sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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気が付けば3週間近くの経ってました。
生きてますよ。



あとで加筆修正するかもです。


第九章:オーシャン・タートル

キリトくんもアルトくんもいない。

あの二人がいないだけでダイシーカフェの中は随分と静かだ。

 

キリトくんの心音をモニターしていた位置データから港区に運ばれ、そこからヘリでまたどこかへと運ばれたのは判っている。

運ばれた先は《オーシャン・タートル》ーーラースで間違いない。恐らくアルトくんもそこに運ばれているはずだ。

 

でもそこから進展はない。

 

部外者である私たちが国の管理する施設へ足を踏み入れる許可が下りる筈もなく、二の足を踏むことになった。

 

「失礼します」

 

店内へ入ってきたのは中学生くらいの女の子。

あれ、この子……木綿季に似てる……。

 

「すまない。今は貸しきりでーー」

 

「ね、姉ちゃん……」

 

「何処にいるかと思えば……初めまして木綿季の姉、紺野藍子です。以後お見知りおきを」

 

木綿季のお姉さん……?

 

「成る程、あなた方が兄さんの……ひとつお尋ねしたいことがあります。兄さんは何処ですか」

 

「それ、は……」

 

木綿季と同じく彼女は彼の身内。知る権利がある。

でも正直に話していいのだろうか。

 

彼が姿を消したのには国が絡んでいるかもしれないなんて。

 

颯真さんは脳にダメージを負い、その治療のために搬送されたが何者かによって拉致された。

目的は恐らく和人くんと同じでそのフルダイブ能力、或いは情報処理能力。

何に利用しようとしているのかは不明のまま。

 

掻い摘まんだ説明になってしまったけど、彼女には知りうる限りの情報を伝えた。

 

「兄さんが傷付きながら戦っているのを知りながらこの体たらく。何故兄さんがあなた方を仲間だと言っていたのか理解できません」

 

「姉ちゃん!」

 

「あなた方は都合良く兄さんを利用していただけじゃないですか!兄さんを理解してくれる人が出来たと喜んでいたのに……!」

 

敵意を宿した目と言葉。

木綿季といい、彼女といい、本当にーー

 

「……ほんっと颯真そっくりだわ」

 

「そうですね。本当に颯真さんそっくりです」

 

そう、本当に彼にそっくりだ。

 

「私たちが颯真さんを利用してたって言われても仕方ないかもしれない。でもね藍子ちゃん、私たちが颯真さんから受けた恩を忘れた訳でもないの」

 

口ではあれこれ文句は言うけど、あれこれと手を回してたりしてくれていた。

落ち込んでいるときでも容赦のない物言いは下手な慰めよりも心に響いた。

 

人を慰めるのが下手でぶっきらぼう、他人に興味がないのに人が好きなお人好しで、悪意を向けられるのに慣れてるのに私たちに向けられれば悪役を買って出てでも守ろうとする。

 

本当にちぐはぐで面倒臭い性格だけど、どこか憎みきれない私たちの仲間。

 

「大丈夫、なんて無責任な事は言えないけど私たちを信じてほしいな」

 

「その言葉を信用できる証拠はあるんですか」

 

「SAOで紡いだ絆。それじゃダメかな?」

 

SAOだけじゃない。ALOでも肩を並べていた。

その時間で育んだものは血よりも固い絆だ。

 

「…………」

 

「姉ちゃん、お願いボクたちを信じてほしい。絶対に兄ちゃんを連れ戻してみせるから」

 

「……兄さんだけではないでしょう?兄さんの相棒である桐ヶ谷和人も連れ戻さなければ兄さんに怒られるわよ」

 

「っ!うん!」

 

「信じてくれるの?」

 

「荒唐無稽と吐き捨てるのは簡単ですが、仮に真実であったなら、あなた方でなければ兄さんを助けることができない。それぐらいは私でも理解できます」

 

兄さんをお願いします。

そう言い残し藍子ちゃんはダイシーカフェを出ていった。

 

「なるほどねぇ。あのバカの戦闘狂の一面は木綿季、ツンデレはあの子に引き継がれてるわけか」

 

「もう、リズ?」

 

「ボクは戦闘狂じゃないよ!?」

 

覚悟は決まった。あとはーー

 

「ねぇみんな、和人くんと颯真さんに繋がるかもしれない細い糸があるの」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

神代凛子さんの協力により、凛子さんの助手としてオーシャン・タートルへと辿り着いた。

カツラとサングラスを外して持って来ていたキャスターつきの大型のスーツケースを開けば、青い顔をしたシノのんが体育座りの姿勢で納まってる。

 

データの改竄をしても、神代さんの助手が二人もいたら怪しまれると考えた苦肉の策。

X線による手荷物検査がなくてよかったと胸を撫で下ろしたけど。

 

「ふぅ……さすがに意識が飛び掛けたわ」

 

「ゴメンねシノのん。予想外に時間が掛かっちゃった」

 

「やっぱりこのサイズなら木綿季の方が良かったんじゃない?」

 

「そんなこと言って一番乗り気だったのはシノのんじゃない」

 

提案した私が言える立場じゃないけど、スーツケースに隠れることを真っ先に選んだのは彼女だ。

シノのんもアルトくんが絡むと驚くぐらい行動的だよね。

 

そして改めて菊岡誠二郎と対面する。

 

「やれやれ……そんな古典的な方法で侵入を許してしまうとはね。セキュリティの見直しが必要かな」

 

菊岡から語られたのは軍事転用可能なAIの開発プロジェクト【プロジェクト・アリシゼーション】と自身が担当する【アリス・プロジェクト】。

 

