ヒースクリフとキリトの決闘から数日が経った。
キリトの【血盟騎士団】としての初任務。七十四階層でアスナのストーカーをしていたクラゲ野郎が【
任務の引率役であった【血盟騎士団】隊員を殺害。
キリトも殺そうとしたが、嫌な予感がすると首根っこを捕まれ連れ回された俺とアスナによって阻止され、クラゲ野郎は黒鉄宮にぶち込まれることに相成った。
キリトのことしか頭になかったのだろう。
地面に引き摺られる俺の制止を無視して、アスナはただひたすらに駆けた。【閃光】の名に恥じない疾走振りだった。
その時の詳しい描写?思い出したくもない。
言いたい事が一つあるとすれば【ファラン】を背負った俺をどうすればアスナの筋力値で引き摺り回せるのか、なのだが詳しいことを気にすれば負けだろう。
その事件があって、キリトとアスナは結婚。
吊り橋効果
それ以外の問題と言えばーー
「ああぁ~~」
自宅のベッドでゾンビの如く呻きながら悶える俺なのだが。
なにが
あぁ恥ずい!穴があるなら入りたい!!
クラゲ野郎の両足を斬り飛ばし、切っ先を突きつけながら思わず口から出てしまった言葉。
今の俺の心境を表すなら、
「
「アァァルゴォォォ!!」
「ニャハハハ!」
アルゴに傷口を抉られ、心傷を抱えたまま取り合えずリズのところに向かったのだがそれが間違いだと気付けていなかった。
「
「ガフッ」
入店早々、俺の姿を見るなりそう
「何で知ってんだよ!?」
「昨日アスナに相談されたのよ。アルトとキリトが
アスナさん!?相談内容は百歩譲っていいとしても言わなくていいことがあるんじゃねぇ!?
「もう一思いに殺してくれ」
「目が死んでる!?」
「それで今日は何の用?大剣と短剣の研磨は昨日したばかりでしょ?」
確かに武器の研磨は昨日済ませてある。
大剣と短剣。二つ合わせて【ファラン】と銘打たれたそれは、耐久値がそれぞれ別でありながら一つの武器として分類される特異な物。
一つの武器として分類される事から、パリィからのダメージ補正はこの短剣からでなければならないし、逆に耐久値が別だから状況に応じて使い分けもできる。
便利なのか不便なのか。
そんなことはどうでもいいんだよ。
「あ~それなんだけどな」
「珍しいわね。アンタが言い淀むなんて」
失礼な。俺だって思い悩むことぐらいあるっつの。
「リズはアイツらの結婚祝い、なに贈った?」
「結婚祝い?私は食器よ。多くあっても困らないし」
食器か。確かに数に限度はあるだろうが無難なところだな。エギルのやつは調理器具一式だって言ってたし。
「アンタまさか・・・」
「こうゆーのは初めてだからな。正直勝手が分からん」
同じ十代で結婚した奴に何を贈れば良いかなんぞ分かるわけがない。と言いたいが、リズは特に悩むことなく食器を選んだらしいから俺がズレてんのか?
「まぁ変なとこで真面目なアンタらしいちゃあらしいわね」
「うっせ」
「別に高いものじゃないとダメって訳でもないんだから、なにか食材とかでもいいんじゃない?要は心が籠ってればいいのよ」
食材、食材か。
「サンキュー、リズ。参考になった」
「お得意様の相談に乗るのも商売の基本よ」
勿論相談料として金を取られた。
逞しい商売根性だよ。ホント。
あのあと数日間、目的の物が手に入るまでひたすらフィールドを回った。
アルゴに情報を買って、からかわれ。
エギルに備品を買って、からかわれ。
クラインからは特になかったが殴っておいた。
正に理由のない暴力がクラインを襲うってやつだな。
アルゴからの情報で俺にも二つ名がついたらしい。
というのも、グリームアイズの討伐でキリトの記事だけでなく俺のことも少なからず書いてあったらしく、大剣と短剣を使う様から【双刃】。
何の捻りもないことで。
だがそのお陰で、こうして人目も気にせず振るえるのだから良かったと思うことにする。
因みに俺が装備してる一式をドロップしたボス部屋は、今は固く閉ざされ、クエストを受注したNPCも居なくなっていたらしい。
あんなクエストは二度とやりたくないけどな。
暫くしてようやく目当てのモンスターがPOPした。あのモンスターのドロップ品こそが今回の獲物。
両手の得物を握り直しモンスターへと突貫する。
二十二階層。
ここに結婚して休暇中の二人がいる。
この階層の殆どが常緑樹の森林と多くの湖によって構成され、モンスターも存在せず、主街区も小さな村程度のものだ。あの二人が静かに過ごすにはうってつけの場所と言える。
「
六十七階層ならゆっくり過ごすのに飽きれば、主街区から出ていつでも狩りが出来るから程よい刺激が得れる。
モンスターが出ない
小さく息をつきつつ歩いているとやがて視線の先にそれなりの大きさのログハウスが見えた。外周に程近いためかハウスの奥には蒼い空がよく見える。
メッセを送ったから家にはいるはず。
「キリト俺だ」
「いらっしゃいアルト君」
ノックしてから声を掛けて見れば、私服姿のアスナが応対してくれた。
「おうアスナ。これ遅ればせながら結婚祝いだ」
「これって」
ストレージに入れておいたアイテムをオブジェクト化にして、直接手渡す。
トレード画面を操作するよりも直接渡した方がいいか、と考えたわけだが当のアスナの反応はイマイチのようだ。
やっぱ、そのまま食えるのがよかったか?
けど、調理した食材はストレージに入れれねぇし、【料理】のスキルも持ってねぇから消し炭になるのが目に見えてるしなぁ。
「アスナ?どうした?」
「おうキリト。結婚祝いで旨いもん食える様にって食材持って来たはいいんだが、アスナの反応が薄くてな」
どれどれ、とアスナが手にしたテレビで見るような肉塊を覗きこむ。恐らく【鑑定】のスキルでも使ってんだろ。
「お前、これ」
「取るのに苦労したが、喜んでくれれば幸いだと思ってな」
「S級食材・・・」
「《ローストバイソンの肉塊》・・・」
そう俺が捕って来たのはS級食材《ローストバイソンの肉塊》。通常は《ローストバイソンの肉》なのだが、規定数集めることで《ローストバイソンの肉塊》になる、らしい。
《ローストバイソン》の出現場所をアルゴから買い、エギルのところでドロップ率をあげるアイテムを大人買い。
あとはひたすらマラソンするだけなのだが、これが苦行だった。
S級の名の通り出現率が極端に低い。倒したとしてもドロップするのはドロップ率を上げていても多くて二つ。
肉塊にするには十個必要な上、未調理の食品アイテムということで二日もすれば耐久値限界ですべてパァ。
ホント疲れた。
「「あ・・・」」
「あ?」
「「ありがと~!!」」
「うぉ!!」
レアアイテム好きのキリトの反応も薄くハズレだったか、と内心肩を落としてたが、いきなり顔を上げた二人に抱きつかることでようやく逆だったのだと思い至る。
つまりは、驚きすぎて反応出来なかった、と。
こういうのも悪くないな。
その後、アスナが調理した《ローストバイソンの肉塊》を三人で舌鼓を打った。
キリトにあの言葉を言われ、俺が崩れ落ちたのは蛇足だな。
そして、その二日後に記憶をなくした少女を保護したとメールが来たのだった。
他にネタが思い付けばオリジナル回を挟むのですが、次回からはシリアスムードになるのでALOが終了するまでは、ネタの完成度をあげようと思います。