sword art onlineー黒と灰ー   作:戒斗

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改訂版です
レンとの戦闘の他、描写を書き直しました。


第二回SQUAD(スクワッド)JAM (ジャム)

「他のチームが結託してこっちに向かってるぅ?」

 

「ああ、七チームが結託してリーダーを除いた総勢二十九名がな」

 

二十九人か……大所帯でゾロゾロと雁首揃えてきたか。

 

「どうする?」

 

「高い金を払って用心棒まで雇ってるんだから、そんなの決まってるでしょ?」

 

「「皆殺しよ(皆殺しだ)」」

 

「おぉ?先生ぇ分かってるねぇ」

 

「馴れ馴れしくすんな。金を積まれた以上それに見合った仕事をする、それだけだ」

 

「あっははは!仕事人だねぇ」

 

自分にできることをやる。ソレすらできねぇ奴がやっていけるほど世の中甘くねぇよ。

 

「あっそうそう!レンちゃんは私の獲物だから手を出したら……殺すよ?」

 

「へぇへぇ、露払いに徹してればいいんだろ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ピト……本当にあいつは信用できるのか?」

 

「なによエム、私の目を信用できないの?」

 

「いや、そういうわけじゃないが……」

 

奴には敵も味方もない。ただその場の判断で誰が敵かを決めている。直感だが奴からはそんな危うい空気を感じる。

 

もしかすれば、寝首を掻かれる可能性も……

 

「だいじょーぶよ。あの手の人間は積まれた金の分の仕事はするタイプだし、そう簡単に死ぬ人間でもないしね」

 

「何故そう言い切れる」

 

「あいつがSAOサバイバーだからよ」

 

「なっ!?」

 

「【双刃】……エムだって聞いたことぐらいはあるでしょ?」

 

「SAO攻略組【双刃】アルト……それがあの【ミヌアーノ】だと?アバター名が一致するとはいえ、本当に本人かどうかはーー」

 

「あの身のこなし、相手の動きを先読みする観察眼……なにより私と同じ匂いがする。私と同類の匂いがね」

 

ピトと奴を戦わせることはできない。奴が本当に【双刃】なら彼女より実力は上だろう。

だとしたらーー

 

「信じられる!?SAOの攻略組でこの広いGGOで巡り会えるなんて、これはまさしく運命よ!アハ………アハハハハハ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「鳥肌が立ってきた……」

 

いつも通り、辻斬りでドロップ品を漁っていたところを毒鳥(ピトフーイ)に見つかり、金を弾むからとSJに参加要請。

 

別段、断る理由もなく当分は金銭に困らない額だったので了承ーーしたはいいが……、

 

「ピトフーイならぬフッケバインだったか」

 

醜い脚という意味だがドイツの絵本に出てくる悪戯好きのカラスから転じて不幸をもたらす凶鳥と言う意味もあり、戦闘機のコードネームなんかに使われてる。傍若無人なあの女にはピッタリだろう。

 

戦いと言うよりも殺し殺されることを愉しんでる、そんな節もありなるべく避けてきたんだが、あまり付きまとわれても俺が困る。

あの女、結構しつこそうだしな。

 

「お、やっときたか」

 

「【ミヌアーノ】!?」

 

「たった一人でこの数を相手にする気か!?」

 

「数だけいたってしょうがねぇだろ。クライアントからの命令でな。お前ら全員皆殺しだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おぉ~やってるやってる!」

 

「信じられん」

 

完全武装のプレイヤー二十人を相手に刀一本で立ち回ってる。直撃弾のみを選別して刀で弾き、距離を詰め切り捨てる。

 

第三回BOBの映像は見ていたが、実際に目にして見れば異常の一言に尽きる。

 

「だから言ったでしょ?そう簡単に死ぬ人間じゃないって。ああ~!いいねぇ!最後はあいつと殺し合いたいな~」

 

「ピト」

 

「なによ~」

 

「アイツとは戦うな。頼むから戦わないでくれ」

 

言っても聞く耳を持たないのは身を以て知っているが、それでも言わざるを得ない。

 

敵対すれば容赦も慈悲もなく斬り捨てるだろう。そうなればピトはーー

 

「言っとくけど、邪魔したら殺すよ」

 

 

 

 

 

 

 

「片付いたぞ」

 

「お疲れ~あと残ってるのはレンちゃんのチームと【MMTM】、【SHINC】それと……【T-S】か~」

 

「一つ減ってるな」

 

「ソレならさっき片付けたわ」

 

「仕事が早いことで……なら、あとは俺の独断でいいんだな?」

 

「【LF】ってチームに手を出さないならね」

 

「【LF】……それが例の?」

 

「そ、レンちゃんのチーム」

 

「了解した。【LF】以外のチームは喰っちまっても良いってことだな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「倒した……?」

