やっぱり、戦闘シーン合う曲を聞きながら書くのは良いですね。
「なぁ【軍】の連中もう帰っちまったんじゃないのか?」
クラインの言う通り後はボス部屋へと続く一本道だけだ。
コバ
「もしそうならレベル上げがてら街に戻れば良いだけだ」
まぁ、あの様子なら引き上げている可能性は低いだろうな。
【軍】の連中は凝り固まったプライドの塊のような奴等だ。キリトの忠告でプライドを刺激されたら是が非でも行動に移すだろう。
その結果がどうなるか、最悪の可能性すら考えることなく。
最初と同じように骸骨剣士《デモニッシュ・サーバント》を蹴散らしながら、ボス部屋の前まで到達する。
「うぁぁぁぁぁぁぁ・・・・」
消え入りそうな悲鳴が響きボス部屋から一人の男が投げ出された。目元を覆っていたヘルメットが砕け、男の顔は驚愕の色に染まっていた。
防具の耐久値が限界を迎えたということは、クリティカルをもらったのか、よほど手痛い一撃を防ぎきれなかったのか。
どちらにせよ判断ミスの代償を自分の命で払った。それだけだ。
「だからキリトが言ったろうが、テメェ等じゃボス攻略は無理だってな」
「あ、ありえない・・・」
それは俺に向けた言葉か、己の命が刈り取られたことか。
声からコバ
ボス部屋からは剣戟の音が僅かに聞こえる。
生き残りがまだいるのか。
「駄目ーー!!」
悲痛な声と共にアスナが細剣に手をかけながらグリームアイズに向かっていってしまった。確かに彼女の剣技であればグリームアイズの注意を【軍】から引き離すことが出来るかもしれないが、それは同時に彼女自身が狙われることとなる。
「待て、アスナッ!!」
キリトも彼女の後を追いボス部屋に駆け込み、俺もそれに続いて駆け、背後ではクライン達もやぶれかぶれで入ってきた。彼らも恐怖はあるだろう、しかし、それ以上に目の前の地獄絵図をただ傍観することはその場にいる誰にも出来なかった。
再び視線をグリームアイズに戻すと、アスナの細剣が不意打ちの形で決まっていた。しかし、HPは殆ど減っていない。グリームアイズはその光り輝く双眸でアスナを睨みつけると彼女に向かって巨剣を振り下ろす。
弾かれるようにそれを避けるアスナだが、余波が凄まじく地面に転がってしまう。その隙を突くようにグリームアイズが第二撃を叩き込もうとしたが、間に入ったキリトがその攻撃を受け止める。
だが片手剣一本であの巨剣の一撃を耐えるのははっきり言って無謀だ。
「クライン、【風林火山】のメンバーで【軍】の奴等を頼む」
「おうよ!」
「キリト! そのままあと一撃耐えてくれ!」
「わかった!!」
【ファラン】を両手で握り手首を返して切っ先を地面ギリギリまで下げる。
大剣の重突撃ソードスキル《アーヴェント》
その名の通り、赤い光を纏い中空に赤い剣閃が描かれる。
輝く剣閃は的確にグリームアイズの足首を捉え、ヤツはそのまま膝を付いた。それでもHPバーはまだまだ残っている。
グリームアイズの正面に陣取り
俺がこのまま囮になったところでグリームアイズが俺だけに狙いを定めてくれるとは限らない。もし少しでもヤツがほかの連中に気が付けば、確実にそちらを狙いに行くだろう。HPが三割を切っている【軍】の奴等が攻撃を受ければ一撃で持っていかれるだろう。
答えは一つしかない。
「キリト、アスナ、クライン、もう四の五の言ってる暇はねぇ、コイツはここで倒すぞ! ヤツの攻撃はオレが全部受け止めるから、その隙にソードスキルをぶち込め!!」
切羽詰った俺の声に三人は返事はしなかったがそれぞれ頷くと、クラインはグリームアイズの足元へ、キリトとアスナは胴体へ向かってソードスキルを放つ。
連続して放たれるソードスキルにグリームアイズのHPバーは先ほど以上に早く減少していくがそれでもまだ足りない。
その光景を攻撃を受け止めつつ見やる俺は自身の残りのライフを確認した。攻撃は全てガードできているといっても、ガードは万能というわけではなく、少しずつだがHPは減少する。ライフは三割方減っていてまだグリーンゾーンではあるものの、このままのペースだと最悪の場合、全員が死ぬ可能性も出てくる。
・・・やるしかねぇか。
左手を後ろ腰へ回し、振り下ろされた巨剣の一撃を赤い外套で隠されていたそれを引き抜くと同時に巨剣の横っ面に叩きつける。
逸られた一撃にグリームアイズの体勢が前のめりに崩れ、体をそのまま時計回りに回転させつつ前進、右膝の裏目掛け【ファラン】を振り抜く。
振り抜いた体勢を先程とは逆に回転させ遠心力が存分に乗った一撃を奴の首目掛け、思い切り叩きつける。
たたらを踏みつつも、すぐさま巨剣を振りかざすのを確認するよりも早く、重心を下げ【ファラン】を引きずるように疾走する。
両手に握った武器にソードスキルの光が灯る。
振り下ろされた一撃を再び左手の武器で弾き、右手の【ファラン】を右下から斬り上げ、勢いを殺さず体を回転させ手首を返した左の短剣で右から横一閃、真上から【ファラン】をグリームアイズの頭目掛け振り下ろす。
今度こそ完全に体勢を崩したグリームアイズは背中から地面に倒れ込む。
「アルト、お前それ・・・」
俺の左手に握られていたのはククリナイフもしくは鉤を思わせる異形の刃を持つ短刀。
別にそれ自体は珍しいものではない。
肝心なのは
本来ソードスキルは武器を一振りのみ装備している時のみ発動できる。
武器を両手に装備した場合、システムエラーが起こりソードスキルを放つどころかシステムも立ち上がらない。
俺が装備している防具をドロップしたボスを討伐した時に発現したスキル《特双剣》。
大剣と短刀を同時に装備でき、専用のソードスキルを発動できる他、短刀で相手の攻撃をパリィしたとき、STR値が上回っていた場合相手の体勢を完全に崩し初撃のみダメージに補正が掛かる。
初撃が連撃系ソードスキルの場合は連撃全てに補正が掛かる。
「奥の手を出したんだ。確実に倒させてもらう」
アルトもユニークスキルを?
