sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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原作を紛失しましたがなんとか書けました。


第四章:果ての山脈

からーん。

 

鐘が鳴ると同時に目を醒ました俺は、やればできるものだ、と思いながらベッドから降り、窓を開け放つと、大きな伸びをして朝の冷たい空気を胸一杯に吸い込んだ。

 

着替えてから井戸で脱いだ麻の服を洗う。ちょくちょく洗わないと天命の減りが早いらしいっていうのもあるけど、洗ってない服を着ると言うのも精神的に嫌だ。

 

 

 

 

 

 

朝食を食べるために食堂に向かう途中でシスターからセルカの姿が見えないという話を聞いた。

こんなことは初めてでどうしたらいいか分からないと。

 

胸騒ぎが収まらないまま、広場へ向かい少し経つと広場に入ってくる亜麻色の髪を見つけ駆け寄った。

 

「やあ、おはようキリト」

 

「おはようユージオ」

 

「セルカがいなくなったんだ。探すの手伝ってくれないか?」

 

「え?セルカが?」

 

「ああ。こんなこと初めてらしい。ユージオは、セルカの行きそうな場所に心当たりはないか?俺は昨日、セルカとアリスの話をしたから、もしかしたらーー」

 

そこまで言って俺は今更ながら、胸騒ぎの正体に気づいた。

 

「ーー果ての山脈だ!セルカはアリスの話を聞いて、そこに向かったんだ!」

 

半ば駆け足で山脈へと向かう。

道中の踏まれた足跡から子供が果ての山脈に向かったことはわかっている。セルカが万が一にも闇の国に入ってしまわぬように早く連れ戻す。そうして俺たちは果ての山脈へと足を進めていった。

 

 

 

 

 

 

「着いたよ、この洞窟だ」

 

俺たちはようやく大きな洞窟の前に到着した。洞窟はかなりの高さと幅があり、勢いよく流れる小川の左側に、二人が並んで歩けそうな岩棚が張り出していた。奥のほうは真っ暗闇で、時折凍りつきそうに冷たい風が吹き抜ける。

 

「おい、ユージオ……灯りはどうするんだ?」

 

俺が訊くとユージオはいつの間にか拾っていた一本の草穂を掲げた。俺が唖然とするなかでユージオが口を開く

 

「システム・コール!リット・スモール・ロッド!」

 

システムコール!?

 

驚いたのも束の間。草穂の先端に青白い光が灯った。神聖術だよ。練習したんだ、とユージオは微笑む。言葉の意味は知らないらしい。俺は改めて此処が仮想世界なのだと実感した。

 

「なあ、俺にも使えるか?」

 

「素質のある人なら一日でも使えるし、出来ない人は一生掛かっても出来ないって。さすがに今すぐには無理じゃないかな」

 

興味本位で訊いてみたが、魔法ーー神聖術を使うのはすぐには無理そうだ。ここでは一先ず諦め、洞窟の中へと足を進める。途中で凍った水溜まりに踏み割られたようなヒビが走っていた。

 

「……間違いないみたいだな。全く、無鉄砲というか恐れ知らずというかなんというか」

 

と、俺がぼやくとユージオは不思議そうな表情をして、

 

「別に、此処にはもう白竜もいないし、それどころかネズミやコウモリすらいないよ?」

 

どうやら変なエネミーとかは出てこないらしい。そうか、と力を抜こうとしたーーその時だった。

 

妙な音と樹脂の焼けるような匂いと僅かに混ざる生臭い獣臭、そしてーー

 

『きゃあああ!!!』

 

女の子の悲鳴が聴こえてきた。

 

「まずい!」

 

「セルカ……!」

 

俺とユージオは同時に叫ぶと、凍りついた岩に足を取られつつも全力で走り出した。

 

呼吸は乱れ、空気を求め喘ぐ度に激しく胸が痛む。しかし、速度を落とす訳にはいかない。セルカを犠牲になど出来ないのだ。

 

不意に、行く手の岩壁にオレンジ色の光が揺れた。どうやら奥はドームのようだ。俺達は意を決して同時に飛び込んだ。

 