《敵を殺せ》《人を殺すな》

この二つの相反する命令を自身の判断で実行できるAIを開発することこそが菊岡の目的。

 

そのために今までどれだけの人工フラクトライトが犠牲になったのか。

 

「十万の人工フラクトライトの命は、一人の自衛官のそれより軽いんだよ。感情で物を言う子供には理解できないかもしれないけどね」

 

「アルトの……颯真の言葉を借りるなら『ごちゃごちゃうるせぇな、仮初めとはいえ命を弄んでる奴が命の価値を語るんじゃねぇよ』ってとこかしら。答えなさい、颯真はどこ」

 

「確かに彼なら間違いなくそう言うだろうね……本来ならば三神颯真くんは六本木のSTLによる治療を行う予定だった。和人くんとの取引通りね。だけど彼もまたVR適正を買われ、ボクとは別のプロジェクトへ協力……いや強制されている」

 

「あっれー?菊岡二等陸佐、仲間外れは良くないなぁ。僕も混ぜてくれないと」

 

人の神経を逆撫でするのような気の抜けた声。

ヨレヨレの白衣に後ろに撫で付けた金髪、そして人を人として見ていない目。

 

外見でわかる。真っ当な研究者じゃない。

 

「主任……違うプロジェクト同士の接触および過干渉は禁止されているはずですが?」

 

「いいじゃん細かいことはさぁ。で君たち誰?」

 

「結城明日奈」

 

「朝田詩乃」

 

「へぇ~まぁどうでもいいんだけどね。それより人聞きが悪いじゃないか、まるで僕が被検体に実験を強制させてるみたいにさ」

 

「事実でしょう?【メガロス・プロジェクト】は元々、人工フラクトライトのみで行われる計画だったはず。計画に一切関係のない民間人をここへ運び込むだけでなく、颯真くんを巻き込むなんてーー」

 

「いやいやいや、嘘は良くないし、君が言える台詞じゃないなぁ。桐ヶ谷和人は以前からバイト名目でアンダーワールドにダイブさせられていた。記憶の消去はしてたみたいだけど、その程度で一般人を関わらせてません、なんて筋が通るとでも思ってる?それに君だって意識のない一般人を拉致同然にここへ運び込んだろ?君が先か僕が先かなんて些末な問題だよ」

 

「そんなこと関係ない!あなたたちは意識のない人間を都合良く利用しているだけ!そんなことがーー」

 

「少し黙れよ、おまえ」

 

シノンの激情は吐き捨てられた言葉に掻き消された。

 

「金切り声でキーキーと猿みたいにさぁ。少し考えればわかるだろ?僕たちは計画を完遂させたい。彼らはここのSTLで治療を受けられる。どっちにも損はないだろ?」

 

「主任、これ以上の干渉は妨害行為と見なし即時退室を求めます。もしこれを承諾頂けない場合はーー」

 

「あーあー分かったよ。邪魔者はさっさと消えますよ」

 

ひらひらと手を振りながら部屋を出ようとして

 

「あーっと被検体……ミカミだったっけ?ソレもアンダーワールドにいるからさ、会えたらよろしく言っといてよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……菊岡さん、あの人は」

 

「本名不明。判っているのは周りに主任と呼ばせていることと人格破綻者であり優秀な研究者であるということだけ」

 

「それで【メガロス・プロジェクト】って言うのは?あの男が統轄している以上、真っ当なプロジェクトじゃないのは目に見えてわかるけど」

 

「わざと敵を殺さず血を流させ行動不能にし、救助に来た敵を殺す。仲間の死体をトラップとして利用し誘き寄せて殺す。感情のないAIでは成し得ない人間本来の攻撃性・残虐性を学習させ効率良く敵を殺すAIを開発する。それが【メガロス・プロジェクト】さ」

 

もしそのAIが完成し戦場に投入されれば、より少ない時間と人材で戦況を変えることも可能だと言う。

しかし人道的見地から凍結されていた筈の計画。

 

だが主任がここへ赴任してきたと同時に再開したのだと言う。

 

「【メガロス・プロジェクト】に欠かせないのは他者への攻撃性の高い人物、つまり三神くんが該当する。間違いなく主任は三神くんに目を付けていると確信して、桐ヶ谷くんをここへ運び込み主任の目が逸れている内に六本木へ移動させる手筈だったんだ」

 

主任が三神さんに手が出せない内に【アリス・プロジェクト】を完遂させることができれば【メガロス・プロジェクト】を打ち切らせることができる。できなくとも三神さんを目覚めさせることができれば、と。

 

だけど和人くんをここへ運び込んだ時には三神さんは既に主任の手の中。

その時の顔は今でも忘れないと言う。

 

「君たちには本当に申し訳なく思っている。しかし、三神くんを無事に取り戻すためには【アリス・プロジェクト】の完遂が必須事項なんだ」

 

「いけ好かない奴ッスけどね」

 

「ふふ、比嘉くんは三神くんのこと毛嫌いしてたものね」

 

「当然ッスよ。口は悪いし人の機材は勝手に使うし、もう散々だったんスから」

 

そういえば三神さんも同じ重村研究室に通ってたんだよね。

 

茅場晶彦、須郷伸之、比嘉健、神代凛子、そして後沢鋭ニ(エイジ)

事件の関係者に重村研究室の人間が関わっているのは、単なる偶然なんだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁヴァサゴ……それともPoHって呼んだ方がいいかな?役者は揃った。お膳立ても時間は掛かるけど問題なく。タイミングは知らせるからって今のボスに伝えといてよ」

 

『了解だ、ブラザー』

 

「『It's show time』」




投稿を始め今日で一周年!
100話突破記念と合わせて番外編で何かを書こうと思っています。詳しくは活動報告をご覧ください。
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