「魔剣だぁ?」
「まだ噂程度なんだけどな」
日課になりつつあるALOでの馬鹿話の途中で切り出されたレア武器の話題。
毎度思うがどっからそんな情報仕入れてんだか。
「前のアップデートで世界樹近くにダンジョンが出来たみたいなんだ。その入口に立ってるNPCによるとーー」
「一番奥に魔剣があって取ってきた奴にそれをやる、ってところか」
「そういうこと。ALOは北欧神話を題材にしてるだろ?アルトなら詳しいんじゃないかって」
「人を辞書扱いすんじゃねぇ」
北欧神話に出てくる魔剣……。
有名どこならフラガラッハとかカラドボルグとかその辺りだな。
「そんなことよりも《光弓シェキナー》を取りに行きたいんだけど」
「さも当然のようにレジェンダリー要求すんな」
……不満そうに尻尾を振るな。
「レアリティまでは分からなかったけど、魔剣って言うくらいなら《グラム》みたいな特殊能力は期待できるはず」
エアリアルシフトだったか?
透過能力持ちで防御貫通効果があったが、種が割ればどうってこともねぇ。持ち主のプレイヤースキルも高かったが、能力に頼りすぎてる節もあった。
「この借りはいつか精神的に返すからさ」
「ちょっと待て、俺が行く前提で話を進めんな」
「とか言いながら、しっかり準備はするのよね」
黙れシノン。
「なぁ、あんたらこの洞窟に潜るのか?この洞窟の奥には金銀財宝があるらしいんだが、恐ろしいドラゴンが守ってるって噂だ。そのドラゴンを倒してくれれば財宝の半分をあんたらにやるよ」
《ラインの黄金》
「金銀財宝ねぇ、そんな話聞いてねぇんだが?」
「言ってないからな」
「よろしくね!シノのん」
「ええ、よろしくアスナ」
最近このパーティで固定されつつあるな。
「?ユイはどうした?」
「お留守番です。シリカちゃんとリズもが見ててくれるってくれたから」
「子供を置いて両親が外でイチャついてるとか、感心しねぇな」
「「アルト(くん)!!」」
「アルトはこっちでもこんな調子なのね」
人をどうしようもねぇ奴みたいに言うんじゃねぇ。
「それじゃ前衛は俺とアルト後衛はシノン、アスナは状況に応じて、出来れば回復メインでやってくれると助かる」
中は結構広かった。四人が横に並んでもまだ余裕がある。にしてもーー
「なにも出ねぇな」
「一回くらいはモンスターとエンカウントしてもいい筈なんだけどな」
ダンジョンはフィールドに比べてエンカウント率は高く設定されてるはず。なのにまだ一度もエンカウントするどころか見掛けもしない。
「消耗が抑えれるから良しってことで」
「あーウズウズする」
「お前も抑えろ戦闘狂」
「失礼なこと言うんじゃねぇ」
「アルトも大概失礼だけど」
尻尾引き抜くぞこのやろう。
「分かれ道か」
右か左か。どっち行っても同じようなもんだろうな。
「それじゃ俺とアスナは左に行くから、アルトとシノンは右を頼む」
「あいさ」
「了解」
「ねぇ」
「んー?」
「貴方とあの変態はいつもあんな調子なの?」
「いつも馬鹿やってるのかって?まぁな」
前を進むアルトに問い掛けてみれば肯定。
「学校じゃ話の合わねぇ連中ばっかだからな。その分ここで羽目を外してる。もし、あいつらと同年代だったら学校も退屈しなかった。そう考えることもあるが、仮にそうだったとしても今みたいな馬鹿はやってねぇだろうな」
「どうして?」
「簡単な話だ。俺たちはSAOで文字通り命を預け合ったから、お互い遠慮せずに馬鹿やれてる。喪うものもあったが、確かに得るものもあった。その繋がりは日常を謳歌してるだけじゃ絶対に得ることのできない絆だ」
信用して信頼して遠慮の要らない関係……。
アルトたちが命懸けで戦って育んだ絆。
私はどうなんだろう?どう思われてるのか。
「ねぇアルト……ウッ!」
「シノン!」
噴出音と共に噴き出た紫色の見るからに毒と判るガスを吸い込んでしまった。
「おい!大丈夫かシノン!」
「え、えぇ……毒のアイコンも出てないから吸い込んだ量が少なかったのかも」
「はぁ……あんま気ぃ抜くな」
「ええーー偉そうにしないで」
え?
「あ"?」
「あ、これは違うのーー私の従僕にしてあげる」
なにこれ……声が勝手に……。
「………………」
「下僕とか私の趣味じゃなくてーーイイ声で啼いてみせなさい?」
ああ!もう!なにこれ!
「……プッ……アハハハ!!成る程、さっきのガスか」
ガス?
「SAOにも同じようなモンがあってな、あっちじゃキノコでな?それをキリトに食わせたあとアスナの家に放り込んでやったら……プッ……アハハハ!」
SAOでも?ってそんなのはどうでもよくて!
