戦いとはなにか
それは人類史が始まる頃までに遡り、ある者は生きるために、ある者は奪うために、ある者は守るために、ある者は強さを示すため、またある者は生の実感を得るためにその手を血に染める。
人は犠牲なくして生を謳歌できない獣とはよく言ったものだ。
それに戦いは人間だけが行うものでもない。縄張りを守るため、生きる糧を得るため、
つまり、地球上の生物は本能的に
戦うことを是とするか否とするかは人それぞれだろうが、闘争本能そのものは確かに根付いている。
普段は理性で抑え込んでる人間の攻撃性って奴が戦うことでしか生きれないと知った瞬間そのタガが外れた。
戦えない奴らはきっと傷付けるのも傷付けられるのも恐れてるんだろう。平和ボケとも言えるが真っ先に戦うことを選んだ奴らに比べれば人間らしい理性を持ってるって言えるな。
「ーーだから俺が戦いたがるのも当然ってことだ。生理現象ってやつだな」
「いや、だからもなにも理由になってないし……」
「
「お前何歳だよ……」
「知ってるお前も大概だからな?」
ネタを振れば突っ込んでくる。逆もまた然り。打てば響く悪ふざけも同年代の奴らとやったこともない。一人でいた方が気が楽だし、わざわざ他人に合わせる必要もない。
誰だボッチとか言った奴。
誰にも縛られることなく自由気ままに自分のために時間を使える。素晴らしいじゃないか。
少年漫画のような殴り合いの果てにキリトとはこんな関係になったが、あのときの俺はどうかしてた。いくらあの日を思い出したからと言って、錯乱に近い状態に陥るとか。
自分を騙し続ければいつの日か溜め込んでいた感情が吹き出すとは言うが、俺は自分を騙したことはない。いつも自分の心に従って動いてる。
「いい加減、アスナとも話し合ってみろよ。アスナなら分かってくれるだろうし、周りが敵ばっかりだと前みたいになるぞ?」
「その内になー」
お嬢様と俺の価値観は違う。いや、人はそれぞれ違う。歩む歩幅も歩むべき道も善悪でさえ。
きっと俺とお嬢様の歩む道は交わることはないだろう。
俺の在り方はお嬢様は受け入れられないだろうし、お嬢様の正義は俺には縁遠いものだ。
信頼できなくても信用できる人間は一人でいい。無闇矢鱈に人を囲い込んでも本当に信用できる人間がいるかどうか怪しいもんだしな。
「つーわけで強ぇ敵が出てくるとこ知ってんだろ?」
「何がというわけなのか分からない」
「融通の利かない奴」
「融通も何も自分に利のあるように喋ってるだろ」
「一割冗談でな」
「九割本気!?」
「なんつーか、戦ってるときの方が『俺生きてる』って実感できんだよな。アドレナリンがドバドバ出てるのも実感してっから脳内麻薬中毒かも」
アドレナリンは交感神経から分泌される
主にスポーツをする奴。
「なんだ、ただのジャンキーか」
「言い方を考えろ」
「バトルジャンキー、戦闘狂、バーサーカー、戦争中毒、焼け野原ひろっ!!?」
「少し黙れ」
そこまで狂ってねぇ。戦争屋と一緒にすんな。
「今のはグーだ……」
「チョキの方が良かったか?」
「具体的にどこを狙うつもりだ」
「目。刺して広げる」
「猟奇的過ぎる……」
「悪い奴じゃないんだよ。ちょっっっと過激で手が早くてバーサーカーだけど」
「全然ちょっとじゃない。実力はともかく言動が問題。キリトくんが言う通り、悪い人じゃないかもしれない。けどボス攻略の時だって協調性もなく単身で突撃するし、口を開けば人を小バカにしたような物言い。それが原因で彼の周りは敵だらけ」
「確かにアイツは歯に衣着せず言いたいように言うけど、裏を返してみればアイツなりの気遣いだったりするんだぞ」
「だとしても言葉を選ぶのは人として当然のこと。わざわざ反感を買うような物言いをしなくてもいいはずでしょ?それとも反応を見て楽しんでるのかしら?」
どれだけアスナから反感を買ってるんだよ……。
「……冗談」
「え?」
「だから冗談。彼が完全に悪い人じゃないのは何となくだけど感じてる。口の悪さも善意の裏返しだってこともね。だけどーー」
言葉を切ったアスナの視線の先にはフィールドボス相手に孤軍奮闘するアルトの姿。
ソロで挑むような相手じゃないはずなんだけどな。
拳で殴り、足で蹴り、剣で叩き潰す。
その戦い振りはまさにバーサーカーだ。
「あれだけは理解できない」
「激しく同意」
闘争こそ遺伝子レベルで刻み込まれた本能だとアルトは言ったが、その度合いは人それぞれなんだと思う。
人類全員がお前レベルだったら……考えたくもないな。
「今回はキミの顔を立ててあげる」
フィールドボスを下し、行きよりも生き生きと帰ってきたアルトとアスナは対面した。
開口一番に問われた戦闘思考の答えをアルトは小難しい言葉で返した。
「
「ヴァ?ウ?」
何語?
「行くべき場所に行き、死ぬべき場所で死ぬ。フランスの諺よ」
「誰かが決めた正しさなんざ興味もねぇ。行く場所も死ぬ場所も俺が決める。ハタから見りゃ自分の価値観だけに従ってる俺は異端だろうさ。でもな、他人の意思に従ってる奴とどう違う?思考を投げ捨てりゃ
「貴方の考えは理解できた。でも言葉にしなきゃ伝わらないこともあるはず。貴方の場合、他人を傷つけて遠ざけて放置したまま。理解を拒むなら行動よりも先に言葉にすべきよ」
「俺は俺の価値観を押し付けるつもりはねぇ。俺の考えが万人に受け入れられるものだとも思ってねぇからこそ、弁明もしねぇんだよ」
「……なら橋渡し役になってあげる」
「あ?」
「他の人と貴方を繋ぐ橋渡し役に」
「バッカじゃねぇの?そんなつまんねぇことしてお前になんの得があんだよ?」
「勘違いしないで欲しいわ。別に私の考えが貴方に理解されるなんて思ってないから」
「……仕返しのつもりかよ。まぁいいさ、やれるもんならやってみろ。そう決めたならやり通して見せろ。俺は俺の在り方を崩すつもりはない」
ブレないアルトと素っ気ないながら気に掛けてたアスナは友達と言うにはピリピリとした空気を漂わせながら、一応の和解を果たした。
俺が姿を眩ますまでの間、基本的にはこの三人で行動することになる。
二人で馬鹿やってアスナに怒られ、殴り合いをしていれば仲裁と称した制裁で二人とも
決して余裕があった訳でも辛いことがなかった訳でもないけれど、満ち足りていて笑いの絶えない時間だった。
アルトの言っていた生の充足というのはあの時のようなことを言うんだろう。
戦いに偏った思考はしているけど根は悪い奴じゃない。アスナが言った通り口は悪いけどそれは善意の裏返しであって恩着せがましいのは性に合わないし、真摯に接するのも肩が凝るからしない、らしい。
本当に面倒な奴だ。
8/21はシノンの誕生日!
気が付けば前回の投稿から二週間以上経ってた……
Fateのイベントを周回してたので執筆時間が取れず、投稿が遅れてしまいました。
BB以外は当たりました