 

喉に噛みつくという野性的な倒し方だったけど、ピトさんのHPはゼロで死亡判定も出てる。

 

私……勝ったんだ。あのピトさんに……

 

「おめでとさん、と言いてぇとこだが満身創痍で呆けてんのは感心しねぇな」

 

突然の声に身構えながら周囲を見渡すけど人影はない。

だけどこの声どこかでーー

 

「おっと悪いな。これじゃ見えねぇか」

 

何もない筈の空間にボロボロのマントを纏ったプレイヤーが現れた。

 

メタマテリアル光歪曲迷彩(オプチカル・カモ)だ。効果は身を以て知ってたが凶悪だな、こりゃ。これ買うのに手付金が全部吹き飛ぶとは思わなかったが」

 

マントをストレージにしまいその姿が露になる。

対弾防護スーツに左右非対称の両腕、後ろ腰に回した一振りの刀。

……左手に何か持ってる?

 

「あなたは……」

 

その姿はよく知ってる。

一度だけ対峙したことがある。

 

「……成る程。お前がレンだったのか」

 

「レン、誰こいつ」

 

「【ミヌアーノ】……」

 

GGOで物好きにも刀で戦いその名を広めて、人のことを脳内ピンクとか言うとにかく失礼な奴。

 

「フカ……武器は?」

 

「文字通り丸腰。レンは?」

 

「私も」

 

クラレンスから譲って貰った(奪った)弾倉はあるけど肝心の銃がない。

 

「そんな身構えんな。確かに殺し損ねた分、次は確実に殺すとは言ったが丸腰相手にな」

 

「それじゃ他のチームのところに行ったら?」

 

そう言えば、左手に持ってた物を無造作に放り投げた。グレネードかと身構えたけど、足元に転がって来たのはフルフェイスヘルメットの頭つまり生首。

 

「残ってんのはお前らと毒鳥(ピトフーイ)のチームに入ってる俺だけだ。こいつらはお前らが戦い終わんのを物陰で見てた。チキンプレイ自体に文句は言わねぇが、せっかくの決闘を台無しにさせるのもな」

 

アフターサービスって奴だ、と皮肉げに笑って見せる。

 

呆けてるのは感心しない。

つまり【ミヌアーノ】が倒してなければ私たちが殺されてた?

 

「ようやく理解が追い付いたって顔だな。ま、油断してる方が悪い。ここはGGOなんだからな」

 

……そうだ。ここはGGO。油断してる方が悪い。

 

「クライアントからの命令はお前たちが心置きなく戦えるように露払いに徹することであって優勝じゃねぇ。仇討ちは依頼に入ってねぇし興味もねぇから、優勝はお前らに譲っても良い。お前らがそれをよしとするなら、な」

 

「マジか……なぁレンーー」

 

「ふざけるな!勝ちを譲る?勝利は自分の手でもぎ取る!譲って貰った勝ちに意味なんてない!!」

 

「へぇ……」

 

銃がないならナイフで、ナイフがないなら素手で、それもないなら噛み付いてでも!

 

「クッ……ハハハハ!!いいねぇ!気に入った!最近はタマナシ共が多くてな!手応えもねぇから飽きてたとこだが、女にしておくのが勿体ねぇ上物が来たもんだ!」

 

えぇ……。この感じ、ピトさんと同じだ。

 

「ごめんフカ、地雷踏んだかも」

 

「いいってことよ。最後の一戦はド派手に行こうか」

 

銃はなし。ナイフは地面に転がってる。

倒すのは無理でもせめて一矢報いる!

 

運が味方したのか私たちの間を割るように間欠泉が噴き上げ視界が遮られ、それと同時に地面に転がってるナイフを拾い上げ、フカと二手に別れて挟み込むように回り込む。

 

だけど回り込んだ先には誰もおらず、危うくフカと激突するところだった。

 

「ッ!フカ!」

 

「うぁっとぉ!?」

 

噴き上げてる間欠泉の中から紅い刀身が飛び出し、仰向けに倒れたフカの両腕が宙を舞った。

少しでも遅れてたらフカの頭が飛んでた。

 

間欠泉の中に入るなんて非常識過ぎる!

 

「スリップダメージはあるが即死するほどでもねぇ。ここはゲームの中、常識に囚われ過ぎんのも考えもんだぞ」

 

なら!