すべてを視ろ、そして最適な行動を起こせーー可能な限り早く。

 

ほぼ真円のドーム。床は氷に覆われ、端の方にはセルカが倒れている。中央部分だけ大きく割れていて、その周りに三十を超える『異形』が集まっていた。

 

身長は俺の胸ほどまでしかない。しかし、その体躯は幅があり、異様に長い腕と鋭い爪は逞しい。革の鎧と、鋳物の蛮刀を身につけ、肌はくすんだ灰緑色

 

RPGではお馴染みの低級モンスター《ゴブリン》そのものだった。

 

俺はほんの少し安堵した。ゴブリンのステータスというのは、大抵かなり低く設定してある。

 

しかし、こちらに気づいた一匹が視線を向けた瞬間。俺は骨の髄から凍りついた。その異様に大きな黄色い目玉には、僅かな不審と驚き、そして残忍な悦びと飢えーー悪意があった。

 

こいつらも只のプログラムじゃない!?

 

俺は既にここの住人の正体に行き当たっていた。彼らは恐らく何らかの人造メディアに保存された、《人工フラクトライト》なのだ。現実世界の人間のデータを基にフラクトライトを生成し赤子から成長させる。

それ以外にこの状況を説明出来ない。

 

つまり、ラースの目的はーー真なるAI、人工の知性を創ることだ。人間を鋳型にすることで。

 

しかし、このゴブリンは人間のそれとは思えない。ならばこの本物としか思えない強烈な悪意は一体……。

 

「おいおい、見ろよ!まーた白イウムの餓鬼が二匹も転がりこんできたぜぇ!」

 

途端に、ゴブリン達の喚き声が溢れ、こちらに餓えた視線をぶつけてくる。

 

「どうする、こいつら捕まえるかぁ?」

 

「男のイウムなんざ、売れねぇよ。そいつらは殺して肉にしろ」

 

殺す。

 

その言葉に俺は少し戸惑う。もし、この世界で俺が死んだらどうなるのだろうか。セルカや、ユージオは一体どうなるのだろうか。とにかく、やるべきことはひとつ。

 

「ユージオ、セルカを助けるぞ」

 

「う、うん」

 

凍りついていたユージオの体がぴくりと動き、詰まりながらも返事を返す。やはり芯は相当強いらしい。

 

「まずは前の四匹を突破。俺は左、ユージオは右のかがり火を池に倒せ。そしたら床の剣を拾って俺の後ろを守ってくれ。俺がでかい一匹を片付ける。……行くぞ一、二、三!」

 

俺たちは雄叫びを上げながら走りだす。その様子に驚いたゴブリンは眼を丸くして立ち止まっている。そこに全力のタックルを喰らわせたら、すぐ俺とユージオはかがり火に飛びつき水面へ蹴り飛ばした。

 

暗闇に包まれるなか、ほのかな青白い光がみえる。ユージオの神聖術による光だ。どうやらゴブリンはその光が苦手らしい。顔を覆ったり、うずくまったりしている。俺達は、今がチャンスだ、と剣を拾って駆け出す。

 

「ぐるらぁっ!この《蜥蜴殺しのウガチ》樣と戦う気かぁ!」

 

「違う!戦うんじゃないーー勝つんだ!」

 

そう自分に言い聞かせるように叫び、距離を縮める。剣を左肩目掛けて袈裟懸けに斬り降ろすが、敵の反応も予想以上に早く、肩当てを砕くに止まった。横殴りに振り回される蛮刀をぎりぎり掻い潜る。

 

がら空きの脇腹へ水平斬りを放つが、やはり防具を弾いただけで、手傷を負わせられない。

 

単発攻撃では埒があかない。そう判断した俺は、SAO時代に何度も反復し体が覚えたソードスキルの型を再現しようとする。その刹那、剣が微かに赤い光を放ち、体が自然に動いた。

 

片手剣三連撃技《シャープネイル》は、正真正銘の本物だった。《ライトエフェクト》と《システムアシスト》が稼働したのだ。つまりソードスキルは存在する。以前《ホリゾンタル》を使った時には成功しなかったのに何故、と考えを巡らせていた俺は失念していた。

 

此処が只のVRMMOでないと。

 

ゴブリンはポリゴンのモンスターと違い、攻撃を受けても一瞬も動きを止めようとしなかった。そして振り回された刀を俺は回避できず、吹き飛ばされた。

 

「キリト!!」

 

ユージオの叫びが聞こえ、かすり傷だと返そうとするも左肩から全身の神経が焼き切れるほどの痛みが弾け、涙が溢れた。

 

「っ~~!!!??」

 

こんな、仮想世界が、あって、たまるか……!