「どうすれば治るの?ーーそんなのも分からないの?」
「あ、ああ。バフデバフと同じで時間経過で自然に治る……クフッ……アハハハ!だ、ダメだ!思い出しただけでも笑いが……ハハハ!!」
「笑ってる場合じゃないでしょ!ーーこの従僕」
一方その頃
「違うのキリトくん!声が勝手にーー跪いて赦しを請いなさい女顔」
「止めてくれアスナ、俺のライフはもうゼロだ……」
「お?キリト」
「アルトか。分かれ道でも結局もとの一本道に戻るのか」
「どうした今にも死にそうな顔して」
「な、なんでもない。な?、アスナ」
「え!?う、うん。なんでもないよ?本当だよ?」
アスナは隠し事が下手だな。
「ふぅん。まぁなんにせよ、ここが最深部。つまりーー」
地鳴りのような呻き声、胸に刻まれた青白い紋様、鱗と甲殻に包まれた巨躯、爬虫類を思わせる縦に裂けた瞳孔。
《Fafnir》
ニーベルングの指環に出てくるラインの黄金を守護する魔竜ファフニール。
伝承では鋼のような鱗と毒のブレスを吐くドラゴンとして描かれてる。元は人間だけどな。
つーことは手に入る魔剣ってのはーー
「来るぞ!散開!」
地面を踏み砕かんばかりのストンピングを避け、ストンピングをした足を支点に全方向を凪ぎ払う尾撃をやり過ごす。
随分アクロバティックな動きをしやがる。
反撃とばかりに大剣を叩き付けるがーー
やっぱ硬ぇ……!
分かってはいたが、まるで金属の塊を斬りつけたかのような甲高い音と共に弾かれる。
「どうする」
「SSかなぁやっぱり」
上位のSSなら魔法属性を持つ。物理は駄目でも魔法なら通るか?
結果は通りはしたものの与えたダメージは微々たるもの。これじゃ何時間掛かるか分かったもんじゃねぇし、奴を倒す前にこっちがジリ貧だ。
思い出せ、ファフニールはどうやって倒された。
「アルト!奥!」
山のように積まれた財宝の中でも一際目を引く大剣。
あれが……。
「ヘイトは俺たちに任せろ!アルトはあれを!」
「任せたぞ相棒」
拳を打ち合わせたと同時に左右に別れる。
財宝に足を取られながも財宝の山に突き刺さった大剣の元まで走る。
《魔剣ノートゥング》
柄に手を掛ければそんなウィンドウが表示され長々と説明文が流れるが知ったことか。
《ノートゥング》を取られたことに事に気付いたファフニールがキリトたちに目もくれず真っ直ぐに向かってきた。
《ノートゥング》を構えればSSを使うためのSPが減ってることに気を取られたが奴の鉤爪を避けて顔面目掛けて振り抜く。
すると光の奔流が《ノートゥング》から放たれファフニールを消し飛ばした。
……なんか出た……。
ハプニングもあったが無事《魔剣ノートゥング》と多くの財宝を手に入れることに成功し、ささやかな打ち上げをすることになった。
《魔剣ノートゥング》
ドラゴン特攻にSPを消費して消費した分を飛ぶ斬撃として放つ。
斬撃じゃなくてビームだったけどな。
「それじゃアルト、《ノートゥング》についての伝承をどうぞ」
「しばき倒すぞテメェ」
《ノートゥング》
ニーベルングの指環に出てくる英雄ジークフリートが振るったとされる剣。
バルムンクとも呼ばれるが、そっちはニーベルンゲンの歌での呼称で、実はノートゥングもバルムンクも元は魔剣グラムの別称だったりする。
元々はジークフリートの父シグムントが所有していて、主神オーディンとノルニル三姉妹の加護を受けていた。
シグムントの妻となるヒョルディースはフンディングという王族からも求婚されていたが、シグムントを選んだことに激怒、ヒョルディースとシグムントの国へと軍勢を差し向けた。
主神オーディンとノルニル三姉妹の加護を受けた剣を振るうシグムントは優勢であったが、突然オーディンが現れグラムを折ってしまった。
老齢に加え、剣の加護を無くして命運尽きたシグムントは、折れた剣をヒョルディースに託し、「その剣から新たな剣が生まれるだろう」と言い残して息を引き取った。
「そしてニーベルングの指環でファフニール討伐のために名剣を探していたジークフリートが折れたグラムを見つけ鍛え直したのがバルムンクであり、ノートゥングと言うわけだ……ってなんつー目で見てやがる」
「詳しすぎでしょ。流石の私も引くわ」
「もー、リズさん。せっかくアルトさんが話してくれたのにその反応はひどいですよ」
「そういうシリカも顔が引き吊ってるけどな」
決めた。何があっても伝説やら伝承やらは絶対に話さねぇ。絶対にだ。
ビームを撃ててこそのセイバーなのでアルトにも撃って貰いました(笑)
今日は七夕ですし、七夕イベントの方がよかったかな?
シノンに蔑まされたい()