 

「無策の特攻……じゃねぇよな!」

 

ポーチに詰めれるだけ詰めてたマガジンを取り出し【ミヌアーノ】目掛け投げ付ける。

当然当たらない。だけどあの刀が他所に向いてる今ならーー

 

「言ったろ。常識に囚われ過ぎんのも考えもんだってな」

 

突き出したナイフは左手を貫くだけに終わり、投げ飛ばされてフカの上に落ちた。

 

「やっぱ戦意が滾ってる奴の方が殺し甲斐があるよなぁ」

 

足音が近づいてる。あと3メートルもない。

 

「ダメだこりゃ。勝てるビジョンが全く浮かばん」

 

「……だね」

 

「……なんだよ。もう諦めたのか?チッ、なら二人仲良く殺してやるよ」

 

微かに聞こえる金属音。刀を振り上げた音。

 

「今だ!」

 

ストレージに残ってた最後のマガジンを投げ付ける。

咄嗟に刀で斬り裂いた瞬間マガジン内の銃弾が暴発。周囲に撒き散らされた。

 

「クソッ!」

 

左手で両目を抑えてる。暴発した弾が当たったんだ!なら回復する3分の間に仕留める!

 

『首や大腿部には主要な血管がある。そこをナイフで斬りつけるだけでも大きなダメージが見込める』

 

エムさんに教わった通りに右の太ももをナイフで斬り付け、膝を突いたところで首目掛けーー

 

「こ、の……舐めんなぁ!」

 

首狙いのナイフの刃を掴まれ、刀の切っ先が真っ直ぐにこちらに向けられる。

 

「レン!」

 

「そういや、もう一人いたよな!」

 

刀を逆手に持ち変えフカの喉を突き刺した。

目が見えないのにどうやって位置をーー

 

「まず一人、次はお前だ」

 

逆手のまま振るわれた凶刃をナイフを手放して全力で飛び退く。

 

「俺の目を潰したのは流石だが、目が見なくてもお前の位置は判るぞ」

 

一気に距離を詰めて振るわれた凶刃を避けながら、距離を離そうにもピッタリと正確に私の場所を狙ってくる。

 

どうやって…………そうか、音だ。水を跳ね上げる音で私の場所を把握してるんだ。

 

そうと分かればーー

 

「……動き回りもしねぇ。流石に気付かれたか」

 

僅かにある岩場に跳び移り、息を潜めてみれば足を止めて周りの様子を窺ってる。

 

「……いつまでこうしてるつもりだ。時間制限はねぇし、俺の目が回復すりゃ得物もねぇお前には万に一つも勝ち目はねぇぞ」

 

距離はギリギリ届く。

間欠泉の音に合わせてーー今!

 

「しゃらくせぇ!」

 

刃先が左肩を掠め、そのまま斬り飛ばされた。

だからどうした!

 

ここで距離を開ければ砂粒ほどの勝機もなくなる。なら、とにかく前に!

 

頭上を飛び越え、刀を鞘に納めた【ミヌアーノ】に拾い上げたナイフを手にして詰め寄る。

 

柄に手を掛けてない。なら私の方が迅い。

なのにーー

 

銃声が聞こえたと同時に視界が180度回転した。

私が見たのは昔テレビで見た居合い斬りの体勢をした【ミヌアーノ】の姿だった。

 

「俺の……勝ちだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ピトさんのチームが優勝を飾った。

 

【ミヌアーノ】が使ってた刀について調べてみれば、《M16》の機構を鞘に取り入れて引き金を引くことで撃鉄が雷管を叩き火薬を爆発させる。その爆発を受けスパイクが打ち出され鍔を押し出すというもの。

 

銃弾じゃないからバレットラインも出ない。

というよりも銃弾と同じスピードで打ち出されたそれを空中で掴むとか人間業じゃない。

それを知らず反応も出来ずに斬られた私も悪いのだけど。

 

 

まぁそれはそれとして豪志さんの案内でピトさんのリアル、神崎エルザさんと対面したその日もう一つの出会いがあった。

 

「それともう一つ、皆さんに会わせたい方をお連れしてます」

 

「なんだい豪志くん、そんな話は聞いてないぞ」

 

「ええ、僕も今はじめて話しましたから」

 

楽屋のドアが開かれ入ってきたのは灰色の髪をした男性。吊り上がった三白眼が周りを威圧してる印象を受ける。

 

「彼はーー」

 

「三神颯真。【ミヌアーノ】ことアルトのリアルだ。そこのストーカーがしつこくてな。渋々来てやった」

 

なんでもGGOで連日リアルで会って欲しい人がいると連絡をしたそうだ。

 

「お前がレンか?GGOで見かけたら真っ先に殺しに行ってやる。覚悟しとけデカ女」

 

リアルでも失礼な人だった。

 

「彼はSAOサバイバーです」

 

「「え?」」

 

「よくやった豪志くん!あとでご褒美をやろう!」

 

え?SAOサバイバー?

……もう頭がパンクしそう……。




レンに負けて死ぬことを止めたピトなら会わせても大丈夫というエムの判断。
連日2m近い男にリアルで会いたいと言われる。
心が折れますわ。
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