 

現実世界の痛みにはまったく慣れていない。VRMMOではヒットポイントの減少でしかなかったのだから。

俺はこの時初めて魂に直接アクセスするという言葉の意味をようやく知った。

 

「…………取り敢えず、お前らを八つ裂きにして食い散らかしてやる……!」

 

痛みに悶絶している間にウガチが俺の目の前に来ていた。

 

俺は、終わるのか。振り下ろされる刀を眺めながら、しかし、その刃は俺の元へは届かなかった。

 

「キリトーーーーッ!!」

 

気づいた時には目の前で亜麻色髪の少年が真っ赤な血を流して倒れていた。

 

「ユージオ……っ」

 

俺よりも何倍もひどい怪我を負ったユージオを、必死に助けようとにじり寄るも、俺たちの間に先程のゴブリンが立つ。

 

「邪魔が入ったが、まぁいい。お前もすぐにあいつと同じ所に連れて行ってやる」

 

もう駄目だ、と目を瞑ったときだった。

 

「■■■■■■■■■■!!!!」

 

空気が震え、思わず顔を庇うほどの衝撃波が洞窟の奥から放たれた。

 

いや違う、これはーー

 

僅かな光に照らされたその姿はまさに破壊の化身だった。身長が3mを超す巨躯、分厚い腕甲と脚甲を嵌め、身体中に鎖を巻き付け、呼気と共に口から煙が吐き出され、左目が紅い光を放ってる。

 

「■■■■■■■■■!!!」

 

凄まじい咆哮と共に岩を削り出したような大剣を凪ぎ払い、一撃でウガチの命を刈り取った。

 

……なんだ?

 

次は他のゴブリンたちよりも近い俺たちかと思ったが、奴の姿が消えたかと思えば離れた場所でゴブリンたちの悲鳴が聞こえた。

 

俺たちに興味がないのか?

 

なら、と奴の注意を引かないように這いずってなるべく音を立てないようにユージオに近付き容態を調べる。

 

青ざめた瞼はぴくりとも動こうとしない。ほんの少し開かれた唇に弱々しい息遣いをかんじるが、今にも止まってしまいそうだった。

 

俺はユージオの肩を叩き天命を確認すれば残りの天命は244。恐らくあと八分程しか時間は残されていない。

 

「……待ってろ、すぐ助けるから」

 

ドームの片隅、岩影の奥にユージオを運び、今も暴れまわってる奴の視界に入らないようにする。

 

考えろ。

 

思考を止めるな。

 

最適解を導け。

 

今度は、ドームの隅で倒れているセルカの元へ全力で走る。幸い大きな怪我はしていないようだ。

 

「セルカ!!目を醒ましてくれ!!」

 

するとライトブラウンの瞳が見開かれ、喉の奥から小さな悲鳴が漏れるも、俺を認識したようでひどく驚いた顔をしていた。

 

「キリト……なの?」

 

「ああ、助けにきたよ。セルカ」

 

その瞬間、セルカは顔をくしゃっと歪ませ、俺に抱きつく。俺はセルカを両腕で抱え走り出した。

 

「泣くのはまた後で!それよりユージオが!」

 

すぐにセルカにユージオを診てもらう。セルカはユージオの深い傷に触れた途端、その手を引っ込めてかぶりを振った。

 

「……無理……こんな傷……あたしの神聖術じゃ……」

 

あたしのせいで、、と泣くセルカ。

 

「無理でもいい、やってみるんだ!君は次のシスターなんだろう!?アリスの後を継いだんだろ!?」

 

セルカの肩がぴくりと震え、しかし力なく落ちる

 

