よ。早くしないと礼拝に間に合わなくなるわよ」
まだ五時半じゃないかと思いつつ、長そうな説教をセルカが始めたので、そそくさとベッドを降り、シャツを脱ごうとする。
「なっ!と、とにかく、早く来なさいね!」
セルカは顔を赤くしてそそくさと出ていった。
意外と
着替えを終えて朝の礼拝を行った。俺は無信仰だが、教会で過ごす以上当然のことだと考え、信仰というよりは感謝をして礼拝した。その後朝食をシスターやここで暮らしている子供たちと摂る。朝食はかなり簡素なもので、正直、現実世界のものと比べるとやはり目劣りしてしまう。この大人数だ。シスターたちもそこまで贅沢はいっていられないのだろう。俺は恵まれていたのだといまさらながら実感する。とはいえ、味覚はちゃんと機能するようで、その味はどれも本物のように感じた。
広場に行くと、そこにはユージオがいた。
からーん。
丁度鐘の音が鳴り、先程の鐘の音色と違うのだと気づいた。
「……なるほど。」
「おはよう、キリト。どうしたんだ?」
「おはよう。いや、ここでは時計じゃなくて一時間ごとに変わる鐘の音で時間を知ってるんだなって。」
「トケイ?」
しまった、時計は存在してなかったのか、と冷や汗をかきつつ時計の説明をする、
「えっと……なんか丸くて、三本の針で時間を示しているやつなんだけど…知ってるか?」
「うーん?……あっ!それって時刻みの神器のこと?大昔にあって、神様の怒りを人々が買って壊されたとかいう」
「ん?あ、ああ。それそれ」
「キリトのいたところでは、トケイって呼んでたのか…もしかしたら故郷を探すヒントになるかもね」
故郷はわかるんだが、帰り方がな…
色々と考えた結果、この国?の首都らしい央都に行くのが一番の近道だろうということになった。
「さて、僕は仕事に行かないと。キリトはどうする?」
俺は少し考えた。探検もしたいが、央都にいって調べたい俺としては、央都に行くためにユージオが必要だ。それゆえにユージオの天職について調べる必要がある。
「……今日も仕事手伝っていいか?」
「もちろん、そういうと思ってた」
ユージオはパンを二人分用意していた。そんなユージオに感謝しつつ、この世界のシステムについて考えながら仕事場へ向かった。
「うああ、もうダメだ、もう振れない」
俺は悲鳴をあげて斧を放り出して崩れ落ちた。
ユージオの差し出したシラル水を貪るように飲む。
「でも、キリトは筋がいいよほんと。かなりまともに当たるようになってる。」
「……それでも、まだユージオには及ばないからな」
溜息をついて座る。
幸い、この世界でもアバターを動かす勘やイメージ力はかなり機能するようだった。
それに、反復練習はアインクラッドでずっとやっていた俺の得意分野だ。根気なら、ユージオにも負けないー。
いや……待て。俺はいま、何か…。
ーー!?
その思考は突如として感じた違和感にかき消された。
なんだ、これーー
森の奥から突如感じた空気に、俺は思わず身震いする。
ユージオも何か感じたようで、
「ーー?」
不安げな表情をしていた。
予感がする。何かとてつもないものが、現れたような。
「ユージオ……行こう」
見たい。もしかしたらそれはこの世界のシステムに関わる何かかもしれない。元の世界に戻れるかもしれないと思ったら、恐怖より興味が上回り、呆然とするユージオを連れて俺は森の奥へと足を踏み入れた。
「……酷い」
木々は薙ぎ倒され、地面は割れ、水が濁流となって割れた大地を流れていく。
「《メガロス》だ……」
「め、めが……?」
「《メガロス》だよ。キリトが来る二ヶ月ぐらい前かな?突然現れて破壊の限りを尽くしたんだ。目に入るもの、動くもの、人も動物も区別なくね」
今じゃ災害のひとつだよ、と目の前に広がる惨状を見つめながらユージオが溢す。
「整合騎士も《メガロス》討伐に挑んだけど、結果は返り討ちにあって討伐隊は壊滅。唯一生き残った騎士も手足を折られてて騎士としての生命を絶たれたらしいよ」
そんな怪物がこのアンダーワールドにいるなんて……。
「大丈夫、《メガロス》は夜しか活動しない。今まで何度か同じ光景を見てるし、襲われたこともないから」
俺が絶句しているのを《メガロス》に怯えてると受け取ったユージオが励ますように話してくれる。
「フォーウ」
……?なんの声だ?
「どうしたのキリト?」
「いや、今なにかーー」
「フォーウ」
「やっぱりなにか聞こえる」
「え?僕にはなにもーー」
こっちか!
微かに聞こえる声を頼りに倒木を飛び越えていく。
辿り着いたのは折り重なった倒木の山。
「いきなり走り出してどうしたの?」
「なにか声がーー」
「ンキュンキュ」
木々の隙間から出てきたのはリスに似ても似つかない白い体毛で四足歩行の動物。現実でも見たことのない生き物だ。
「すごいやキリト!この子はね、見つけた者に幸運を運ぶって言われてるんだ。本当に実在したんだ」
「幸運を?」
「そうだよ。きっと《メガロス》が暴れて、それに巻き込まれたんだね。木に押し潰されなくて良かった」
白い蛇とか白いライオンとかの類いなのか?
「あっ!あんまり近づいちゃダメだよ。警戒心が強くて人前に現れるのなんて滅多にないんだから」
「あ、ああ悪い」
確かに触ろうとした手をすごい見てる。心なしか飛び退こうと重心も移動させてるし。
「名前は何て言うんだ?」
「え?知らないの?キャスパーだよ」
キャスパー……有名なのか。
「きっとこれから良いことが起きるよ。キャスパーを見れたしね」
「そういうものか」
「そういうものなんだよ」
「ふーん、海馬にダメージがあるね」
「原因はなんでしょうか?」
「さてね。どちらにしろこちらには好都合だ」
「これが君たちの正義か!?」
「必要な犠牲ですよ。この国の未来に繋がる必要な、ね」
「だからと言ってーー」
「教授ーーいえ元教授でしたね。元教え子を巻き込むのは気が引けますか?全SAOサバイバーを巻き込んだあなたが」
「………………」
「彼にも役割は与えています。彼らを次のステージへと昇華させるための必要な役割をね」
アルトがどうなっているのか、勘のいい人は思い当たってるかもしれません。