俺ことキリトは目の前の光景に思わず剣を振るうことを忘れ、見とれてしまった。
鉤状の刃を持つ短剣でグリームアイズの一撃を弾き、体勢を崩したところに大剣の一撃を与えていく。
短剣によるパリィからの一撃はダメージレートに補正が掛かっているのか、既にHPバーの二本目のレッドゾーンまで削れている。
だが、それでも一人じゃ火力が足りない。
何より通常の武器防御よりもHPバーの減りは遅いが、このままじゃジリ貧になる。
・・・俺もやるしかないのか。
「頼む、あと十秒耐えてくれ!!」
キリトの声に返事をすることなく振り下ろされた巨剣を弾くことで了承の意を伝える。オレンジ色の火花が散り、俺の頬を掠めた。
だがグリームアイズは止まらない。大木のような豪腕でオレを殴りつけた後、再び鈍い光を放つ剣を振るう。
「大盤振る舞いだ」
グリームアイズに背を向け、【ファラン】を背負うようにして奴の攻撃を防ぎ、一瞬の停滞を見逃すことなく体を半回転。同時に振り上げの一撃で巨剣を弾き返し一気に肉薄する。
完全にがら空きになった懐に潜り込み、ソードスキルを発動させた。
特双剣の上位連撃ソードスキル、その名も。
「ナインライヴス」
両手の得物での高速九連撃。
最後の交差した両手で斬り開く二閃には吹き飛ばしと僅かなスタン効果があるが、当然ソードスキル後の硬直も長い。
HPバーはあと三本。任せたぞ、キリト。
「キリト! スイッチ!!」
掛け声と共にキリトが俺の真横を疾走する。
その瞬間俺は目撃した。彼が握っている剣が一つではないことに。
右手にはいつもの漆黒の剣【エリュシデータ】。そしてさらに左手には緑青色とでも言うべき鮮やかな色の剣が握られていた。
二振りの剣による同時攻撃でグリームアイズはその場で大きく仰け反り、胸にはクロスするようなダメージエフェクトが刻まれている。
「スターバースト・ストリーム・・・!」
名は体を表す。
成る程その通りだと思った。
二振りの剣の斬撃とそれに灯ったソードスキルの光ポリゴンが弾け消えていく様はまさに星の燐光だろう。
グリームアイズが最後のあがきとばかりに、左手で今まさに自身を斬り裂こうとした【エリュシデータ】の一撃を受け止め、あれだけ連撃を受けながらも手放さなかったその巨剣で、キリトを貫かんとばかりに突き出されるがそうは問屋が卸さない。
特双剣の重突撃スキル《ウルプス》
構えは《アーヴェント》と同一。左手の短剣ごと【ファラン】の柄を掴み、疾走する。
狙いは勿論、初速を終えそのままの勢いでキリトを貫かんとする凶刃。
「あああぁあぁ!!」
金属同士が弾き合う音と火花を散らし、緑青色の剣による突きがグリームアイズの胴体に突き刺さった。
一拍おいて砕け散るグリームアイズだったポリゴン。
congratulationsの文字が宙を踊るがそんなものに割ける気力もなく俺とキリトは互いに背を預けて座り込んでしまった。
「よう相棒。まだ生きてるか?」
「死んでたら返事出来ないよ、相棒」
「様式美だ分かれよ馬鹿」
首の力だけでキリトの後頭部に自分の後頭部をぶつける。
俺もキリトも互いに数ドットだけHPを残している状態だった。
【軍】がグリームアイズのHPを僅かでも削っていなかったら、アスナのソードスキルが決まっていなかったら、俺が一度でも攻撃を捌くのをミスしていたら。
何か一つでも欠けていたら、勝てるはずもなかった薄氷の勝利を確かに掴んだのである。
分かる人もいると思いますが、特双剣で放った最初のソードスキルはファランの不死隊がボス戦で使っていたものをイメージしています。
他にもナインライヴス、高速九連撃で分かる人がいると思います。
ボスを倒すのはキリトに譲りましたが、作者が十六連撃だけで削り切れないだろ、ということで主人公にはHPバーを三本削ってもらいました。
初めての試みとしてキリト視点を少しだけいれてみました。
見辛いようでしたら、一話毎に視点を固定したいと思います。