「……ごめんなさい…私は姉様のようには……ごめん…ごめんね、ユージオ…」

 

「馬鹿野郎!!ユージオは()()助けに来たんだ!俺だってそうだ!()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

セルカの肩が大きく揺れる。

 

一瞬の静寂

 

「ーー高位神聖術を試すわ。キリト協力して」

 

その瞳に、もう迷いはなかった。

 

俺はセルカに言われた通り、ユージオの右手を握りもう一つの手でセルカの手を掴んだ。

 

「システム・コール!ーートランスファー・ヒューマンユニット・デュラビリティ、ライト・トゥ・レフト!」

 

セルカを中心に大きな光の柱ができ次の瞬間、異様な感覚に包まれた。

 

天命を人から人へ移動させているのだろう。ユージオの傷が徐々に良くなる一方、俺の全身を強烈な寒気が襲う。セルカも顔色がどんどん悪くなっていく。

 

「二人分でも……まだ、足りないなんて……」

 

「セ……ルカ……このまま……」 

 

まずいな、声も出せなくなってきた。それでも友達ののためなら俺はーー

 

ふと、誰かの手を感じた。

 

『……待ってるから、いつまでも……セントラル・カセドラルのてっぺんで、あなたたちを……』

 

黄金の光が俺たちを包み、圧倒的なエネルギーの奔流がユージオを癒してーー

 

「■■■■■■■■■■!!」

 

ヤバイ!見つかった!

 

これだけ派手な光だ。見つからない方がおかしい。

 

「《メガロス》……」

 

「こいつが……?」

 

森を薙ぎ倒し、地面を割り、目に入るもの区別なく破壊する災害。その正体が目の前の化け物だっていうのか?

 

まだ神聖術の途中だ。ユージオが完治してない以上、俺たちは動けない。

 

「フォーウ!」

 

その巨大な手が届く瞬間、聞き覚えのある鳴き声が聞こえ俺たちの間に割って入った。

 

「キャスパー……?」

 

「え?キャスパー?本当に?」

 

白い体毛に包まれたその姿は見間違えるはずもない。

 

毛を逆立てて威嚇しているけど、キャスパーの大きさを考えればあの手で掴まれただけで容易くその命を握り潰される。

 

「■■■■■……」

 

「なんだ……?」

 

つい先程までの敵意は鳴りを潜め、踵を返して洞窟の奥へと消えていった。

 

考えるのはあとだ。今はユージオを安全な場所まで運ばないと。

セルカの手を借り、ユージオを背負って洞窟を後にした。

 

 

敵意の消えたときの《メガロス》の目……。

俺たちを知ってるかのような、そんな感じがした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

俺とユージオとセルカは次の日の朝、シスターに呼び出されて村の広場を訪れた。そこに居たのは村の人々だった。みんな俺たちの顔を見て、安堵していた。

 

話を聞くと、日が暮れても子供が3人帰ってこないと捜索隊を出そうか話し合い、出発する寸前までいったそうだ。そこに帰ってきた俺たちから事情を聞いたシスターが止めに入ったらしい。

 

彼らの思いやりに感謝しようと、俺が声をあげようとしたとき、村の人々の中から一人の男性が出てきた。ルーリッド村の長でセルカとアリスの父、ガスフト村長だ。

 

その後、村長からの叱責を受けた俺たちは事情を説明しろと迫られ、北の洞窟に野営していたゴブリンの集団のことと《メガロス》と遭遇したことを話した。

けど村長達は子供の戯言だと笑い飛ばすだけ。

 

確かにアレを見たから分かる。アレは対峙しちゃ、戦っちゃ駄目なやつだ。

SAOで培われた勘が警鐘を鳴らし、体は意思とは無関係に逃げようとしていた。

 

あの巨大な手が近付いた時、もう駄目だとも思った。俺はここで死ぬのだと。

 

俺たちを助けてくれたのがキャスパー、幸運の獣。

だけど《メガロス》はキャスパーに怯んだ訳じゃない。上手く言葉に出来ないけど、正気に戻った?そんな感じ。

 

肝心のキャスパーは洞窟を出たときに何処かへと走り去っていった。またどこかで会えるかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

打楽器のように軽やかに澄んだ音が、空高く拡散した。どうやらユージオも調子が良いらしい。竜骨の斧を軽々と使い、かなり真芯に当てている。それも当然だろう。今朝、自分の《窓》を開いたときにオブジェクト・コントロール権限、システム・コントロール権限、天命の最大値が大きく上昇していた。つまりレベルアップしていたのだ。

 

 それとなくセルカにも確認したところ、神聖術が妙に上手くいく気がするらしい。セルカは戦闘はしていない。つまり、俺たち3人がパーティー扱いされ、全員に経験値が入ったのだろう。

 

そこはまだわかるのだが、やはり気になるのはーー

 

「なあ、ユージオ。お前が倒れてたとき、誰か……女性の声とか姿とか感じなかったか?」

 

「セルカのこと?……うーん。言われてみれば、なにか暖かさを感じたような……?」

 

『セントラル・カセドラルで待ってる』そう言って俺たちを救った誰か。そして死を予感したときに走った走馬燈のような光景。渦巻く思案を一度中断し、作業に集中する。

 

「いや、なんでもない。次は俺の番だな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そういえば……セルカにはちゃんと伝えたのか?」

 

「もちろん。早朝に教会の近くで会ったときにね」

 

なるほど。だから今朝はセルカの機嫌が良かったのか。今朝のセルカの言葉を思い出す。

 

『私、自分らしく生きたい。姉様の代わりじゃない、私自身として。……だから、その……ありがと』

と、顔を赤らめて足早に去っていった。彼女が幸せに生きられるよう、俺も応援しないとな。

 

……俺も仕事に集中しないと。俺は央都に向かわないといけないのだから。

 

ふと、俺はあることを思い付いた

傍にあった一本の剣ーー《青薔薇の剣》を掲げる。

 

「キリト、持てるのかい、その剣が?」

 

「まぁな」

 

ユージオを前にして俺は片手剣単発ソードスキル、《ホリゾンタル》を繰り出す。技のイメージと融合したシステムアシストが動きを加速させ、斬撃に凄まじいスピードと精密な照準を与える。痛烈な衝撃音が轟き、ギガスシダーの巨木がびりびりと震えた。

 

「今のは……剣術かい?その、流派の名は……?」

 

「……アインクラッド流だ」

 

咄嗟に思い付いた名だが、それ以外にはあり得ないと感じた。俺の技は、あの浮遊城で身に付け、磨いたものだ。

 

数秒後、顔を上げたユージオの眼には毅然とした強い輝きがあった。

 

「――僕に、アインクラッド流剣術を教えてくれ。もしかしたら、何かの規則に違反するかもしれないけど……」

 

ユージオは少し顔を俯く。

 

彼は今、葛藤しているのだ。掟と、自分の意思とで。

運命を自分の意思で切り拓こうとしている。

 

「……でも、僕は…強くなりたい。なくしたものを……取り戻すために。僕に、剣を、教えてくれ」

 

「……解った。付いてこれるな?」

 

――こうして2人での、修行が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「■■■■■■■■■……」

 

破壊された大地を燃え盛る炎が照らす。

鎧に身を包んだ騎士たちと全身に剣を突き刺された巨人。

 

「ようやく死んだか……こちらの被害は?」

 

「深刻です。部隊は半壊、怪我人も多数」

 

「そうか……総員帰還の用意だ。《メガロス》を央都まで運ぶぞ」

 

「了解」

 

誰もが気を抜いた。

だが、忘れてはならない。戦場では注意を怠った者から死んでいくことを、そして相手はあの暴虐の化身であることを。

 

「ッ!」

 

足元に伸びた影に気付き後ろを振り返った騎士が最後に見たのは、自身に振り下ろされる岩のような拳だった。

 

「■■■■■■■■■■■■■■■!!!!」

 

まだ戦いは終わってはいないのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この夜、《メガロス》討伐に出向いた総勢百を越える騎士たちは誰一人として央都へと帰還を果たした者はいない。




記憶を頼りになんとか書けました。
次話の投稿は未定です。







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